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落堕
通りすがりの誰かに「変な子」と思われないよう腕時計をチラチラ確認するのもこれで何回目だろう。
現在の時刻は14:54分。集合時間は12時。そうだな…もう2時間も経っている。
私は何度も確信している。「彼はもう来ない。」それがあの時の答えなんだ。
目の前を通過するヒトに、流れる雲に、私は笑われていた。
認めればいい話なんだ。こんな気持ちさっさと切り捨ててさっさと家に帰れば良い。
でも、それすらも出来ない。信じられない。信じたくない。
彼の中で私は無知で都合のいい女って思われてる。そうやって思われてる。
君に振り回されて、落ちて、堕ちて。もう疲れたの。君に合わせるのはつかれるの。
これが私の末路だ。結局彼のところまで行けずに落ちるの。
私を置いて、地球は回る。私なんてこんな世界でちっぽけな存在。
だから、だからなのかな。みんな私を知らないみたいに何もなかったように振る舞う。
見て見ぬふりが得意なんだね。少しだけ息を止めて何も考えないことにしよう。
誰か、私のことを見てくれる人は居ないのかな。大丈夫?って声をかけてくれる人もいませんか?
会わなきゃよかった。知ろうとしなきゃよかった。好きになろうとしなきゃよかった。
私に笑いかけて、手を差し伸べて。あなたのぬくもりを知らなきゃよかった。
でも、もう彼は私のじゃない。私はただのキャストであなたは王子様。王子様にはお姫様が必要でしょ?
私は前を向いて随分前に降りた駅に戻っていった。もうやめた。彼を待つのはもうやめた。
私がこれ以上壊れないように、私が我慢するの。
私が、あなたに操られるなら、私は、それに、準ずるのみ。
大好きでした。