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灰の都市
ゲート出現から三年後。
東京は廃墟と化し、かつての高層ビル群は崩れ落ち、街路には草木が侵食を始めていた。
人類は地下や山奥で細々と生き延びるしかなく、わずかな集落が互いに連絡を絶って孤立していた。
ユウはその一つ、「灰の都市」と呼ばれる集落に身を置いていた。
そこは廃ビルを拠点にした避難民の拠点で、元自衛官の男・滝沢が指揮を執り、数十名の人間が身を寄せ合って暮らしていた。
物資は乏しく、常に飢えと恐怖が隣り合わせだった。
ユウは討伐班の一員として、外の世界に出ては物資を集め、迫り来るモンスターから都市を守っていた。
右腕の紋章によって展開できる「障壁」は、仲間にとって命綱だった。
銃弾を弾き、獣の爪を遮り、炎を打ち消す――その力のおかげで何度も仲間は死を免れた。
だが同時に、仲間たちはユウを恐れてもいた。
「人間離れした力を持つ奴」
「ゲートから来た“何か”に選ばれたのかもしれない」
そんな囁きは常に背後にあった。
ある日、索敵任務に出たユウたちは、崩れた高速道路の上で奇妙な光景を目にする。
血に染まった衣服、白銀の髪、そして人間のような少女が倒れていたのだ。
――モンスターの少女。
仲間たちが銃を構える中、少女はか細い声で呟いた。
「……助けて……」