公開中
20240911
五句。
**弁当を運ぶ自転車秋時雨**
ウーバーイーツのような、大きなかごを背中に背負った自転車が通った。
路面は秋の雨でうっとりと濡れ、天候も降ったりやんだりして中途半端だ。
デリバリーの自転車だから、時間指定があるのだろう。急がなくてはいけない。
雨宿りをしている暇はなく、かといって雨のなか走ると転ぶ危険もある。弁当が濡れてしまう可能性もあり得る。
そんな雨のトラブルは、ふとした瞬間に訪れるもの。
デリバリーの人も気を付けているかもしれないが、背中も不安定、路面も不安定。きっとハンドルを握る手元も、背中で揺れる弁当も。
---
**綿あめや葉月のかかと浮かせたる**
綿あめを作る機械がやってきた。
普段は屋台などでしかお目にかかれない代物だから、すぐに行列になった。
待っていて、列の中盤までになると、綿あめを作る工程が見られるようになる。
自分は背が小さいので、わくわくしながらかかとを浮かして覗こうとする。
葉月(=夏)なので、靴ではなくサンダルを履いているだろうし、はだしの踵が上がったり下がったり。作者は子供っぽい感じがあって、いかにも夏らしい光景。
---
**風爽か豚骨臭のシーン8**
撮影現場の最中に、豚骨ラーメンが差し入れで出た。
珍しさもあり、撮影現場なのに食べれられるとあって、大変喜んだ。
みんなで豚骨ラーメンを食べたので、「シーン8」の撮影空間は豚骨の濃い匂いに包まれている。まるでラーメン屋にいるようだ。しかし、ドラマ撮影を再開しないといけない。
撮影の合間に食べる豚骨ラーメンは美味しいなあ。しかもみんなで。ほかの現場だと匂いが強い食事は避けようとするから。
エネルギーチャージで一体感が出て、風爽かの勢いで一気に撮影できた。
ドラマ完成後になれば、その豚骨臭など到底分からない出来栄えだ。
---
**差し入れの桃ゾンビらに二十切れ**
撮影現場のセットに置かれた桃の切れ端二十切れ。
すでに切られて放置されているのか、新鮮さは無く色褪せている。そこに、ゾンビ役のエキストラの方々が大量に押し寄せる。
慣れない現場で身体の動きは緩慢で、ゾンビのようにおぼつかない足取りをしている。
おそらくひと欠片も残さないだろう。
桃本来の色など気にせず、あっという間に集まって、跡形もなく食い漁る。
---
**ロケ終盤夜食に並ぶ研修医**
研修医や看護師に扮した男女の混じった役者さんたち。
医療ドラマの撮影は深夜におよび、全員くたくただ。
さて、どれにしようかな……。
研修医に扮する役者ということは、若手俳優だろう。
疲れ果てた身体にエネルギーを得るために、テーブルの上に並んだ夜食を眺めている。
きっと本職の研修医たちも、夜にまで時間がおよんでいるはずだ。
こうやってADさんが選び取りやすいように夜食を整列させてはいないだろうが、頭の中では「どれを食べようか」と様々なメニューが浮かんでいるはずだ……教示する臨床医師の目を盗んで。