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20240603
ミニ四句
**上京や洗うTシャツ独りぶん**
独り暮らしの洗濯機を眺めていた。上京する前は家族の人数をまとめて洗っていたから、ずいぶんと重みのある回り方・音の鳴り方・洗剤、そして洗濯後の干す圧倒的な量があった。
しかし、今は自分一人分。
その軽い感じに回されると、なんか寂しい感じがしてしまう。
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**Tシャツに|昨夜《よべ》のキャンプの煙の香**
洗濯機が止まって洗濯物を取り出すと、洗剤の香りとともにけむりの匂いがうっすら残っていることに気づいた。
あれ、まだ洗い足りないのかな……くんくん。と、洗ったばかりのTシャツを顔に近づけて、匂いを確かめている。その行為により、うっすらと、このTシャツとともにキャンプを過ごした昨夜のことを思い出す。
林の中、枝葉、たき火、川のせせらぎ……かすかに宿った自然の香り。
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**ベランダの夏雲部屋からはサザン**
外に目を向けると、夏の雲が泳いでいるのが分かる。
あーあ、そろそろやらないと……。空の優雅さに憧れて、または雲に釣られて。
一人の若い学生が、洗濯物を干しにベランダに出る。
本当は閉めたほうが冷暖房的には良いと思うが、別に閉めなくていっか。自分のだけだし。
窓を開けっ放しにした自室からは つけっぱなしにしたサザンのリズムが流れ落ちる。
この場面から、何かが始まるストーリー……。
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**洗剤の封切る新緑の|朝《あした》**
夏の気持ちの良い朝に、まだ未開封の洗剤のパックを開ける。
手先をねじる指先の込める力により、洗剤のプラスチック袋の封が切られること。それらがリンクして一日のスタートを切ったと表現している。
直後、スパッと開封する際の気持ちの良い感覚や、その瞬間に漏れ出てくる洗剤の香りが「新緑の朝だなあ」と実感させられた。