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夏に現れたきみへ3
第3章「明日を知らない恋」
夕焼けの秘密基地の帰り道。
澪は、ずっと何かを言いたそうな目をしていた。
「風間くん、ねぇ、今って……幸せ?」
陽翔は少し驚いて立ち止まった。
「え? うん、まあ……そりゃ、こんなに夕日きれいで、澪といられるなら」
少し照れながら笑うと、澪は不意に彼の袖を掴んだ。
「……じゃあさ、これからも、私と“きれいなもの”をたくさん見に行ってくれる?」
陽翔の心が、ふっと熱くなる。
その声が、彼の胸の奥をまっすぐ撃ち抜いた。
「それって……告白、みたいなやつ?」
「うん……そう、だよ。私、風間くんのことが好き」
「全部忘れちゃってもいいってくらい、好き」
陽翔は一瞬、何かにひっかかるような違和感を感じた。
でもそれよりも先に、胸にこみ上げてきたものがあった。
「俺も、澪が好きだよ」
空が朱から紺へと染まりはじめた頃、
ふたりの影が静かに重なった。
——誰もいない道の真ん中で。