公開中
静かな夜の音の予感
『音梨家、春の再編』
2話:静かな夜の、音の予感
夕食の時間。テーブルには瑞希さんの手料理が並んでいた。
煮込みハンバーグに、ポテトサラダ、そして彩良が焼いたガーリックトーストまである。
「いただきます」
声をそろえて言うのは、まだちょっとぎこちない。けれど、誰も嫌な顔はしていない。
朱留は静かに食べながら、父と仕事の話をしている。
彩良は「このトースト、焦げてない?大丈夫?」と気にしながらも、みんなの反応を見て嬉しそう。
愛唯は「うまっ!これ、マジでうまっ!」とテンション高め。
星華は「彩良、トーストの焼き加減完璧よ」と微笑んでいる。
俺――音梨 名前はというと、黙って食べていた。
なんだろう、この感覚。
家族って、こんなにスムーズに馴染むものだったっけ?
「名前くん、明日から学校だよね。愛唯くんと同じ学年だから、案内してもらえるといいわね」
瑞希さんが言うと、愛唯が「任せて!めいガイド、発進!」と元気に手を挙げた。
その夜、部屋に戻ってから、スマホで#writer Harmonyの動画を見た。
ライブ映像。ステージの上で歌う彼ら。
アルさんの声。さらさんの動き。無名さんのテンション。ティナさんの表情。
……似てる。いや、似すぎてる。
まさか。いや、そんなはずは――
そのとき、画面の中でメンバーが言った。
「次の曲は、家族に捧げる歌です」
俺の心が、少しだけざわついた。