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collaboration.8
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「龍、ありがとう。戻って善いよ」
そう桜月ちゃんが言うと、リュウが姿を消す。
「首領、中原です。失礼します」
「入り給え」
「私達も、失礼します」
「どうぞ」
「ルイスさん、お先にどうぞ。皆、先に。私が最後に入ります」
ごめんね、と僕は一足先に首領室へと足を踏み入れる。
後ろからは太宰君のふざけている声が聞こえる。
僕の世界の彼だったら、今頃踏んでいた。
「今ふざけちゃ駄目です」
そう、桜月ちゃんは本気のトーンで言った。
「その通りだね……」
「ハイ。スイマセン」
「フッw」
「中也?」
「タイヘンモウシワケゴザイマセン」
「よろしい」
「素直に謝ってる……!?」
此方の世界の彼らもこのぐらい素直だったら良いのに。
というか16歳に叱られる22歳って絵面凄いな。
「で、首領。押し掛けて来たのは例の組織で間違いないですね?」
「そうだね。現在此方が押されて居ると考えて良いと思う」
「成程のう……」
「僕等も下の応援に行ったほうが……」
「なら僕も、」
「俺も行く」
「一寸待って下さい。皆さん、それ程の人数、主要戦力が欠けては困ります」
彼女の発言に、確かにと思った。
敵の狙いが判らない以上、下手に戦力を割くことは出来ない。
「そうだね。一人、其れか二人だ」
「私が、行きます」
異論は認めないと、そう言われている気分になった。
「オイ……」
「私に、行かせて」
「ならせめて俺も」
「駄目だよ。それじゃ、私が行く意味が無いもん」
中也君は唇を噛み締める。
探偵社の面々や幹部クラスは、そう簡単に最前線に立つことは難しい。
それに、桜月ちゃんなら戦闘だけではなく、回復などの補助にまわることが出来る。
でも、彼女一人に行かせるわけにはいかない、
「僕が行くよ」
「えっルイスさん!?で、でも、、」
「行ってらっしゃい、桜月、ルイスさん。」
鏡花ちゃんが背中を押してくれた。
まだ全部話せていないのに、信用してくれた。
胸の辺りが、とても暖かい。
でも、首領が無言だ。
「──!」
シュッ、と空気を切る音がした。
何かまでは判らない。
でも、眼前にソレはあった。
「此れで如何ですか?」
僕は少し首を傾けて、ソレを避ける。
壁を見ると、メスが突き刺さっていた。
試されるとは思っていたけど、殺す気な気がする。
まぁ、元の世界なら叩き落としてすぐ銃で撃っていたからなんとも言えないが。
「今のを避けるか……」
首領のエモノは、この世界でも一緒か。
そんなことを考えながら、僕は手渡しで返す。
絶対ありえないけど、僕が投げて首領が怪我なんてしたら色々と面倒くさい。
「じゃあ二人に応援を任せるよ」
「ゎ、判りました。ルイスさん、行きましょう。」
「そうだね」
「死ぬなよ、二人共」
「勿論だよ」
「また後で!」
首領室を出ると、僕達はまた龍へと乗った。
戦闘自体は久しぶりでもない筈だが、脈打つ速度はドンドンと上がっていく。
緊張しているのか、僕は。
桜月ちゃんも同じ状態なのか、一言も話さない。
僕の為にも、彼女の為にも余計なことは話さないことにしよう。
「死ねぇぁぁぁっっ」
「ぐぁぁぁぁっっ」
「うぅぅぅっっ…」
戦場に近づく程、そう言った声は大きくなってくる。
龍から降りた僕が見たのは、地獄のような景色だった。
これが組織戦だ。
脳裏に浮かんだ戦場と重なって、吐きそうになる。
「ルイスさん、私は先に不死鳥で救助の方をします。戦ってる人の援護お願いします!」
「判った! 気を付けて!」
「ルイスさんも、お気を付けて!」
自分の意思で此処に来ると決めたんだ。
恐怖も、後悔も、懺悔も。
この戦場には必要ない。
今、僕に必要なのは純粋な力だ。
過去の──『戦神』と呼ばれた僕の戦闘能力。
「また後で、会いましょう!」
桜月ちゃんの言葉を合図に、僕達は反対方向へ駆けてゆく。
首領の予想通り、此方側は圧されている。
敵と比べて負傷者の数がえげつない。
「──貴様は!」
騒がしい戦場から、そんな声が聞こえた。
目の前にいる敵と、目が合う。
僕のことを知っているのか、アイツ。
なら、皆殺しにされては困るな。
指揮官らしき人物は逃げるように後退した。
すぐに殺されることはなさそうだな。
「さぁ、始めよう」
銃弾の嵐が僕へと降り掛かる。
しかし、問題はない。
異能力『不思議の国のアリス』で被弾する前に銃弾を転送すれば、当たることはない。
ただ、インターバルを考えて行動しないといけないのは、少々面倒くさい。
無限に転移できるわけではないので、うまく考えて行動しなくては。
この見極めはそこそこ難しいが、もう慣れた。
「……。」
久しぶりの戦闘なのに、全く息が上がらない。
体力も落ちているものだと思っていた。
これが『戦神』か。
「さて、如何します?」
数分後、僕は桜月ちゃんにそんな質問をされていた。
敵の数は残り一人。
味方の姿は僕達以外にない。
完治させて下がらせたのだろう。
「うーん、残り一人だから──」
捕虜にでもしようか。
そう言おうとした僕だったが、思わず叫んでいた。
「桜月ちゃん、危ないっ!」
残り一人ではなかった。
敵の後ろに見えた、もう一つの影。
銃を構えて此方を見ている。
だが、銃口は桜月ちゃんを向いていた。
僕はすぐに気がついて駆け出した。
彼女は疲労のせいか、動けなかった。
伸ばした手は届きそうにない。
異能力を発動させようにも、まだインターバルが終わっていない。
直前に異能力を使っていた僕を、心底恨んだ。
何度もこういう場面を経験してきた。
目の前で、仲間が死ぬ。
「──クソッ」
僕は無力だ。
一人ですら守ることが出来ない。
走っている僕の懐に、何か固いものがあった。
ふと、思い出した。
こういう時の為、僕は拳銃《ソレ》を転移していたんだろう。
安全装置《セーフティ》を外して構える。
僕の手は、微かに震えていた。
(失敗したら彼女は……)
そんなことを考えている暇があるなら、精神を研ぎ澄ませ。
もし、異能力の発動が間に合わなかったらこれで銃弾を《《撃ち落とす》》。
当時の僕なら出来たことだ。
もし無理でも、軌道をずらすことは出来る筈。
「間に合え──!」
--- パァン、と銃の音がした。 ---
瞬きをする間に、世界は変わる。
其処は、見慣れた空間だった。
「……間に合った?」
銃弾を確認してみたが、減っていない。
撃たずに済んだのは良いが、相変わらず手は震えている。
銃を懐にしまい、辺りを見渡す。
其処にはズラリと銃や手榴弾が並んでいた。
武器のエリアか、此処。
「ルイスさん……?」
その時、声が聞こえた。
方向的に、一番彼女に行ってほしくない《《何もないエリア》》ではないらしい。
声のした方へ足を進めていくと、彼女のいるエリアが判ってきた。
「桜月ちゃん、大丈夫?」
「る、ルイスさんっ……ありがとうございましたぁぁっっっ」
ぬいぐるみが数え切れないほどあるエリア。
ただの僕の趣味を詰め込んだだけだ。
よく此処で睡眠を取っているが、今はどうでも良い。
「それよりも無事で何よりだよ……」
良かった。
本当に彼女が無事で良かった。
「ルイスさんは私の命の恩人ですね!」
命の恩人、か。
「じゃあ、元の世界に戻すよ。残り二人を絶対に倒そう」
「はいっ!」
現実世界に戻るなり、僕達は敵に飛び掛かっていった。
そして、各々一発お見舞いする。
「手間を取らせないでくれる? この莫ぁ迦」
確かに彼らは莫迦だ。
僕達が居なくなった時に歩を進めれば良かったものの、警戒して此処に残ったのだから。
とりあえず、これで終わりかな。
「最後の二人、捕縛完了。敵の第一軍はこれで最後と思われます」
「今のところ死者は出ていません」
このまま楽に終わってくれたら良いのだけれど。
頑張れ、ルイスくん。
よく桜月ちゃん守った!
偉い! 本当に!
次回もお楽しみに!
(雑ですみません