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S2 番外編
みやめお #meo
もう、ミリアーナが何もしても……。
婚約者だったころには浮気といえた行為も。
もう彼女は俺のものではなくなった。
正直父親の権力を手に入れるために王妃と結婚するなどありえない。
彼女も同じことを考えている…………はず。
新しい王宮の回廊を歩くたびに、過去の記憶がふと蘇る。
手を取り合って未来を語った夜。
風にそよぐ花畑の中、何度も誓った永遠。
すべてが幻だったのか、それとも今もどこかに残っているのか――。
ふと、脳裏に彼女の笑顔が浮かんできた。
ミリアーナはいつでもどんな困難があろうとも乗り越えて見せるだろう。
シェイは足を止め、新しい王宮の石壁にそっと手をあてる。
冷たい感触が現実を思い出させる。
ここはもう、夢を語ったあの場所ではない。
そのとき、遠くから足音が響いた。石畳に反響する軽やかな音。
そのリズムは、かつてよく知っていた誰かの歩み。
「……シェイ」
振り返った先に、ミリアーナがいた。まるで時間だけが逆流したかのように、彼女はあの日と同じ微笑みを浮かべて。
「こんなところで、何をしてるの?」
そこで、すべては途切れた。
夢だったのか。