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東方無彩界1 桃の糸の管理人
「いらっしゃ〜い!」
明るくのんびりした、聞くだけで少しは明るくなれるような声が、霊夢を出迎えた。
声の主は、桃の糸の管理人・|糸橋《いとはし》むすび。リボンで結んだ栗色のサイドテールに、ピンクのワンピース。洋風な感じ漂う彼女が、霊夢を迎える。
妖怪だがフレンドリーで、人里に『糸橋堂』をかまえている。着物の制作や裁縫道具の調達、布や糸に関わることだったらなんでも来いだ。
『糸橋堂』は、多種多様でカラフルな糸を売りにしている。
「今日はどんな色の糸がいいです?」
「あー…」
色が少しずつ蝕まれていっている異変。このことを確かめるため、霊夢は『糸橋堂』へ来ていた。決して糸を買おうとか、布をこしらえようとか、着物を着ようとか、巫女服を仕立ててもらおうとは思っていない。
「少々見るだけよ」
「…またです?今日で3人目だよ、全く。糸の色はおかしくなるわ、見るだけっていうのが3人もいるわ…ったく、《《人間は》》もうダメだ!わたし、怒ったよ」
「人間?ってことは___」
「うるさいなあ!糸符『糸の呪縛』!」
『糸橋堂』にあった糸が、霊夢に伸びていく。
「ったく、これだから下級妖怪は。夢符『封魔陣』!」
そう霊夢が叫ぶと、紅白の御札が糸を切り、断ち、むすびへと迫っていく。
「うわあ、わたし、戦いは得意じゃないのにぃ!」
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少々の爆発音の後聞こえたのは、「教えて」という冷徹な霊夢の声だった。
「3人の人間ってことは、あと2人来たってこと、で合ってる?」
「そうよ。金髪のやつと、銀髪のやつ。あっちに行ったから、見てってよ。あと、この異変解決してよ。異変解決の巫女!」
「…ふぅ、わかったわよ」
むすびが指さしたのは、迷いの竹林付近。
「絶対解決してよね」
「はぁ」
迷いの竹林。確か、輝夜や妹紅なんかがいるところだ。
そんなことをぼんやり考えながら、霊夢は迷いの竹林へと歩んでいった。