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#2 代償
「では、わたくしの城へご案内しますわ、アビリティ・パーソン!」
そう言って、ミゼラは城へと案内した。
シンデレラよろしく、馬車のようなもので街中を通って城へ向かう。国民からのざわめきや視線に、戸惑いすら感じる。
「着きました、ミゼラ様」
深い紫色の髪をポニーテールに束ねた人が、城の門に立っていた。
「この人は…?」
「ライト・イントゥルース。わたくしのメイドですわ」
「この人が、アビリティ・パーソンということですか」
ライトは冷静に状況判断をして、わたしたちに接待室に行くよう言った。
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接待室はいたるところに金色が散りばめられ、豪華絢爛な部屋だった。今、ミゼラはいない。ライトが説明をした。
「このオルタナティヴ国は、アビリティを持つ者が神相応の存在として崇められる。なぜなら、この国ではアビリティが全てのエネルギーだから。ここでアビリティを使うということは、体に潜むエネルギーを、このオルタナティヴ国に与えるということです。ここまで言えば、わかりますか」
「はぁ…要するに、使いすぎないようにってこと?」
「そういうことです」
「なんでそんなことがわかるのじゃ」
「…まあ、メイド、だからです。さて、紅茶の準備でもしましょうか」
ライトが接待室を出て、数十秒で戻る。「紅茶の準備ができました」、と。
「あ、ありがとう♪」
「ちょっと、この国をいろいろ歩いてみてもいいかしら?」
「どうぞ、ご自由に」
そう言われ、わたしたちは城を出た。
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「うぅ…」
さっそく、小さな女の子が泣いているのが見えた。持っている花は枯れ枯れだった。
「あ、お姉ちゃん。あびりてぃさん、だよね?」
椿に話しかけた彼女は、花を癒やすように言った。椿は躊躇したが、「仕方ないですね…」と枯れた花を元通りにした。
「わあ、さすがあびりてぃさんだね!」
そう言ってどこかへ行く女の子を眺め、椿のほうを見る。
「…痛っ…」
「椿、どうしたの?」
「痛い」
「何が?」
「頭痛がする。なんか、なんかが抜けていくみたい」
これが、能力の代償なのか。
「わかった、椿、わたしが治す」
「まってよ紫桜、紫桜まで苦しむ羽目になるよっ」
「じゃあどうすればいいの」
「医者とかに診てもらったら…」
椿の「なんか」って、なんなんだろうか。何が抜けていったんだろう。