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6.娘の現状 2
そして話は今日に戻る。
夜、ケルートから報告が来た。
今日は、ケルートしか護衛を付けなかったらしい。これは、どんどん娘が内向的になっているということか…?
否が応でも危機感が増してくる。
「今日の狩りではドラゴンにあったのですが…」
ドラゴン!? ドラゴンはここら辺は出ないはずだが…。
「本当か!?」
「疑いたい気持ちはわかりますが、本当です。」
そうなのか…では、報告をしておいたほうがいいだろう。話を聞くに一頭だけだったようだが、元気な竜だったと言っているように思える。なぜ…出てくるのだろうか?仕事が増えた…が…被害がほとんど出なかったのは幸いというべきだろう。
「して、どうなった。元気そうな様子を見ると、無事倒せたのか?」
「そうです。お嬢様が両翼を落とされ、最後は私が入れました…が、お嬢様一人でも倒せたと思います。」
「強さは?」
「弱めですね。ただ、それでも風だったので本来は100人程度で倒すものでもおかしくないかと。」
「娘はどうやって戦ったのだ?」
「同じく風を行使して威力を相殺していました。」
なるほど。効率の良い考え方だ。しかもそれだと周りに影響は来ない。よくできた娘だ。そこは公爵令嬢に恥じない…
「そうか。さすがとしか言えん。ところで、娘の話になるが、あれは内向的なのだろうか?」
「馬車や森でもまあまあ口を開いていましたし、内向的ではないのではないかと。ただ、自分がしたことのすごさを全く理解していないので、そういう意味では内向的とも言えるでしょう。」
よく喋っているのか。ますます娘がよくわからない。しかも、ドラゴンを二人で倒したことのすごさをわかっていないということだよな?普通は無理に決まっているだろうに。
「あ、あとお嬢様に是非伝えてほしいことが。」
「何だ?」
「魔物に早く気づいたのに、その存在を忘れるのはやめてほしい。と、伝えてください。」
つまり、娘がそういうことをしたのだな?ははは、傑作だ!
「確かに聞いた。」
「ありがとうございます。」
考える。娘はどうやら世間を理解していないようだ。だったら、人と関わりをもたせたほうがいいだろう。ふむ、一つ面白い考えが浮かんだ。これをすれば娘に嫌われるかもしれないが…致し方ない。娘の内向さが酷いならば、こうしよう。
楽しさを感じたまま、眠りについた。
「ご当主様、少しよろしいでしょうか。」
朝起きたら、いきなりこうだった。切羽詰まっている…というわけではなさそうだ。落ち着こう。
「どうした?」
「奥方様が帰ってきました。」
「そうか。すぐ行く。今ミリアネはどこにいる?」
「応接室におります」
「分かった。」
何かあったのか?いや、切羽詰まってはいなさそうだった。だったら、予定が早く終わっただけか。それならちょうどいい、クランのことでも話そう。
「まあ、早かったのね。急いでくれたのかしら?」
「もちろんだよ。元気な様子を見れて安心した。」
「うふふ、予定が早く終わったので、ちょっと繰り上げて帰ってきたの。せっかくだし娘や息子にも会いたいしね。」
よかった。予想通り、予定が早く終わっただけだった。
「そのクランのことだが…」
「あら?クランがどうかしたの?珍しいわね。」
「いや、どうもしたわけではない、私が急に気にしだしただけだ。」
「どういうことかしら?説明してちょうだい。」
学園でのクランの様子、そしてケルートからのクランの話を説明した。
「確かにクランはなにか考えていそうね。けど、別にクランから実力行使されたと言うわけではないんでしょう?」
「そうだ。」
「だったらまだ気にしないでいいんじゃないかしら?もしそれでも気になるようだったら…何かもう考えているようね。じゃあそこに関してはいいわ。他に何が聞きたいの?」
「クランの信念が何かを聞こうと思ってたんだが…まだ気にすることはないんだろう?」
「あら、旦那からのお願いとなれば別よ。考えてほしい?」
「考えたい。」
「相変わらず真面目だこと。うーん…信念ねぇ。まずその信念が自分から来たものか仕方なくそれを信念にしているかよね。」
「確かになぁ。自分からだったらいいが…仕方なくそうなっているならば助けたいなぁ。」
「確認するけど、そういうふうな信念が芽生えそうな心当たりはないのよね?」
「あぁ…ない…と思う。」
「だったら、たぶん神殿での1年間に何かあったんでしょう。今度聞いてみるわね。」
「え?クランに?」
それはやめといたほうがいいと思うが…
「違うわよ。神殿に、ね。」
「あぁ、それはいい考えだ。じゃあ頼むぞ。」
「任されました。」
さすが我が妻。考えていたよりもはるかに有意義な話し合いになった。
神殿…か…。
私も1年間あそこにいたが、不思議な場所だった。あそこなら…クランが何か信念をつくるような出来事が起きてもおかしくない。
取り敢えず、発布してみるか。ニヤリ
その日、伝令が走り回った。
「公爵令嬢、クラン・ヒマリアの心を開いた者1人に、金貨1000枚の報奨をやる。」
ちなみに…金貨1000枚は、それだけあれば、一生過ごすことが出来る。《《ただし》》、公爵家から見たら、微々たる金額でもある。
お金の価値観って面倒くさいですよねー。
一生生活できるのだから1億くらいでしょうか?
となると金貨1枚が10万円…恐ろしいな…
これからもこのシリーズをよろしくお願いします!