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うさぎちゃんのにんじんケーキ
保護者様向け
森の奥深くに、小さくて優しい心を持つうさぎちゃんが住んでいました。もうすぐ、森で一番強くて勇敢なライオンくんの誕生日です。うさぎちゃんは、大好きなライオンくんのために、何か特別なものを作ってあげたいと考えていました。
「そうだ!にんじんケーキはどうだろう?」
うさぎちゃんは思い立ちました。ライオンくんがにんじんを好きかどうかは知りませんでしたが、うさぎちゃんにとってにんじんは特別なものでした。心を込めて作れば、きっと喜んでくれるはず。うさぎちゃんは、森の仲間たちににんじんの集め方を尋ね、誕生日が近づくにつれ、せっせと材料を集め始めました。リスさんからは新鮮な卵を分けてもらい、クマさんからはとれたての蜂蜜をもらいました。
そして、誕生日の前日。うさぎちゃんは、夜通し一生懸命にんじんケーキを作りました。レシピ本をじっくり読み込み、分量を正確に測り、生地を混ぜる手にも力がこもります。オーブンから甘くて香ばしい匂いが漂い、うさぎちゃんの心は期待でいっぱになりました。
そして、ついにライオンくんの誕生日。うさぎちゃんは、ラッピングしたにんじんケーキを大事に抱え、ライオンくんの家へと向かいました。ライオンくんはたくさんの動物たちに囲まれていて、うさぎちゃんは少し緊張しながらも、ケーキを差し出しました。
「ライオンくん、お誕生日おめでとう!これ、私が作ったにんじんケーキです!」
ライオンくんは目を丸くしてケーキを見つめました。そして、一切れ取り分けて口に運びます。その瞬間、ライオンくんの顔が少しだけ曇ったように見えました。ケーキは、うさぎちゃんの想像していたようなふわふわで甘いものではなく、にんじんの土の香りが強く、少しだけ固い仕上がりだったのです。
周りの動物たちも、一口食べては「これは…個性的な味だね」と口々に言いました。うさぎちゃんの胸は、ぎゅっと締め付けられました。一生懸命作ったのに、喜んでもらえなかった…。涙がこみ上げてきて、うさぎちゃんはうつむいてしまいました。
その時、ライオンくんが静かに言いました。「うさぎちゃん、ありがとう。」
ライオンくんはもう一口ケーキを食べ、そして優しい笑顔で続けました。「こんなにも心を込めて作ってくれたケーキは、初めてだよ。君の優しい気持ちが、このケーキから伝わってくる。どんなに美味しいケーキよりも、嬉しいよ。」
ライオンくんの言葉に、うさぎちゃんは顔を上げました。ライオンくんの瞳は、優しさと温かさに満ちていました。他の動物たちも、ライオンくんの言葉にうなずき、うさぎちゃんに温かい視線を送ります。
うさぎちゃんの作ったにんじんケーキは、もしかしたら森で一番美味しいケーキではなかったかもしれません。けれど、そのケーキには、うさぎちゃんのライオンくんを思う真っ直ぐな気持ちと、たくさんの努力が詰まっていました。ライオンくんは、そのかけがえのない心を、何よりも大切に受け止めてくれたのです。
うさぎちゃんの心に、温かい光が灯りました。味はともかく、大切な友達に自分の気持ちを伝えることができた喜び。そして、その気持ちを、ちゃんと受け止めてくれる友達がいることへの感謝。
その日、うさぎちゃんとライオンくんの間に、言葉では言い表せないほどの、深く温かい絆が生まれたのでした。どんなに不器用でも、真心はきっと相手に伝わる。森の動物たちは、そのことを、うさぎちゃんの作ったにんじんケーキから教えてもらったようでした。
大人が読んで楽しいか わからないけど
大人にも読んでほしいです