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未来の花
yohana❁彡
私の名前は羽橋 愛珠紗(はねばしあずさ)。
今、目の前に知らない女の子がいる。
女の子は、私に向かって言った。
「こんにちは。わたしは自律学習型人工知能搭載アンドロイド、通称アイ。あなたはハネバシアズサ様でお間違いないでしょうか」
私は返答に困ったが、とりあえずうなずいた。
「お返事ありがとうございます、ご主人様」
「ご、ご主人様…?」
「お気に召さなかったでしょうか」
「いや、大丈夫。その、自律…なんて言ってたのかなあと」
「自律学習型人工知能搭載アンドロイドです。自分で学ぶAIを使っているアンドロイド、という意味です」
「なるほど…ありがとう。あの、ご主人様っていうのとか、敬語とかやめて」
「申し訳ございませんが、そのような行為は創造主(クリエイター)から許可を得ておりません」
「クリエイター?」
「はい、わたしを作ってくれた人です」
「だれ?」
「それを言うことも、許可されていません」
「なにそれ…なんか怪しいんだけど」
「いつか申請してみます」
「いつかって、いつ?」
「目的を果たしたら、です」
アイは、淡々とした口調で答える。わたしは不気味になった。
「わたしが何も知らないなんて…申し訳ございません」
私の顔がこわばっていたのか、アイは謝った。でも、AIだから、本当は間違ったことをした、などとは思わないだろう。
「で、目的って何?」
「申し訳ございません。それも許可されておりません」
聞けることないじゃん…。
もう、私は、何も聞く気がなくなった。
「アイ。何聞けばいいのさ?」
「ですよね。出直してきます」
「出直すって、どうやって?」
「………」
アイは、まぶた?を閉じて何も答えない。
…これ、どうすればいいの…?
その1分後、まぶたをとじながら、アイが言った。
「自律学習型人工知能搭載アンドロイド、通称アイ、起動しました」
「アイ?」
その後アイは止まっていた。
────それも、まだまぶたをとじているままで。
しばらくして、アイはまぶたを開き、
「ご主人様、学びなおしてきました」
「じゃあ、ご主人様とか、敬語とかやめてね」
「できません」
「……………………え?」
「正式に申請をしましたが、許可を得られませんでした」
「創造主の名前は?」
「それも許可されませんでした」
「なにそれ~…」
「では、今日からよろしくお願いします」
「………………………え?」
「今日から、わたしはあなたと生活します」
「は?」
「大丈夫です、創造主があなたの両親をハッキングしてくれたので」
「困るんですけど」
「いつか申請します」
「あんたのくちぐせはそれか?」
「くちぐせ…それもいいですね」
「話通じない…」
「人間の心理は不思議ですね」
アイはほほえんだ。
わたしはアイのほほえみを見て、すいこまれそうになった。
部屋のすみでも、昨日から知らぬ間に置いてあった、見覚えのない未来的な青色の小さな花がほほえんでいた。
°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧
気が付くと、私はベットの上にいた。
私は起き上がり、アイの姿を探した。が、見当たらなかった。
「……アイは…?」
「はい、ご主人様。アイはここにいます」
アイは、すぐ横にいた。
さっきまでいなかったはずだけど────。
「私、どうしたんだろう…」
「簡単に要約しますと、あの後夕ご飯を3人で食べて、ご主人様は終わった後ベットに直行したのです。疲れていらっしゃったんですか?」
「あ……そうみたい」
私はまた、ベットに寝転がる。
「……………………………え、3人⁉」
「はい、3人です」
アイは当たり前だというように答えた。
「アイは食べなかったの?」
「私はアンドロイドですから、ごはんなんて食べません」
アイは少し笑った──── 気がする。たぶん、気のせい。
部屋のすみをふと見ると、あの花がある。
「…あの花の色、アイの目の色と似てる」
私はポツリとつぶやいた。
「ああ、〈ミライソウ〉ですね。確かに、私の目の色は未来色です」
「ミライソウ?」
初めて聞く名前だ。そんなの、おいた覚えない。
「創造主が好きな花です。だから私の目の色も、未来色にしてくれたんです」
「ところで、未来色って何なの?」
「創造主がつけた名前です。薄くて柔らかいクリアな水色のことを指します」
「じゃあ、これも未来色?」
私は机にあったちょうちょ型のピンを指さした。
「そうです、それです!クリアで純粋な未来色です!…こんなに完璧な未来色は、初めて見ました…」
アイがピンを見て、目をキラキラさせている。
私はドキドキしてしまった。
「そ、そんなにほしいなら、あげるよ!」
「えっ、いいんですか⁉」
「うん!」
私は、アイのきれいな髪に、ピンをつけてあげた。
「あ…似合う」
「そうですか⁉ありがとうございます!」
アイはとても嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいる。
私は見とれてしまった。
その時────。
バチッ!
「ご主人様…今のは?」
「えっ、な、なに⁉」
ど、どどどどどうしよう!
実は私は、何かにとても夢中になったり、とても必死になったりすると未来色の雷が手から出てしまう。
その時、すみっこにあったミライソウが、ほんのりあおい光を放った。
「えっええええええええええ!!!!!!」
私はあせった。でも、そのせいでまた雷が出てしまった!!!
「ご主人様。これは何ですか?」
アイがゆっくりこちらへ歩み寄る。
「違うの!これは…ほ、ほら!危ないから近寄らないで!!!」
私は雷が出る右手をアイに突き出す。
「アイ!今すぐシャットダウンして!今すぐ!」
「どうしてですか?」
「いいから早く!シャットダウンして!」
「……………わかりました」
アイは動きが止まり、その場で人形のようにバタッと倒れた。
私は深呼吸をした。すると、雷がやんだ(?)。
「アイ!もう起きていいよ」
しかしアイは起きない。
「アイ?アイ!」
そうしたら、アイはあっけなくゆっくりとまぶたを開いた。
「ご主人様。先ほどの雷は?」
「さっきの記憶データを消去して!今すぐ!」
「…………わかりました、消去します」
アイはまぶたを閉じた。
そして1分後、アイはまぶたを開いた。
「起動完了しました、ご主人様。自己診断プログラム……異常なし。髪に『完璧な未来色のピン』が装着されていることを確認しました」
「よかっ…た…」
私は安心して、床に座り込んだ。
ビチッ…。
雷が少し出てしまったが、アイには気づかれていないようだった。
「そういえば、アイの名前の由来って何なの?」
「AIなので、そのまま読んで『アイ』です」
「願いはこもってないんだ…」
私は少し期待していたけれど、違っていたようだ。
「ご主人様の名前の由来は何ですか?」
「私?私は…聞いたことないかも」
自分の名前について考えたことなんて、あまりない。
でもまあ、なんとなくいい意味なんだろうな、とは思っていた。
「では、聞きに行きましょう!」
「……………………………………………は?」
「聞きにいかないんですか?」
「いや、急に?」
「人間の世界では、それが許されていないんですか?」
「許されてないわけじゃないんだけど…なんかさぁ…」
その時、部屋のドアが開いた。
「え、お母さん⁉」
びっくりして、思わずアイの方を見ると、アイが頭をかいている。
「呼んじゃいました」
「アイー!」
「愛珠紗の…名前の由来…は…」
私は、まあいっか、聞こう、と思ったところだったが、お母さんは急に口を閉じて、そそくさと出て行ってしまった。
「はぁ…?意味わかんないんだけど!」
私はだんだんイライラしてきた。
「まあ、落ち着いてください。ほら、起きたら朝に…………」
私は、だんだん意識が薄れていくのが分かった…。
°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧
気づけば、薄い未来色の、濃い霧の中にいた。
周りでは機械音が鳴り響き、そばには小さな青い花がきらめいている。
°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧°˖✧
「わっ!」
私は、目を覚ました。
なんだ、夢か…。
「ご主人様、遅刻しますよ」
横を見ると、私の学校、夜花学園(よはながくえん)中等部の制服を着ているアイがいた。
「なんで、その服…」
「学校へ行くことになりました」
「アイはAIじゃないの?」
「AIでも学校に行くんです」
アイはふくれっ面になる。
「とにかく、早く行かないと遅刻しますよ」
「あ、あぁ、そうだね」
私は制服に着替え、家を出た。
🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬
「う…暑い」
今は夏なので、すごく暑い。おまけに今日は太陽がぎらぎらと照りつけている。
「アイはいいなぁ…」
「どうしてですか?」
アイが、暑いのに涼しい顔で聞く。
「そりゃあアンドロイドだもん、暑さは感じないでしょ?」
「そういえば、確かにそうですね。私は温度は感じません」
「でしょ?だから、いいなぁって」
「そうですか…」
アイは足元を見ながら、何か考えているようだった。
🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬
「やっとついた…」
私はやっと学校についた。…あ、私「達」か。
「皆さん、今日は転入生がきます」
先生が言った。
そして、誰かが…ん、アイ⁉
なんと、アイが入ってきた!
「はじめまして、夏貝 アイ(なつがい あい)です。よろしくお願いします」
夏貝⁉
そんな苗字だったんだ…!
「じゃあ、あそこに座ってください」
私の方を指してきたので、とてもびっくりした。
でも、よく見ると、私の隣を指していた。
アイはそこに座った。
「アイって、苗字、夏貝だったの?」
「ああ、まぁ…創造主の苗字です」
「それは言っていいんだ?」
「はい、苗字か下の名前どっちかならいいって言われてます」
そう言って笑うアイが愛おしく、私は見とれていた。
「………………………というか、まさかクラスメートたちをハッキングしてないよね?」
「あぁ、安心してください、そんな悪魔とか魔王みたいなことはしていません」
私は心配しながらも、いくつかの授業をして、ついに昼休み。
今日は本でも借りに行くか…。
「愛珠紗ちゃん」
後ろから誰かに呼ばれた。
「え、うん!…あ、初斗くん」
クラスメートの小林初斗(こばやしういと)くんだった。
同じ、科学部の友達だ。
頭が良くて、スポーツ万能でおまけに優しいので超大人気!
誰もが憧れる人だった。
…まあ、私の幼馴染でもある。
その初斗くんを見て、アイが不思議そうに見ている。
「先生が、愛珠紗ちゃんに、アイちゃんは部活何がいいか聞いてきてって言われたけど…アイちゃんに聞けばいいよね」
そういって、初斗くんはほほ笑む。
「アイちゃん。部活は何がいい?僕らは科学部だけど…」
「ではつまり、ご主…愛珠紗さんも科学部?」
「うん、そうだよ」
初斗くんはそう言いつつも、何か言いたげな表情をしていた。
「じゃあ私も、科学部にします」
「そっか、ありがとう」
そういった初斗くんは、私の方を見て、何か聞きたそうな顔をしていた。
あああああああああああああああ!
も────────────!
これ絶対初斗くんにバレてるし!
どうしよう!
…………………ん?何がバレたの?
え?なんで私は焦ってたの?
あ、雷出てないよね?…うん、出てない。
あー、よかった…。
とりあえず、本借りに行くか。
私は図書室へ向かった。
廊下を歩いていると、急に後ろから声をかけられた。
「愛珠紗ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」
「うぎゃああああああっ!」
びっくりして、変な声を出してしまった。
「う、初斗くん…驚かさないでよ」
「ごめんごめん。…で、聞いてもいい?」
「ちょ、ちょっと遠くの場所にしない?」
「…………うん、いいよ」
そして、少し離れた場所へ移動した。
ここは入学したてのころ、二人だけの秘密にしようね、という約束をした秘密基地。
もう最近来ていなかったので、懐かしいにおいがする。海のような爽やかなにおいは、あのころと変わらない。
「で、愛珠紗ちゃん。アイちゃんと何か関係があるよね?」
うぐぐっ…!
なんて単刀直入な質問!
他の人にはやらないことなのに………。
ここでバラすわけにはいかない!
「え、今日会ったばっかりだよ?」
「ほんとに?」
「ほ…ほんと」
「………………………う~ん?」
す、鋭い………。
いつバレるかハラハラドキドキだ…。もうどうしよう!
いや、ダメだ、あきらめちゃ!ねばってたら、初斗くんはあきらめる!
「とにかく!私は今日、初めてあったんだよ!もう、疑わないでよ!」
「でも、絶対何か関係あるでしょ?」
「し、知ってどうするの?」
「どうするっていうか…気になるだけ、ってことにしておこう」
『しておこう』⁉どういう意味⁉本当は違うってこと?
私は返答に困り、何も言えないまま立ちつくしていた。
その時、パチッと少しだけ雷が出た。見たのか見てないのか、初斗くんは少し笑った気がする。
「まあ、愛珠紗ちゃんが言わないなら、言うまで待つよ」
うううううぅ!
その言葉、嫌い!
プレッシャーがひどい!
言う?言わない?言う?言わない?
もう迷っちゃう!
…ええい、どうせバレちゃうんだから、今でいいや!
「ちょ、ちょっと待って!」
私はアイのことも、雷のことも全て話した。そうしたら、初斗くんは最初から分かっていたかのような表情をした。
「あぁ、やっぱりね。実は、僕も────」
すると、初斗くんの手から未来色の雷が出た。
「雷が出るんだよ。びっくりでしょ?」
私はびっくりしすぎて、ぽか~んと口を開けたまま立ちつくした。
「これは、二人…ううん、三人だけの秘密ね」
「三人?」
「アイちゃんのこと」
「ああ、そっか。…それにしても、アイの気配がする」
「…すみません」
後ろから、アイが出てきた⁉
「あ、アイ⁉」
「二人の雰囲気が怪しかったので、ついてきました」
「どういう意味、それ⁉」
私は、あ、れ、を思い浮かべてしまい、顔が赤くなってしまった。
「秘密がバレそうだなぁ、と思いまして」
「そっちか…」
「そっちって、なに?」
「え、えっとねぇ…」
あぁ~…。
初斗くんは、あ、れ、に鈍いんだよなぁ…。
「まあ、き、気にしないで。それより、授業始まっちゃうよ!」
「あ、そっか!急がなきゃ!」
「そうですね!」
私たちは教室へ走った。
そして、放課後になった。
「アイちゃん、部活、来る?」
「来ないこともできるのですか?」
「うん。うちの学校、部活には絶対所属しなきゃいけないけど、活動するかは自由なんだよ。…愛珠紗ちゃんはどうする?」
「………行かない」
私は、科学部にしたけど、科学は超苦手だからいつも活動していない。
帰宅部が良かったんだけどなぁ…。
「え⁉愛珠紗さん、いかないんですか⁉面白そうじゃないですか⁉」
「科学、苦手なの。…アイは行くの?」
「もちろんです!」
「じゃあ、初斗くん、アイのことよろしくね」
「あ、うん…ねえさ、愛珠紗ちゃん。せっかく科学部入ったんだから、いつか一緒に実験しようよ」
「いつかね」
「そっか………」
そう言う初斗くんは、少しさみしそうにも見えた。
実験をしても、私が足を引っ張るだけなのに…なんでそこまで私にこだわるんだろう?
とりあえず、私は家に帰った。
🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬🐚🪼🐬
部屋に入ると、一つの花冠が目に留まった。
「……懐かしい」
私は、あの時のことを思い出した────。
⋆。˚𓇼 ⋆。˚𓆟 · ⊹ ࣪ ﹏𓊝﹏𓂁﹏⊹⋆。˚𓇼 ⋆。˚𓆟 · ⊹ ࣪ 𓆟
『あずさちゃん、ちょっとだけまって!』
幼い初斗くんは、私に向かって言った。
『ほんとうにできるの?』
『だいじょうぶ!ぼくにまかせて!』
初斗くんは、花冠を編んでいた。
『あ、くずれちゃった!』
『ねえ、もうそんなのあとででいいよー、あそぼうよー。なんでそんなにそれつくりたいの?』
『それは…できた!はい、どうぞ、あずさちゃん!』
『…え、わたしに?』
『うん!たいせつにしてね!』
『でも、どうしてこのおはな?』
『それは…おおきくなったらわかるよ!』
初斗くんはそう言ってウインクした。
『えぇ~』
⋆。˚𓇼 ⋆。˚𓆟 · ⊹ ࣪ ﹏𓊝﹏𓂁﹏⊹⋆。˚𓇼 ⋆。˚𓆟 · ⊹ ࣪ 𓆟
大きくなったらって…なんで?
そういえばこの花、勿忘草だ。
でもなんで?
初斗くんは昔から頭がいいから、きっと何か願いを込めたに違いない。
勿忘草…わすれなぐさ…『忘れない』?
ん~?
ベットに寝転がりながら、私は頭をフル回転させて意味を考えていた。
あ!あの時の初斗くん、花言葉にハマってた!
調べればわかるかも!
私はスマホで勿忘草の花言葉を調べた。
《勿忘草(ワスレナグサ)の全体の花言葉は、「私を忘れないで」「真実の愛」「誠実な愛」です。この花言葉は、川に落ちて命を落とした騎士が、恋人に残した切ない最期の言葉に由来しています。 [1, 2, 3]
花色によっても異なる花言葉を持っています。 [1]
青:真実の愛、誠の愛
白:私を忘れないで
ピンク:真実の友情、誠実 [1, 2, 3, 4]
勿忘草の詳細な由来や特徴については、花言葉-由来 や LOVEGREEN をご覧ください。》
この花冠は、青、白、ピンク全ての色を使っているから…。
私は頭が混乱した。
えっと…つまり…初斗くんは…!
い、いや、今はどうか分かんないし!
これはあの時の気持ちだよね、うん!
そのとき、ドアがバタッと開いた。
「あっ、アイ…お帰り!」
「はい、…その…」
ん?アイの様子がおかしい。故障したのかな?
「どうしたの?」
「いえ、その…なんでもありません!」
「そう?」
どうしたんだろう…?
「ねえ、何かあったなら相談してよ!」
「プライバシーに関わることなので」
「まさか、初斗くんから!」
「………………………」
やっぱりそうなんだ…。
もしかして、花冠のこと?
「ねえ!教えて!絶対誰にも言わない!お願い!アイ!教えてよ!」
「じゅ、充電してくるので!」
そしてアイは、部屋のとなりの物置に逃げた。
「う~ん……絶対何か隠してるなぁ…」
ほんとになんなの!
初斗くん、絶対何かアイに教えた!
明日聞くしかない!
「初斗くん!昨日何かアイに言ったでしょ!」
「え…な、何のことかなぁ……」
あれ?珍しくあせってる。まさか、あ、れ、のこと⁉
「教えて!どういうことなの!」
「まあまあ、落ち着いて。ほ、ほら…次の部活のこと!」
「絶対違うよね?」
「………………………」
初斗くんの目が泳いでいる。
「じゃ、じゃあ、卒業したら言うよ」
「え~」
好きな人でもできたのかな?
顔赤くなってるし…。
「あ、それと。今日、あの秘密基地で、2人で話したいことがあって」
「あ、うん…分かった」
放課後。
私は初斗くんと秘密基地へ向かった。
「話したいことって、なに?」
「あのね。アイちゃんが送られた理由、分かったかもしれないんだ」
「えっ!本当⁉」
「いや、多分なんだけど…愛珠紗ちゃんの、雷のことじゃないかって思って」
「じゃあ、なんで初斗くんのところじゃなかったの?」
「女子の方が話しやすいんじゃない?」
「アイはAIだよ?」
「…………………………………………………」
初斗くんは、あ、そうだった、という顔をして固まっていた。
「と、とにかく、さっきの会話は忘れて。また今度ね」
まったく……。
初斗くんは頭がいいけど、けっこうドジなんだよな…。
まあ、そういうところも初斗くんのいいところだけどね。
「初斗くん、創造主の苗字、知ってる?」
「えっ?愛珠紗ちゃん、知ってるの?」
「うん。夏貝だって」
「あ…アイちゃんと一緒なんだね」
「うん」
そう言って私たちは笑いあった。
この時間が、いつまでも続けばいいのになと、私は思ってしまった。
しかし、急に頭が痛くなってきた。
初斗くんもそうみたいで、頭を押さえている。
そして、そこで視界が黒く塗りつぶされた。
〔う~ん、まさかアンドロイドに、シャットダウンや記憶データの消去を要求するとは…なかなか賢いなぁ…。それにしてもまさか、同じ能力を持つ相手を見つけてしまうとは…こっちの男の子…初斗くんだっけ?その子もなかなか賢い…雷が出る人は、賢いのかな?〕
鈴をふるような、軽やかな声が横から聞こえてくる。でも、私は目を開けることができなかった。
〔はぁ……いつ起きるのかな…ちょっと強引すぎたかも?でも、それ以外方法がなかったし…でも、本当は起きてたりして!…あ、まぶたロック解除するの忘れてた!〕
そして、私のまぶたに何か柔らかいものがふれた。すると、ゆっくりとまぶたを開けることができた。
「……………あ」
声の主を見てみると、華やかで可愛らしい、未来色のカチューシャをした女の子がいた。
「あ、起きた!」
その子の、博士みたいな白衣についた名札には〈夏貝茉凛───なつがいまりん〉とあった。
この人が創造主なのかな…?
【システムエラー、システムエラー。システムに何らかの不具合が発生しました】
「うわ~、だる!またかよ~」
アイの創造主?が言う。
すると、また意識がどこかに飛んで行った。
「………………………あれ」
目を開けると、秘密基地で倒れたままだった。
すみっこでは、初斗くんが座って何か考えている。
「初斗くん」
「あっ、愛珠紗ちゃん、起きたんだ」
「ねえ、さっきの子って…」
「さっきの子?」
「え、見なかったの?未来色…あ、知らないか。水色のカチューシャした子。可愛い子だよ」
「僕は見なかったけど…」
「え?ほんとに?」
「うん、機械的な部屋に僕一人だった…あれ、でも僕…目を開けられなかった」
「え⁉じゃあ、どうして機械的な部屋ってわかったの?」
「分かんないよ…今日はもう帰ろう」
「………………………うん…」
私はもっと聞き出したかったけど、初斗くんがいやがっているから聞き出せない。
私は廊下を歩きだした。
「愛・珠・紗・ちゃん!」
「うわっ…アリスちゃん」
最近仲良くなった、瀬戸アリスちゃんだ。
ミステリアスだけど、ドジで、でも憎めない存在。
「ねえねえ~、ちょっと来て~」
「え…うん」
私は少し嫌な予感がしたが、いくことにした。
連れていかれた先は、やっぱり女子トイレだった。
女子会が始まるんだ…。
アリスちゃんの女子会は、少し苦手だ。
なぜなら、初斗くんについて色々聞かれるから。
はぁぁぁ~。
ゆううつだぁ…。
「ねえねえ、愛珠紗ちゃん」
「うん…」
「乗り気じゃなさそうだね?」
アリスちゃんはミステリアスな笑みを浮かべる。
私は目をそらしてしまう。
「好きな人、できた?」
「もう。いないって言ってるじゃん」
「ふふふふっ。アリスねー、できた」
「…………………え?」
「誰か、知りたい?」
「うん」
「あのね~、実は、小林君!」
「え、初斗くん⁉」
私が驚いていると、アリスちゃんは顔を紅潮させた。
「そうなの。自分でも分かんないけど」
私は、もやもやしてしまった。
アリスちゃんは、初斗くんが…。
私はあきらめようか、と思った。
アリスちゃんは頭がいいし、可愛いから。
だから………。
「…どうしたの?」
「あ…ちょっとびっくりして。いい相手だと思うよ」
「でしょ!だからさ、愛珠紗ちゃんは、見張っててほしいの」
「見張る?」
「小林君にくっつく人がいたら、追い払ってほしいの」
「ちょっと無理かも」
「え~、なんでよ。ちょっとぐらい、いいじゃん」
「だけど…さ。私も…初斗くん…に、くっついてる…から、さ。無理だと…思うんだ」
「だからこそ、だよ!愛珠紗ちゃんはいつも初斗くんの横にいるから、違和感がないんだよ!」
「ご…ごめん。私には…できない」
私はアリスちゃんに背を向けた。
「………なんで?なんでなの?」
「私は……私にはそんなことできない。アリスちゃんは大切な友達だけど…だけど、私にもやることが…あるから!」
私は走り出した。
トイレに残されたアリスちゃんは、つぶやいた。
「…ふふふ、私の心理戦に負けたわね。小林君は私のものよ!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
なんでなの?このもやもやした気持ちはなに?
アリスちゃんに、やきもちを焼いてるの?
どうして?
私は…初斗くんが…ううん、違う!
じゃあ、なんで…?
どうして…?
私は家に走り出した。
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
「ア・イ・ちゃん!」
「あ…アリスさん、でしょうか?」
「そうそう!…ねぇ、私たち、協力しない?」
「なにをですか?」
「私は小林君がほしい。アイちゃんは愛珠紗ちゃんがほしい。だから、協力するんだよ」
「私は、ご主…愛珠紗さんを見守るだけです。ほしいということではありません。また、そのような行為は、許可が必要です」
「いいから、いいから。早くしないと、愛珠紗ちゃんが小林君にとられちゃうよ?」
「それでいいんです」
「そうすると、アイちゃんは相手されなくなるよ?」
「とにかく、お断りします」
「だめ。拒否権はない」
「なぜそこまでこだわるんですか?私に」
「君しかいないから。大丈夫、ご褒美もあげる。もし協力しなかったら、愛珠紗ちゃんがどうなるか、分かってる?」
「…………………分かりました」
「そうそう、その返事が聞きたかったのよ…」
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
「あ~…ただいま」
「おかえりなさい、ご主人様」
アイは何かを必死で考えていた様子だった。
「ねぇ、聞いて。アリスちゃんがね、好きな人できたんだって。それが、初斗くんらしくて…」
私は大きなため息をついた。
「そ、そうなんですね…」
「うん…………………それで、なんかもやもやしてるの。なんでだろう?」
「それは………初斗くんが好きだから、じゃないんですか?」
「え、まさか?…………………………………そうかもしれないかな…?」
「やっと認めたんですね」
「うん…………………」
「…………………私、アリスさんから協力を求められたんです。ご主人様と初斗くんを引き離せって。私は協力しましたが、やるつもりはありません」
「え…?本当?」
「はい、私はご主人様を見守ります」
私はほっとして、ベットに寝転がった。
すると、また頭痛が襲ってきた……。
「よし、まぶたもロックを解除した!今日こそは成功してくれ!」
「…………………………ん」
「わ!起きた!」
「初斗くん……………」
「大丈夫、君のすぐ横にいる」
確かに横を見ると、初斗くんがいた。
よかった……。
そばに初斗くんがいると、なんだか安心する。
前はどうしてかわからなかったけど、今ならわかる。
「ふう…やっと成功した。あとは……ん、あとは……………あとは……?何しようとしたんだっけ?も~最近寝不足だから忘れちゃったよ~」
茉凛まりんちゃんは白衣のポケットから大きめのスマホ?を取り出すと、そこに映るスケジュールをだるそうにスクロールし始めた。
「あ、そうそう。私がアイを送った理由。…でも言ったらつまんなくなるから言わないほうがいっか~」
ううぅ…。
この人、本当にアイを作ったの?
なんかめっちゃお気楽なんだけど…。
すると、バン!とドアが開き、女の子が現れた。
その子は…アリスちゃん⁉
「アリスちゃん!」
「うわ、アリス!もうマジだる~」
「え…………………茉凛ちゃん、アリスちゃんと知り合い?」
「え!!!!!!なんで私の名前知ってんの⁉」
「名札…」
「あ!外すの忘れてた!あと、私とアリスはもちろん知り合い♪」
「茉凛!邪魔したわね!」
「え、邪魔?した覚えないけど」
「したわよ!私の計画、知ってるくせに!」
「知らないよ~ん」
茉凛ちゃんはベロベロバ~と舌を出す。
「このっ!調子に乗ってんじゃないわよ!」
アリスちゃんは顔を真っ赤にして叫んだ。
「だいたい茉凛!いっつもいっつも変なアンドロイドをいい加減に作って適当に試して!アイなんてゴミ中のゴミじゃない!」
「は?」
茉凛ちゃんはアリスちゃんにゆっくり近づいた。
その瞳は真っ青に燃えていた。
「君はアンドロイドなんて作れないくせに?アイは私の最高傑作なの!」
茉凛ちゃんは怒鳴った。
茉凛ちゃんは怒鳴っているはずなのに、怒鳴り声さえきれいな声に聞こえた。
「だからアリスは嫌いなんだよ!もう我慢できない!」
すると茉凛ちゃんは、未来色と白色が混ざった雷を全身から出した。
「えっ…ねえ、初斗くん」
「うん…茉凛ちゃんも雷が出るんだね」
アリスちゃんも叫んだ。
「私もいっつも邪魔されるから茉凛嫌いなんだよ!」
なんとアリスちゃんも、手からピンク色の雷を出した。
「アリスちゃんまで…⁉」
「二人とも、雷が出るんだ…」
白衣の天才科学者、茉凛(まりん)ちゃんの全身を包み込むのは、「未来色(水色)と白色が混ざった雷」。
対するアリスちゃんの手の平からバチバチと迸るのは、憎悪を燃やすような「ピンク色の雷」。それは激しい敵意に満ちていた。
「未来色と白」、そして「ピンク」。
この前ののスマホの画面を思い出した。
《青:真実の愛、誠の愛
白:私を忘れないで
ピンク:真実の友情、誠実 》
全員、勿忘草の色だ…。
これは止めなくちゃ!
「二人とも、落ち着いて────────!」
そう叫んだけど、聞こえてないようだった。
二人はお互いに襲いかかった。
研究室には、爆風が吹き荒れた。
私は吹き飛ばされそうになった!
「────愛珠紗ちゃん!」
初斗くんが私の手をつかんでくれた。
そして、私と初斗くんの手から、あの未来色の雷が出た。
爆風が吹き荒れているはずなのに、初斗くんの顔がはっきり見えた。
その美しい光景で、時が止まったように見えた。
「僕は、絶対に愛珠紗ちゃんを守る。だから、心配しないで────」
初斗くんはもう片方の手で、私の手をにぎっている方の手よりも強い雷を出した。
私は、その光に目がくらみそうだった。
目を開けると、そこはあの未来色の濃い霧の中だった。
横には、まだ手をにぎってくれている初斗くんがいた。
その霧の中には、幼いころ?の茉凛ちゃんとアリスちゃんがいた。
「まりんー!」
「あっ、アリス!なんかけがしてるけど、どうしたの?」
「またころんじゃったぁー!」
「えっ、だいじょうぶ?いたいのいたいの、とんでいけ!」
「いたくなくなったー!…う、いたっ」
「なんだぁ、まだいたいじゃん」
そういって二人は笑いあっていた。今の二人じゃ想像がつかない。
バチッ!
「あ、またかみなりでたね」
「ほんとだ!でも、へーきだよ!…わたしたち、ずーっとともだちだね!」
「え?…うん!あったりまえだよ!」
ピンク色の雷が出たままのアリスちゃんと、それをじっと見つめている茉凛ちゃんは笑った。
「アリスちゃんも、茉凛ちゃんも、本当は……」
私は、胸が痛くなった。
そして、視界が明るくひらけた。
そこは、学校の秘密基地だった。
初斗くんも、茉凛ちゃんも、アリスちゃんも、アイもいる。
「あれ……………………………?」
「愛珠紗ちゃん…やっと気が付いたね」
茉凛ちゃんが言った。
「あれ…、さっき、あの研究所で…」
「ううん、研究所はここだよ。ここは、学校じゃなくて、学校と空間をつなげた研究所。私が脳をいじって、ここを秘密基地にするようにプログラムしたの」
「あれ、じゃあ、あの戦いは…?」
「戦い?そんなことした?誰と?アリスは覚えてる?」
「戦い?女子が?中二病みたいなこと言わないでよ」
「ん…?」
忘れてる?
しかも、二人が、仲いい?
「ねえ初斗くん…どういうことかな?」
「わかんないけど…二人には秘密にしておこうよ」
「そっか」
「あ、じゃあ、二人の時間、楽しんでよ」
「二人?」
「そうそう。ほら、初斗くん。愛珠紗ちゃんに言うことあるでしょ」
「え?…………………ま、まさか、あれ⁉」
「は?何のこと?」
「そだね、しかたないなー。初斗くんは愛珠紗ちゃんに譲るよ」
「え、どゆこと⁉」
「私たちはここのシステムのエラーチェックをしてくるからさー。だるい作業は3人でサクッと終わらせちゃお!」
茉凛ちゃんがそう言ってアリスちゃんの肩を組み、アリスちゃんも「もう、急かさないでよ!」なんて言いながら、本当に仲良さそうに笑っている。
「ですねー、というか私たち、この日を待ってたんです」
アイまで…。
「初斗くーん、伝えたいこと、ちゃんとはっきり伝えるんだよー」
茉凛ちゃんが言って、三人は出て行って、秘密基地には私と初斗くんが残った。
「あ、愛珠紗ちゃん。その…僕、ずっと愛珠紗ちゃんの近くにいたい。そして、僕…ずっと、ずーっといつまでも、愛珠紗ちゃんを守ってみせる」
「私も…同じ」
秘密基地を横からこっそりのぞき込んでいた三人は、笑いあっていた。
「も~、初斗くんったら!はっきり好きって言えばいいのに!」
「え~、それは照れくさくな~い」
「え?そうかな~」
「まあそれが人間の心理ですよ~」
「なんかこっちまでドキドキする~!」
「こっちは大切なものを取られた気分よ!まあでも、どーせすぐ別れるよね!」
「またまた~。ほんとはお似合いだなーとでも思ってるんでしょ!」
「ちがーう!」
「二人とも、ケンカしないでくださいよ~」
私と初斗くんは、三人に気づかない。
「ほんとに⁉」
「もちろん!あと、あの花冠の意味、分かっちゃった」
「えっ………!」
初斗くんは真っ赤。
やっぱりそういう意味だったんだ…。
なんだか私も照れてしまう。
私は初斗くんの手を取った。
「昔と変わんなかったんだね」
そういって、笑いあった。
心がはじけるような気持ちになった!
(────「未来の花」完)
🐚茉凛の研究所🐚
「ふぁぁぁ~…ねむ」
「もー、アイの研究に寝る時間つぎ込んでるから!」
「だってさ~…ふぁぁぁ」
「そもそも、なんで『アイ』なの?もっといい名前なかったの?しかも、送った目的って何?」
「あぁ、それね~。送った目的は、あの二人をくっつけるため!『愛』だから『アイ』!ふふふ、いいでしょ!…あ、これ、アイには秘密ね」
「そういうことだったの?さては、元々私の恋を邪魔する気だったんだな~!」
「おほほほほほほ~」
「やっぱり⁉もう、茉凛は恋愛にしか興味ないんだね~」
そう言ってアリスは呆れた。
でも今回は、本当にいいことしたな~、って思ってる。
アイも大幅アップグレードしたから、かなり性能が良くなっている。
とはいえ、もっとアイについての研究をしなければならないため、愛珠紗ちゃんからアイを回収した。
もちろんさみしがらないように、愛珠紗ちゃんのも、初斗くんのも、アイのも、ちゃ~んと記憶を消してある。
あ~、ほんと、いい仕事したな。
「でも茉凛、今回はちょっと強引すぎたんじゃない?」
「え~、そう?」
「……茉凛ってほんとにサイコパスだよね」
「なんでそうなるの⁉」
「…………………でも、いい友達」
え…………………。
アリス……………………!
「もう!いいこと言うじゃん!」
そして、私たちは笑いあった。
「さて、次の研究もがんばりますか!」
「また?今度は強引さをおさえてよ!」
「はいはい、分かってる~」
横にあるミライソウを見て、私はなんだか穏やかな気持ちになった。
はじめまして、yohana❁彡ですっ!
愛珠紗ちゃんと初斗くん、アイちゃんと茉凛ちゃん、そしてアリスちゃんが登場人物の「未来の花」どうでしたか?楽しんでいただけたらうれしいです!
次回は「星霜の花」という物語を書いていきます!
どうぞお楽しみに!