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🌡️❤️🩹
病床で今日も堕落の昼下がりを過ごしているとノートが風に吹かれる。ページがめくれる様は、まるで走馬灯のようだ。
(…あそこから、飛び降りちゃったりして)
屋上を見つめ、狂気的な思考に笑いを堪えその作戦をどう成功させるかイヤホンから流れる音楽と共に考える。それから数秒が経った頃、呼吸を整え走り出した。
(やっぱり高いな)
まだ知らない向こう側を興味深く見下ろしていると、隣で白衣が風に吹かれている。
「こら、だめでしょう」
説教じみた小さな声で、白衣の主はイヤホンを引き抜いてきた。
「…あら?これを聞くとはかなり渋いですね」
流れる音楽に耳を澄ませながら、分け合っているイヤホンを掴んでいる。
「曲の主人公も確かこんなことを」
それからイヤホンをこちらに戻し、階段へ向かおうとする彼女が振り返った。
「度胸なんて、本当はないんでしょう?」
肩を叩きながら音楽の中に風と同時に流れていく主人公の声と重なりながら青空を指差す彼女の笑い声が、耳元を撫でる。