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はじまりの書庫
ほて丸
ここは、どこだ。体を起こすと、ファンタジーに出てくるような、でっかい螺旋階段を中心にして広がるように、見上げきれない本棚がそびえ立っている場所に居た。しかも、あちこちの隙間から名前も知らない植物の蔦や葉が生えている。家の炬燵でウトウトしていたはずなのに。『え?人間だ』困惑していると、後ろに居る誰かが喋った。慌てて振り返ると、そこに居たのは本だった。浮いてる。光ってる。・・・本じゃないかもしれない。本も僕もお互いにビビっているという変な絵面が完成してしまっている。とんでもないスピードで僕が後退りしていると、本がまた喋る。『あの、え、人間でしょうか・・・?』「あっはい人間です」『何故ここに?』「こちらが聞きたい」『ですよね』炬燵で寝てたらいつの間にかこの場所に、としか言えない。『お名前は?』「アキです。というか、貴方はなんなんですか」『神です』「神!?」紙の間違いではないのか。神って人間の形してないんだな。『貴方は、多分、死んだようですが・・・心当たりはありますか?』「炬燵で寝てただけなんですけど」『脱水ですね』「あぁー」『自業自得ですね』「辛辣!!」本のくせになんてこと言うんだ。神か。血も涙もねぇ奴だな。紙だけど。「あの、成仏させてくれたりは・・・?」『無理です』無理なんかい。神様なら死人の一人や二人、成仏させてくれよ。「じゃあ貴方は何を司ってる神なんですか」『本です』「見れば分かります」『じゃあなんで聞いたんですか!!どう見ても本でしょう!!?』あ、自覚あるんだ。それにしても、此奴に何が書いてあるのか気になる。本好きとしては、本の形をした神様とやらがいるのなら中身を読んでみたいものだ。「読んでいいですか?」『どの本ですか?上の方にあるなら、あの梯子を・・・』言い終わらない内に、神の表紙にガッと手をかける。が、開かない。力を入れてみる。全然開かない。見た目は普通の本なのに、絶対に開かせないという強い意志を感じる。『な、何するんですかっ』「何って、読みたいだけですが」ひいい、と神が悲鳴をあげている。そろそろ表紙に傷がつきそうなので一旦手を離した。一旦だ。本はゼェゼェと荒い呼吸(のようなもの)をしている。『そ、そんなに読みたいなら、対価を支払ってください』「魂ならどうぞ」『重い!!』なんだ、魂より良い対価なんて思いつかないぞ・・・。そうではなくて、と神がため息をつく。口はないけど。『お手伝いをして欲しいんです。本の内容の間違いを探す仕事』「校閲ってことですか」『ちょっと違いますね。実際に物語の世界に入ってもらいます』めっちゃ楽しそうなんですけど。でも、神様の本にも間違いとかあるんだろうか。『最近何者かの悪戯で、物語のページが破られたり、汚されたりしたんです・・・。そのせいでバットエンドにされた物語達は元に戻せなくなってしまって。とりあえずハッピーエンドに変えてくれるなら良いので、引き受けてくれませんか』本なのに、しょんぼりオーラが溢れ出ている。「引き受けるのは良いんですけど、どうやって物語を変えるんですか。この格好で物語に入っても、即逮捕で終わる気がするんですけど。」そう、なんといっても今の僕は割とボロいスウェットとジャージのズボン姿なのだ。おまけにこの黒髪には寝癖もある。物語云々の前に人前には出せない姿である。それに、いきなり物語に人が増えたらそれはそれで困るだろう。『そこは安心してください。物語の中で消された登場人物に貴方をすり替えておきますので。』「おお」なんか格好良い。『ついでに今の格好もどうにかしておきましょう』神様がくるりと一回転すると、上から一冊の本が降りてきた。そのまま僕の頭に直撃・・・したが痛みはなかった。本はするりと解けるように光の粒になって消えた。見下ろすと、服装が変わっている。白いシャツとジャボに、肩掛けケープ付きの紺色のロングコート。コートの二の腕に、銀のアームレットが付いている。この書庫と雰囲気が似ていた。一応身長は高めなので様になっていると思う。『似合いますね〜』「落ちてきた本は、何だったんですか」『ファッション雑誌の切り抜きです』「ほぇ〜」本の神すげぇ。雑誌まで揃えてるんだ。服にちょっと感動を覚えていると、目の前に細長いものが出現した。これは・・・栞か?白い女の子と林檎がデザインされている。透き通ったステンドグラスの様で、白銀の細工がしてある。『物語に入る鍵です。これを使って物語に出入りしてくださいね』「はぁ〜便利」めっちゃ綺麗。普通に高値で売れそうだ。『あの、ところで・・・貴方って、性別はどちらでしょうか・・・?』「は?」何言ってんだこの本。男だが?『いや、あの、髪も長めですし、声も名前も中性的ですし、判断ができなくて・・・』「・・・男ですけど」まあ、昔から微妙に間違えられることが多かったので、仕方ない。仕方ないのだが。「神様も意外と目か頭が悪いんですね」『失礼な!!』髪は後ろで結ぶことにした。そっちの方が服に合うからだ。『では、最初の物語に』神がスーッと移動するので着いていくと、木の扉の前に着いた。さっき貰った栞を、扉の真ん中にある縦長の穴に差し込む。扉がゆっくりと開いた。
『いってらっしゃい』
「いってきます」
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