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夜にだけ姿を見せる君。
これはある『普通』の少年少女のお話。
ある日の夜、満天の星が見えて来た頃、白髪で輝くような黄色い瞳の少女は歌って少年を待っていた。
少女「あの子、どうしちゃったんだろ。いつもこのくらいの時間に来てたと思うんだけど」
すると、茂みから音が聞こえて来た。
少女「あ!あの子かなぁ!」
茂みから顔を出したのはー
ー黒髪で青い目の、少年だった。
少年「『あの子』って呼ぶのやめろって言っただろ」
少女「えー、君が名前教えてくれないからでしょ?」
少年「そうだけどさぁ…」
少年はため息をつき、また口を開いた。
少年「君だって教えてくれないじゃん」
少女「君が教えてくれないから〜」
少年「じゃあ秘密のままでいいよ、僕も教えないから」
少女「え〜…仕方ないなぁ…まぁ、いつもここで会ってるしね」
少年「ていうか君はいつも僕より先にここに来てるけど、親は大丈夫なの?」
少女「それを言うなら君だって〜」
少年「僕は男だし寝たふりして来てるからいいの」
少女「え〜」
少女は「えこひいきだ!」と言って少年を軽く睨むように見ていた。
そして渋い顔をしながら口を開いた。
少女「…まぁ家が無いと言うか、此処が家みたいなもんだからね」
少年「此処が家?そんなわけないでしょ」
少年は「厨二病か?」と言うような顔で少女を見た。
少女「本当のことだからね。厨二病じゃないし」
少年「え、思ってること分かるとかエスパー?」
少女「顔見れば分かるしそれからかってないよね!?」
少年「あはははー」
少女「もー!」
少女が少年を追いかけているうちに夜明けが見えてきた。
少年「あ、朝だ…もう帰らないと」
少女「本当だ、じゃあこれでさよならだね」
少年「うん、それじゃあまたね」
少女「うん、バイバイ」
少年は走って帰って行った。
少女はそれを見送り、草の上に座った。
少女「…『またね』…か……会えるといいんだけど」
そう言って少女は《《姿を消した》》。
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次の日の夜、少年はいつも通り丘の上へ来た。
ーだが、少女は現れなかった。
次の日も
次の日も
一週間経っても
一ヶ月経っても
少女は来なかった。
少年はもうあの丘へ行かなくなっていた
ある日、少年はある記事を見かけた
その内容には、「丘で少女の白骨4体発見」と書かれていた
紛れもなく、あのいつも集まっていた丘だった。
少年は静かに泣いた。
そしていつか少女が言っていたことを思い出した
『此処が家みたいなものだから』
白骨4体が埋まっていたあの丘の上を、少女は『家』だと言っていた。
少年は、今やっとその意味を理解した。
あの丘へ行っても、もう少女と会うことはないだろう
少年は涙を拭い、その記事をそっと閉じた。
もう過去を見ないように。
外は、あの日のような満天の星が見えていた。
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ある夜…あの日のように満天の星空が見えた夜のこと。
少女「あの子結局『私』が見つかるまで気づかなかったなぁ」
少女はもう消えかけていた。
少女「ま、『私』が見つかったんだしいっか」
少女はそれだけ言うと夜明けと共に消えていった。
これはある『不通』の少年少女のお話。