公開中
はじめの一歩、第一歩
星
第一章:ばらばらの足音私、理子(りこ)には、幼稚園のころからいつも一緒にいた大切な友達がいた。けんた、みほ、るうと、まさと、かな、たろう。私を入れて、全部で八人。みんなでやる「だるまさんが転んだ」が、私たちは何よりも大好きだった。「だるまさんが、ころんだ!」ピタッと止まるたびに、みんなで顔を見合わせて笑い合った。あのころは、このままずっと一緒にいるんだと信じて疑わなかった。でも、二年の月日が流れて、私たちがピカピカの一年生になったとき、少しずつ何かが変わり始めた。みんな、身長が伸びた。そして、性格も少しずつ変わっていった。ある日、些細なことから、みんなが激しい喧嘩を始めてしまったのだ。口を尖らせて言い合うみんなを、私はただハラハラしながら見つめていた。「もう、みんなやめなよ!」私が一生懸命に声をかけると、みんなはバツが悪そうに黙り込み、なんとかその場は仲直りすることができた。ホッと胸をなでおろした。けれど、次の日。今度は正人(まさと)と加奈(かな)が、昨日よりも激しい喧嘩を始めてしまった。「もう絶交だからね!」「ふんだ、こっちだって!」睨み合う二人。そのとき、美穂(みほ)ちゃんのお母さんが、カシャリとスマホで写真を撮った。「ふふ、かわいいなぁ。喧嘩してるところ、まるで赤ちゃんみたい」お母さんはそう言って優しく笑っていたけれど、事態は赤ちゃんみたいに簡単には解決しなかった。次の日、加奈と正人は「もうあのグループには入らない」と言って、別の友達のところへ行ってしまった。それを見た他のメンバーのうち、三人も「あーあ、なんか暇になっちゃったな」と言って、一人、また一人とグループを出ていってしまった。残されたのは、私と、るうと君と、美穂ちゃんの三人だけだった。それから、私たちは昔のように八人で集まることは二度となかった。そのまま月日は流れ、私たちは大人になり、八人の心は完全にばらばらになってしまった。第二章:ポケットの中の秘密ある年の暮れ、実家で大掃除をしていたときのことだった。「あら、懐かしい写真が出てきたわ」お母さんが、アルバムの隙間から一枚の古い写真を見つけ出した。それは、あの日、美穂ちゃんのお母さんが撮って、私の家にも送ってくれていた、あの喧嘩の写真だった。写真を見つめるお母さんの横顔は、どこか寂しそうで、愛おしそうだった。「……みんな、また仲直りできますように」お母さんは小さく呟くと、その写真をそっと自分の服のポケットに仕舞い込んだ。それからというもの、お母さんは朝も、昼も、晩も、家事をして出かけるときも、ずーっとその写真を服のポケットに入れっぱなしにしていた。けれど、当時の私はまだ、その写真に隠された本当の事実を、何も知らなかったのだ。次の日の朝、私は台所に立つお母さんに声をかけた。「お母さん、いい加減その写真、ポケットから出したら? 汚れちゃうよ」「ううん、無理よ。ずっと持っていたいの」お母さんは頑なに首を振る。見かねた私は言った。「じゃあ、リビングの写真棚にちゃんと飾ろう。その方がみんなで見られるでしょ?」「……そうね。じゃあ、お願いしようかしら」お母さんから手渡された、少し折れ曲がった写真。それを受け取った瞬間、私の指先がピタリと止まった。冷たい汗が背中を伝う。「え……?」私は、写真に写る幼いころの仲間たちの顔を、何度も何度も数え直した。喧嘩をしている加奈。それを困った顔で見ている私、るうと君、美穂ちゃん、けんた、たろう。でも、何かがおかしい。「正人が……いない?」あの日、確かに加奈と大喧嘩をしていたはずの正人の姿が、写真のどこを探しても写っていなかったのだ。じゃあ、あの日、加奈は一体「誰」と喧嘩をしていたのだろう? そして正人は、あのときどこにいたの――?(つづく)