公開中
【第捌話】紅蓮ノ炎・颶風域
〜天舞 side〜
__***メラメラメラ……***__
煉華「……………」
天舞「……………」
紅い炎が地面を覆い尽くしていく。
長い睨み合いの後、煉華が背中から長槍を取り出した。
全体は黒く、刃先は炎で包まれていた。
***煉華「…………死になさいっ!!」***
天舞「!!」
***ゴロコロゴロッッ!!!***
槍を構えて突進してきた煉華を俺は咄嗟に飛んで交わす。
*バサッ!!*
煉華が走った場所には炎が巻き上がっていた。
天舞「…っぶねーなっ!何しやがんだ!!」
煉華「ふふ、次はないわよ?」
天舞「へっ!お前その車輪でどうやって空を飛ぶつもりなんだよ雑魚が!!」
煉華「…あら?天舞くんもしかして知らないの?」
そういうと煉華はまたもやこちらに槍を構えて車輪を回す。
**ぼわんっ!**
するとその瞬間、煉華の足元に雲が現れその雲を渡って空を飛んだ。
そしてそのまま俺の方に走ってくる。
***ゴロゴロッッ!!***
**天舞「うおぉぉ!!?」**
*バサッ!!*
煉華「火車は罪人を地獄へと招く死神。もちろん空くらい簡単に飛べるわよ?」
**天舞「先に言えやっ!!!」**
俺がそう叫ぶ間にも、煉華はこちらに突進する準備をする。
このままここで手間取っていたら竜翔たちの方へ向かえない。
天舞(………仕方ねぇなぁ……)
俺は背中の羽団扇に手を置く。
そして羽団扇を後ろに下げ、大きく振りかぶった。
天舞「…ほらよっと!!」
***ビュオオォォオォォ!!!***
煉華「きゃっ!?」
俺の周りに突風が吹き荒れ、火が一斉に消える。
煉華の車輪の炎も大きく揺れ、大きく下がる。
しかし恐らくギリギリで避けたのか、煉華の車輪の炎は消えていなかった。
煉華は汗を少し拭うと、こちらを見上げる。
煉華「……確かに強いけど、火はどんどん増やせるのよ?大丈夫?」
驚くほどの強気に、俺は思わず手を止める。
煉華はニヤリと笑い、楽しそうに槍をクルクルと回す。
***ボワッッ!!!***
その瞬間、火が消えたはずの場所からまた炎が吹き上がる。
俺は迫ってくる火柱を咄嗟に避け、煉華を睨む。
天舞「……ちっ、面倒くせぇな…」
煉華「あらあらぁ、こんな調子じゃ、あなたのお仲間さんはやられちゃうわね?」
「あの九尾くんなんて《《細くて弱そう》》だったからすぐ死んじゃうかもね?」
天舞「…は?」
煉華「もう、そんなに怒らないでよ!ほんの冗談じゃない♡」
「……まぁ、早く助けに行きたいなら、早くアタシを殺すことね♡」
そう言って笑う煉華を見て、俺も覚悟を決める。
天舞「…しゃーねーな。それがお望みなら、こっちも《《手加減なしで》》いってやるよ。」
煉華「……?今までは違ったの?」
天舞「誰がキモいババア相手に本気出すんだよ。」
煉華「は?キモいババア?(カチンッ)」
天舞「あれぇ?もしかして怒ってるんですかぁ?シワが増えますよオバさまw」
**煉華「あ゛ぁ?誰がオバさまだこのガキっっ!!!」**
炎が一気に勢いを増して、辺りが真っ赤に染まる。
しかし、俺は全く動じない。《《これが狙いだったのだから》》。
***ゴロゴロッッッ!!!!***
先ほどとは比べ物にならない勢いで煉華が突進してくる。
俺は羽団扇を一度しまい、かわりに手に力を込める。
そして、小声でつぶやいた。
天舞「………来い、`|天裂丸《てんれつまる》`。」
**煉華「死ねっ!!」**
***ガキンッ!!***
鉄と鉄がぶつかり合う音が草原を揺るがす。
俺の手には、風を纏う剣が握られていた。
__*ギリギリ……*__
天舞「…なぁ知ってるか?」
煉華「!?」
天舞「大天狗は、かの有名な源頼義に剣術を教えたと言われる程の剣豪なんだぜ?」
煉華「……っ!!このっ!!」
*ブンッ!!*
煉華は大きく槍を振って天裂丸を弾く。
そして刀を弾かれて無防備な俺に槍を向ける。
**煉華「何が剣豪よ!!このまま刺されて死になさいっ!!」**
天舞「…………」
***グサッ!!***
俺の胸元に深く槍が突き刺さる。
煉華は槍を振り切り、俺の体を二つに裂いた。
煉華「………は?」
………しかし、その体からは血は流れない。
それどころか俺の体は煙のようにぼやけ、炎の中へと消えていった。
煉華「…な、なに!?何なの!!?」
天舞「………それは俺の幻影だよ、バーカ。」
煉華「!!?」
煉華は咄嗟に後ろを振り向き、目を見開いた。
そこで、たった今殺したはずの敵が羽団扇を構えていたのだから。
天舞「…ブチ切れて敵を見間違えるなんてダッセーな!?」
煉華「………っ!!」
天舞「ははっ!だから言ったろ?俺は絶対に負けないってよ!!」
***ビュオオォォォオオ!!!!***
煉華「きゃああぁぁ……!!?」
風で車輪の炎を消された煉華はそのまま地面へ落ちていく。
しかし、俺はそれを受け止め、地面へと降ろす。
*バサッ……*
そして放心状態の煉華に、俺は天裂丸を向ける。
天舞「………あいつらの場所を教えろ。そうすれば命は助けてやる。」
煉華「………………ふふっ……」
天舞「?お前なんで急に笑ってんだ?」
煉華「……どうせアタシのことを殺すつもりなんてないでしょ?」
天舞「は?」
突然の意味不明な笑いと発言に俺は首を傾げる。
煉華「さっき後ろにいた時、声なんてかけなくても刀で首を落とせばよかった。」
「……それでも天舞くんは羽団扇でアタシを弱らせることを選んだ。」
天舞「……………………」
煉華「天舞くん、あなた乱暴に見えるけど、実は結構優しいのね?」
天舞「だからさっきから何言ってんだよ怖ぇな……」
煉華「ふふっ、うん、気に入った。やっぱりアタシが見込んだだけあるわ♡」
煉華は俺の刀を退け、俺の顔に触れる。
煉華「…………ねぇ、アタシの男にならない…?」
**天舞「だからお前はタイプじゃねぇってば!」**
煉華「……はぁ、やっぱり色仕掛けは効かないのねぇ…」
天舞「いいから早く居場所教えろ。」
煉華「……………わかったわよ。」
そういうと煉華は霧がかった森の方を指差す。
煉華「九尾くんはあの森で焔颶と戦ってる。でもピンチだから早く行きなさいな。」
天舞「そうか。ありがとう。じゃあな。」
*バサッ…*
**煉華「あ、待って!」**
天舞「……っとと!何だよ!?」
突然の大声に俺はつまづきそうになりながら振り返る。
煉華「…………あなた、九尾くんのこと気に食わないって言ってたわよね?」
天舞「あ?言ったけど…それが何だよ?」
煉華「なら、何で助けに行くの?本当に嫌いなら、助けには行かないはずよ?」
「戦いの途中でも、あなたは九尾くんの悪口に過剰に反応してた。」
天舞「………何が言いたいんだよ。」
煉華「本当は好きなんじゃないの?あなた、九尾くんのこと。」
天舞「…………………」
突然の呼びかけに、俺はしばらく答えることができなかった。
しばらくの沈黙ののち、答えを決めた俺は口を開いた。
天舞「俺は確かに、あいつ…火影とはよく喧嘩するし、仲も悪い……でも…」
「…素直には言えないけど、俺はあいつを慕ってるし、心から尊敬してる。」
「……だから…」
煉華「だから?」
天舞「………嫌い……__ではない……__」
煉華「…ふ〜ん、要するにあなたは『ツンデレ』ってわけね?」
__天舞「………/////」__
煉華「なによ〜!可愛いとこあるじゃな〜い♡(ニヤニヤ)」
**天舞「……っ!うるせーよ!!もう一回ぶん殴るぞっ!!/////」**
煉華「……まあ、本人には言わないでおいてあげるわ♡ほら、早く行きなさい。」
天舞「…ふんっ!じゃあなっ!!」
***バサッバサッ!!***
煉華「………ふふっ、次に会えたら、もっと面白い話聞かせてね、天舞くん…♪」
---
第捌話 〜完〜
天裂丸
https://cdn.picrew.me/shareImg/org/202511/1063763_8FwqkspD.png