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≪レターセット≫
次回≫
カタンッ
手紙が落ちる音がする。
今年ももうすぐ2026年。年賀状を投函する時に見るであろうポスト。
そう、赤い箱に手紙が入れる様の隙間があり、〒のマークがあるアレ。
そんな何処にでもあるポストが。
何処にもないポストになるなんて。
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|鬼灯蒼《ほおずきあお》は今年も年賀状を書いていた。
近所に小さな児童養護施設があり、蒼はよくそこに遊びに行っている。
もう16歳だが、子供には好かれる方でそこの子供達には「蒼にーちゃん」と懐かれているし、蒼もそれを悪く思ってはいない。
それは自分にも親がいなかったからその同情かもしれないし、ただ単に遊びたいだけかもしれないが、自分でもよくわからない。
(ま、わからなくてもいいんだけど…)
そんなことを考えながら書き終えた年賀状は中々の出来栄えだった。
投函しに行こうと立ち上がった時、一瞬目の前が真っ白になった。
気を失ったとかそんなじゃなくて、カメラのフラッシュの様な白い光。
その光はすぐ消え去り、目の前にはいつもの自分の部屋が広がっていた。
「…?なんだったんだ、今の…」
少し考えるが、まいっか、と思い直して前を向く。友達にも切り替えが早すぎるところは蒼のいいところであり悪いところでもあるよな、とよく言われる。
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外に出て近所のポストに向かう。
流石に年末なだけであって、人は少ない。
年末と言ってもまだ12/25日だが。
(懐炉持ってきてよかったなぁ…)
今年の冬は例年に比べて冷え込み、懐炉などの暖をとる道具は何処の店に行っても目にした。
懐炉死ぬ気で擦りながらポストに向かうと、意外とポストにはすぐ着いた。
そして鞄に入れておいた年賀状をポストに入れる。
カタンッ
手紙が落ちる音がする。
そして来た道を戻ろうとすると、ふとポストの根元に置かれたレターセットに気がついた。
何処か古臭くて、しかし何処か新しいような不思議なレターセット。
(…?誰か捨てていったのか?)
そう思ってレターセットを拾うと、レターセットの商品名が書いてあったところの文字が変わった。
『こんにちは、|一般人の男の子。《どの小説にも居そうな主人公さん》このレターセットは時空と繋がります。西暦851年、西暦2026年、西暦3068年の三つの時代に。ほら、早く手紙を書いて…』
「…え?」
その反応も当たり前に違い無い。生きてる(?)レターセットが現れたら誰でも怖いと思う。
「…残念ながら僕は一部の主人公と違って頭は逝ってませんから。」
そう吐き捨てて歩き始めようとすると、突如足が動かなくなった。驚いて足を見ると、そこには文字が巻き付いていた。
「…は?」
文字は足にきつく巻きついていて、取ろうにも外しようがない。
『こんなこともあろうかと思いまして、手紙を書かない限りその文字縄で足などを固定させて頂きます。懐炉を持っている様ですが、それもいつまで続くかわかりませんよ?』
「この腹黒手紙が。」
手口が完全に腹黒だ。もしここで書かなかったらどうなるのだろうか?試してみたいがその前に凍死するのが先だろう。
「…わかったよ。書けばいいんだろ。」
『はい』
その一文が表示されると共に文を書く紙と…
(うお、高そっ…)
ところどころに煌びやかな装束が施されていて、それでもしつこくギラギラしていないペンが落ちてきた。
蒼がペンに見惚れている間に腹黒手紙(仮)の文は変わっていた
『書かないのならこのまま凍死しますよ?笑』
「破いてもいいんだぞ腹黒手紙?」
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「これでいいか?」
そう言って蒼は手紙さん(仮)に手紙の文を見せた。
[こんにちは。僕は西暦2025年の鬼灯蒼です。腹黒手紙の手(?)を借りてこの文を送っています。
よかったら、西暦851年の方、西暦3068年の方御返事ください。]
『いいと思います。では、ポストの裏に投函して下さい。』
「ポストの…裏?」
ポストの裏は投函口などないわけで、投函しても表の投函口と同じになるはず。
現実にあるわけが無い。
だが、生きてる(?)レターセットが現れたのだ。もう何にも驚かない。
そんなことを考えながらポストの後ろに周ると…あった。
確かに手紙を入れれそうな穴があった。
「…あまりにもご都合主義だな?手紙さん?」
『そういうものです。』
そんな会話とも言いがたく筆談とも言いがたい会談(?)をしながら蒼はポストに手紙を入れた。
「僕は入れたぞ。帰るからな。」
『はい。暫くしたら机の上を見てください。』
そう肯定されたのでレターセットを置いて去ろうとした…ら。
突如体が何かに縛られた様に動かなくなり、蒼は勢い余ってその場に倒れ込んだ。
「いっ…てぇ!なんだこれ?!」
それは数分前にも見た文字縄だった。
手を後ろ手に縛られて身動きが取れない。
すると手紙が風もないのに目の前に飛んできた。
『私も連れて行かなければこのままですよ?』
「…くっそ、腹黒パワハラ手紙が。」
『いいんですか?www』
「…はいはい。連れてきゃいいんだろ。…イキリキッズかよ。」
縄を解かれた蒼は、手紙をポケットに入れて家に歩き出した。