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3.堕天使
「みつけた。」
子どもはそう言い、僕の方へと近づき、また言う。
「お前を探していたんだよ。」
僕は、意味がわからず顔をしかめる。そして、もう一度その子どもに目をやった。
だが、そこにいた子どもは居なく、代わりに知らない奴が立っていた。
「私は、天使だが、天使じゃない。いわゆる、堕天使ってやつさ。」
堕天使…天使じゃないのか…?
それに、多分さっきの子どもは、こいつが化けていて、僕をおびき寄せるためにわざと演じていたという感じか?僕を捕まえに来るために?
「大丈夫だよ。私は、君を捕まえに来たんじゃない。」
捕まえに来たのではないのか…?ちょっと意味がわからない。
すると、そいつは顔に笑顔を浮かべながら、玄関へ向かった。ぼろぼろになったドアノブに手をかけ、ゆっくりと開けた。
もう、外は異常なほど静かになっていた。
火はもう消えたようだが、焼き焦げて、ぼろぼろになった村が目に映る。
先程まで賑わっていた村が、こんなに静かになるとは。
「あっ、自己紹介がまだだったね。私の名前は、ルラ。趣味は人殺し。」
ルラ…だれ?
あれ、もしかして、村が燃えたのって…?
「この村も私が燃やしたんだよ。」
犯人こいつじゃん…!
「で、なんで僕を探しに来たんだ?」
僕は、声を張り上げて言った。
「あっ、やっと喋った。」
しかしこいつは、それだけしか言わずに、ただ歩き回るだけだ。仕方なく僕も答えてくれるまで着いて行ってるのだが、一向に答えてくれない。
「おい、聞いてんだろ。」
イライラした僕は、少しぶっきらぼうに言う。
だが、そいつは「…あーあ、めんどくさ。」
と、言うと、今度は僕に近づいてきた。そいつは俺に手のひらを向けた。
すると、目の前が真っ黒になり、その後は、もう覚えていない。
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目が覚めたら、僕は知らない所にいた。どうやらあいつに連れて来られたようだ。
俺は歩きだす。が、歩けなかった。
手足が縛り付けられている。そこで、身動きが取れないことに初めて気づいた。
僕がいるところは、ただの何もない部屋のようだ。
ただ、ドアが1つあるくらいだ。
さぁ、どうしようかと、考えていたら、ドアが開くのが見えた。
誰か来るのかと僕はじっと見つめる。
来たのはさっきの堕天使であった。そいつは、椅子を僕の目の前に出し、そこに偉そうに座った。
「メフィスエル。お前に選択肢をやる。」
と、そいつは言う。さっきとはまるで雰囲気が違う。
「"私達"の仲間になってくれ。もし、仲間にならなければここで、焼き殺す。」
拒否権はないってことか。どうせ断ったって殺されるだけだ。ここは、従っておくべきだな。
「わかった。仲間になる。」
と、僕は答えた。なんだか命乞いをしている様な感じもして、なんだか恥ずかしい。
だけど、ここで死んだらなにも出来ないからな。
すると、手足を縛っていた縄が消えた。
「じゃあ、ついて来い。それと、無理やり連れてきちゃって、……ごめん。」
と、言った。さっきまでの偉そうな態度は無くなっていた。
「おい、早くついて来いつってんだろ」
やっぱり、そうでもなかった。