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ツミちゃん
2026/01/10 ツミちゃん
「あたし、ナガイくんが好きなの。」
そう言うツミちゃんの顔に塗りたくられた派手なメイクは、しっかり校則違反だ。中学生なのにいやにませてて、そういうのが私は少し苦手でもあった。
今日の屋上は珍しく人がほとんどいない。なので、ツミちゃんの話を誰かに聞かれることはなかった。今日は風が強いからみんな教室で食べてるんだろう。私は風に飛ばされないよう気をつけながら、お弁当の包みを膝の上に広げた。今日のおかずは何かな。蓋を開ける。唐揚げが視界に入り、口元が綻んだ。そして、私は言う。
「そうなんだ。たしかにナガイくん、イケメンだもんね。」
ツミちゃんはご飯を咀嚼して飲み込んだ後、目を細めた。派手なメイクをしてるくせに、ツミちゃんの仕草はやけに上品で、だから私はツミちゃんを嫌いになれない。
「イケメンだけじゃないけどね。あたし、ナガイくんに告白したいの。どう思う?」
「いいんじゃない。成功したら、教えてね。」
私は目当ての唐揚げをお箸でつまみ、口に運んだ。ツミちゃんはうん、と頷いた。「失敗したら、言わないけどね。でも、察して慰めてね。」難しいことを要求してくるなと思った。
できるだけ頑張るけど、とだけ答えた。
それから数日がたった。その日も、私とツミちゃんは屋上で昼食をとっていた。今日は風が強くないので、屋上は人がいっぱいだった。
私はいつも通りの、どちらかと言えばくだらないような話をしていた。ミートボールを飲み込んだ後、私はツミちゃんの顔を見た。
「なんでメイクしてないの?」
ツミちゃんは今日、派手なメイクをしていなかった。
ツミちゃんは私の方を見て口角だけ少し上げた。メイクをしていないツミちゃんは、それでも可愛くて、清楚で、こっちの方がいいのになどということがよぎった。
数秒の沈黙があった。私は先ほどまでのくだらない雑談を再開させた。
それが、ツミちゃんへの敬意で、慰めで、これが、ツミちゃんと私の友誼だった。
ツミちゃんの頬のそばかすから視線を逸らしながらお弁当の蓋を閉める。かちりという音が鳴る。