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Chapter 10:不審者撃退
瑠音「…お札なし…小銭は………834円。……これ、1ヶ月持つかな…」
私は1人、公園のブランコの上で頭を抱えていた。
私には親がいない。いるのは妹と、児童養護施設の数少ない職員たちだ。
自分の分の食費や生活費は政府の補助金から出ていたが、ついこの前食費の支給が減った。
減っただけで支給されてはいるが、食事は質素なものとなり育ち盛り食べ盛りの中高生たちは自分のお小遣いから夜食を買ってきている。
夕飯がご飯と味噌汁とおかず一品って…江戸時代じゃないんだから…
江戸時代の方が豪華だったんじゃないかと思うほどの食事に何度ため息をついたことか。
瑠音「これじゃ、私もアルバイトするしかないよなぁ…」
小中学生のバイトは法律違反だ。わかってはいるが…どうしようもないんだよなぁ…
むしろ捕まった方がいい生活できるんじゃないか?
『そこの君、バイトをお探しかい?』
瑠音「え、え、あ、はい。」
後ろからいかにも怪しげなおじさんが近づいてくる。
なんだこの人…
「それなら、僕の店で働いてみないか?1ヶ月で10万円以上稼げるよ!衣食住も保証するし…」
怪しい。めちゃくちゃ怪しい。
え、何?怖いんだけど…
瑠音「いや、遠慮、して、おきます!」
「そう言わずにさぁ〜、君は寝てりゃいいんだから〜」
…寝る……金持ちそうなおじさん…
…は???
一瞬フリーズした頭が一気に覚醒し、こいつはやばいと働き始める。
ちょっと待って、こいつうちに水商売させようと思っとるでしょ!?
いや、確証はない。けどこいつは怪しい。
瑠音「うちお腹すいとるんで!スーパー行っていいすか!?」
半ギレ状態で近くのスーパーに駆け出そうとするが、腕をガシッと掴まれる。
「まぁまぁ、そう言わずに〜」
にこやかな表情だが、うちの腕を掴んだ少しシミのある手は血管が浮き出るほど力が入っている。
「君だったら、お客さんも気に入ってもらえると思うんだよね〜ほら、こんなに綺麗な髪と目…大丈夫!君なら指名もいっぱい──」
瑠音「は、離してください!!!!!」
爽やかな翠色のハーフツインテール、黒と黄色の宝石のようなオッドアイ。
確かに私の容姿は珍しい。だが、絶対こういうことはしたくない。
『ちょっとちょっとー!何やってんのー!』
間延びした声が、公園に響く。その人の口調は焦りを帯びているように感じた。
公園の入り口からやってきたのは、黒に近い赤の癖毛をウルフカットにして、全身ネオンスタイルの……男性?
喉仏を注視すると、膨らんでいない。女性だ。
うちの手を掴んでいたおじさんは舌打ちすると、手を離してどこかへ走って行った。
「だ、大丈夫ー!?なんか今、絡まれてたけどー、ナンパー?えー?…え?」
瑠音「あ、りがとう…ございます…」
慌ててこちらにやってきたその女性を見る。
心配そうな切れ長の目をみていると、涙が溢れ出てきた。
「え、大丈夫…じゃないよねー!うんー、ちょっとこっちおいで!あー、僕は夢解 星羅…お前はー?」
瑠音「悠木…瑠音、です…」
星羅「そっかーそっかー、うん…怖かったねー。もう大丈夫、僕が蹴散らしてあげるよー。」
ビーナッツ並みに。と黒い笑顔を見せた星羅さん。
『はぁっ…はぁっ…ぜぇ…ひゅっ…せ、星羅ぁ…俺、運動不足なんだけど…』
星羅「あー、ごめーん。でも、一応魔法少女勧誘係でしょー?」
「うるせーやい!」
続いてやってきた男性の容姿に、ど肝を抜かれたというべきか。
私は、喋ることができなくなった。