公開中
瞬きと視線
本当に一瞬だった。
なのに、こんなことになるなんて____
僕は瞬きの瞬間が嫌いだ。
じゃあ、寝るときは?
目をつぶる時は?
そう聞かれたら、
一瞬だけ視界が見えなくなるのが嫌なだけ。
というおかしな理屈をつける。
それほど嫌なのだ。
見えないのは怖い。
それは誰でもそうだが、僕は思う。
歩いている最中に視界が見えなくなる。
もしその瞬間に何かが起こっていたとしたら?
そういう瞬間があるのかもしれない、というのが瞬きに向ける嫌悪感に伯爵がかかってしまうわけだ。
視線もそうだ。
視線も怖い。
というより誰かに見られるのが怖い。
見ないで、と言えるわけもなく。
通り過ぎる人はじっと僕を見てくるんだ。
な、なんなんだよこれは。
気持ち悪い視線が、僕の体にまとわりついてきている。
その瞬間、僕の視界は一気に赤く染まった。
じわッ…
「なんで、視界が赤く…」
嗚呼、分かった。
僕は瞬きをしてしまったんだ。
嗚呼、どんどん赤く…
僕に視線が集まってしまった。
なんで、なんで…
なんでなんでなんで
嗚呼、なんで止まってくれないんだ…
「クソッ…」
僕は呻いた。
ズキッ
腹部に鋭い痛みが走る。
「うッ」
嫌だ。見るな。
僕をッ…見るな!
声を出そうと思っても、全く僕の喉は動いてくれなかった。
…
普段はすごくきれいな青空が、僕には茜色に見えて。
僕はそのまま目を閉じた。
そして次に目を開いた時には既に何処かにいた。
よかった…
あれ?僕は何でこんな風に思うのだろうか。
既に僕は狂っている気がしてならない。
ああ…
もう、いいや。
そう思って、僕は瞬きをした。
最後に目を開いた時には、綺麗な青空だったのを覚えている____。