公開中
卒業アルバム
「卒業アルバム」
私、花坂れもん。
中学三年生で円城中学校に通ってるんだけど、今日でお別れなんだ。
なぜなら、今日は卒業式で私は生徒ではなく卒業生になる。
そして、高校に進学し、新たな道へと進むんだ。
って、ヤバ。卒業式に遅れちゃう。
「行ってきまーす」
そうお母さんに伝えると私は家を飛び出した。
時計を見ると八時。
卒業式が始まるのは九時からだけど、生徒は最終確認のために八時十分までには学校にいないといけない。
普段歩いていく時は二十分ぐらいかかるから……。
走らないといけないじゃん!
私は通学路を走り始める。
はあ……はあ……。
でもすぐに息切れして休憩だ。
今は八時三分。
まだ、少ししか走ってないのに……。
私は荒れる呼吸を整え、また走った。
でも、すぐに息切れして休憩。
それを数回繰り返してやっと学校へたどり着いた。
時間は十時九分。
ぎりぎりだったよ……。
私は最上階まで階段で上り、教室のドアを開けた。
「最終日なのに遅刻ですか?花坂さん」
先生は私を呆れるような目つきで見てきた。
遅刻?私、ぎりぎりで学校に着いたじゃん。
「何でですか?私八時九分に学校に着きましたよ?」
私が付いた時刻を正確に伝えると、先生は首を振ってこたえた。
「学校に八時十分に着かなければいけないのではなく、教室に八時十分にいなければいけないんですよ?昨日話しましたよね?」
あ……。
そうだった。学校じゃなくて教室じゃないといけなかったんだ。
「うっかりしてて、すいません……」
私が頭を下げて謝り、先生に促されて自分の席に着いた。
先生は私が席に着いたことを確認すると、今日の予定の最終確認を始めた。
「この前配った予定のプリントを出してください」
私は今日の予定の書かれたプリントをファイルから取り出した。
三月二十五日 卒業式の予定
九時 卒業生入場
九時五分 卒業式開始
九時十分 卒業証書・卒業アルバム授与
九時四十分 校長先生のお話
九時五十分 卒業生代表のお話
十時 在校生代表のお話
十時十分 卒業式終了、卒業生退場
私たちは細かい説明を先生から聞き、体育館裏へ移動した。
そして、小さな声で雑談をしているとき、卒業生入場の鐘が鳴った。
私たちは雑談をやめシーンと静けさが広がった。
「卒業生の入場です」
教頭先生の声とともに体育館裏のドアが開かれた。
私は赤色の絨毯の上を歩きながら周りの親たちを見てみた。
親たちは涙をハンカチで拭きながら「うちの子も大きくなったわねぇ」とか「ついにうちの子も高校生になるんやなぁ」とか自分の子供の事をしみじみと話していた。
私は自分の席へと着席した。
ザワザワみんなが話している。
でも、その声は教頭先生の卒業式開始の挨拶によってなくなった。
「ただいまから卒業式開始します。初めに卒業証書・卒業アルバム授与です」
すると生徒が順番に呼ばれて、校長先生から卒業証書と卒業アルバムを渡されていった。
私は最後の方に呼ばれた。
「ここに花坂れもんが今日をもってこの中学校を卒業したことを示します」
みんな言われることは同じなのに私はすごくドキドキした。
私は、校長先生から卒業証書を渡された。
続いて卒業アルバムも。
卒業証書と卒業アルバムを胸に抱え、席に戻った。
最後の生徒が席に戻ると、校長先生のお話が始まった。
正直校長先生のお話はだらだら長すぎて嫌だ。
だから今回もこれからの事を考えてやり過ごした。
次に卒業生代表のお話。
今回は学年トップの成績を誇る天水由良さんだ。
「この度、無事私たちの卒業式を行うことができとても嬉しく思います。皆様には感謝しかありません。そして……」
天水さんはその後の話も上手に話した。
次の在校生代表のお話で話した二年生の上神あきら君も上手だった。
そして卒業式終了して、卒業生の私たちは体育館から出た。
~五年後~
私は大学二年生になった。
学校で今までの人生を振り返る課題が出た。
私はレポートで使う写真を見つけるために久しぶりに中学校の卒業アルバムを見た。
開けてみると懐かしい風景や昔のクラスメイト達が映る写真がたくさん載っていた。
この写真たちに強く引き寄せられ、私は一から最後まで見た。
見終わったころには深夜になっていた。
私はアルバムを胸に抱きベッドで眠りに落ちた。