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夜の時間
再び鳴り響いた鐘.今度はタイマーなどなく,プレイヤーの前にそれぞれ鍵が現れた.本来は金色だったのだろうか.ところどころ錆びてその下からは金がろうそくの明かりを反射している.
翔「3...」
サビの中からうっすら見える文字は,ギリシャ語で書かれていた.どうやら俺の部屋は3号室みたいだ.
紫苑「翔くんは,どこだった?」
俺にはもったいないほどにフレンドリーに接してくれるのは,ありがたいが,人から話しかけられることに慣れていないため,体が硬直した.見て見ぬふり,もしくは気づいていないのか,紫苑は自分の鍵を見つめた.
紫苑「俺は9号室.」
紫苑もまた,錆びついた鍵を持っていた.紫苑の鍵は俺と造りが少し違い,銀がサビの間から美しく顔をのぞかせている.そして鍵の中心部にはやはりギリシャ語の数字だ.
紫苑「零くんはどこだった?」
見つめていた鍵を手のひらに収め,紫苑は大きく首を振り,あたりを見回す.探しものの零は呆然と椅子に座っていた.放心状態のようだった.うつむいたまま,動きがない.不思議に思った俺達は零にゆっくり近づいた.
紫苑「零、くん?」
顔色を伺いつつも声をかける.零ははっとしたように首を持ち上げ,顔を隠していたフードはこぼれ落ち,銀髪と色白の肌が現れた.
零「カエデ」
正気なのか.零は頭を抱えながら,たった今席を立った水希の袖を掴んだ.水希は驚くことなくその場に踏みとどまった.
零「お前,カエデだろ?」
これには水希も顔をしかめる.狂ったように水希を「カエデ」だと思い込み,声をかけ続ける零.うつ伏せに隠れた額からは,汗が流れ落ちている.息もだんだん荒くなっていき,時々「ヒック」という過呼吸気味な音まで聞こえた.
水希「2人とも部屋に行ってていいよ.零の話は聞いとくから」
少し,いや,だいぶ心配だが,俺と紫苑の2人は水希と零を残し,部屋へと向かった.俺達がいなくなったホールには水希達以外誰もいない.
水希がそっと零の隣の椅子に腰掛けるのを最後に,俺達はホールの扉を閉じた.