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3話 愉快な仲間たち…?
「どうぞ」
美桜がA.I.D.A.に重苦しい扉の前に案内される。スッと小刻みに震える手をドアノブに伸ばす。と、勢いよく扉が開けられた。
ガチャッ!!
「うわぁ!…っと、ふぅ…セーフ!」
中から出てきたのは20代ぐらいの小柄な男性だった。白衣のような、にしては少し短いような白い上着に、首元までキチッとボタンが閉められた青シャツ。ダボっとした黒いズボン。髪の毛は天然パーマだろうか、クルクルとした茶髪からは大きな丸メガネが覗いている。
「あ、あれ?A.I.D.A.、そちらの方は?」
眼鏡をグイッと押し上げながらその男性が尋ねる。
「橘 美桜さん、例の天才ハッカーmです。美桜さん、こちらの方は同じサイバー犯罪対策課の|雲居《くもい》 ソラさんです」
「えっ、ちょっ、どういう…?」
美桜は行き場がなくなった手をアワアワと空中に漂わせていた。
「へぇ〜!例の…僕のことは雲居でもソラでも好きなように呼んでください!」
美桜がサッとA.I.D.A.の影に隠れる。
「あ、えと、はい」
雲居は美桜のことをジロジロと眺め回している。
「あの…失礼かもしれませんが、おいくつですか…?」
「18。一応成人してるぞ」
美桜は少しムッとして言う。雲居は少し俯きがちに呟く。
「世の中、凄い人なんてたくさんいるんですねぇ…」
美桜がどうしたものかと戸惑っていると、開け放たれたの扉から大きな女性の声が聞こえた。
「ソラぁ〜!何してるんだ!さっさとその書類届けてこい!!」
雲居の顔がサーッと青ざめる。
「は、はいぃ!すぐ行きます!ごめんなさい。またあとで!」
そう言い残して雲居は走り去っていった。A.I.D.A.がその雲居の後ろ姿を見送りながら言う。
「中に入りましょうか」
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二人が中に入ると正面に一昔前の社長席のような大きな机と椅子があった。そこには、少しくすみがかった赤髪を乱雑に伸ばした、大柄な女性が荒っぽく座っていた。その女性はたくさんの書類の山に目を通していたが、A.I.D.A.に気づくとすぐに顔を上げた。
「A.I.D.A.、ちょうどいい。この書類、頼んだぞ。そこの少女…少年は私に任せろ!」
「はい。わかりました」
「え?ちょ、A.I.D.A.?」
A.I.D.A.と女性がいつもそうしているように会話を交わす。
「よろしく!私は|天堂《てんどう》|凛《りん》だ。一応ここの課長を任されている。"リーダー"と呼んでくれ。君、名前は?」
美桜は天堂の気迫に押されながらなんとか声を絞り出す。
「…橘、美桜」
「美桜か…いい名前だな!君があの、ユートピアを騒がせているmなのか?」
「まぁ、はい…」
「よし!じゃあひとつ腕前を見せてもらおう。ソラは…いないから、葵!ちょっとこいつの相手をしてやってくれないか?」
天堂がそう呼びかけると、奥の部屋からふわふわとした色素の薄い、少し黄色がかった髪を横で束ねた華奢で美しい女性が出てきた。
「初めまして。私は|水無月《みなづき》|葵《あおい》です。ここの情報管理担当をしているわ。mと対戦できるなんて光栄ね」
「た、対戦…?」
天堂が怪しい笑みを口元に浮かべた。
「ルールは簡単!先に某有名社のセキュリティを突破した方が勝利だ」
ボソっと美桜が呟く。
「…一応警察でしょ。ここ」
「そうねぇ…普通の警察ならありえないわね。でも、私達実はちゃんとした警察じゃないの。ほとんどが元犯罪者。A.I.D.A.と、もう一人のメンバー以外がね。だから、公式には存在しないとされている組織なのよ」
水無月は穏やかな顔で行っているが内容は全く穏やかではない。
「さあ、始めるぞ!席につけ」
目の前に用意されたも機械は一昔前の、まだモニターとキーボードが実体を持っている物だった。
「リーダー、mはこれの操作を知らないんじゃない?」
「分かる。大丈夫だよ」
半ば水無月の言葉に被せるようにして美桜が言う。
「なんか怒涛の展開だけど…俺、負けるつもりはないからね。てか、コイツにブレイン・ネット入ってんの?」
そこには先ほどまでのオドオドとした"美桜"はおらず、楽しそうにうすら笑いを浮かべた"m"がいた。