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こぐまとメイと 狐のこんちゃん
新しい友達 こんちゃんに出会います
夏の森は、毎日が冒険でいっぱいです。こぐまとメイは、今日も新しい遊びを見つけようと、いつもの小道を歩いていました。メイは、こぐまの周りをちょこまか駆け回っています。
その時、ガサガサ!と茂みが大きく揺れ、中から小さな悲鳴が聞こえました。
「いたたた!なんだよもう!」
心配になったこぐまがそっと覗くと、そこには、茶色い毛並みのキツネの子どもが、切り株につまずいて転んでいました。片膝をさすりながら、ちょっと不貞腐れたような顔をしています。
「大丈夫?」こぐまが声をかけると、キツネの子はパッと顔を上げました。
「うるさいな! おれ、悪くないし!」
きゅっと口を結んで、いじっぱりな顔をしています。メイは、そんなキツネの子をじっと見つめています。
「怪我してるよ、血が出てる」とこぐまが言うと、キツネの子は自分の膝を見て、ようやく痛そうに顔をしかめました。
「ちぇっ…これくらい、なんともないし!」
それでも、立ち上がろうとはしません。
こぐまは、お父さんクマに教わった通り、近くにあった大きな葉っぱを取ってきて、そっとキツネの子の膝に当ててやりました。
「これでちょっとはマシになるかな」
キツネの子は、じっとこぐまの手元を見ていましたが、何も言いません。
「ねえ、お名前は?」メイが恐る恐る尋ねました。
キツネの子は、少しだけ顔を赤らめると、小さな声で答えました。
「お、おれは、こんちゃん。キツネのこんちゃん。別に、教えたくなかったけど…」
「僕はこぐま!こっちは妹のメイだよ!」
こぐまがにこやかに言うと、こんちゃんは少しだけ警戒を解いたようでした。
「こんちゃん、なんで転んじゃったの?」メイがまた尋ねます。
こんちゃんは、もじもじしながら、小さな声で言いました。
「だって…森のあっちに、珍しい木の実があるって聞いて、急いで見に行こうとしたんだ」
怪我のせいで立ち上がれないこんちゃんは、その場に座り込んだままです。こぐまとメイは、そんなこんちゃんを見て、クスッと小さな笑みをこぼしました。ちょっぴり格好つけているけど、本当は痛くて困っているのが伝わってきたからです。
それから、こぐまとメイは、こんちゃんの隣に座って、色々な話をしました。こんちゃんは、森のどこに珍しい木の実があるか、どの木の枝が一番揺れるかなど、好奇心旺盛なこんちゃんならではの面白い話をたくさんしてくれました。こぐまは、こんちゃんがいつも新しいことを見つけようとしていることに感心しました。メイは、こんちゃんの話を聞きながら、目をキラキラさせて楽しんでいました。
すっかり日が傾き、森に涼しい風が吹き始める頃、お母さんクマがお迎えに来ました。
「こぐま、メイ、そろそろおうちに帰る時間よ」
こんちゃんは、少し寂しそうに「もう帰るのか」とつぶやきました。
こぐまは、こんちゃんの膝に巻いた葉っぱを取り、「またね、こんちゃん!」と元気に言いました。
こんちゃんは照れたように顔をそむけましたが、小さな声で「…これ、やるよ」と、ポケットからツヤツヤのとっておきの木の実を一つ取り出し、こぐまに手渡してくれました。それは、こんちゃんが大切にしている、特にきれいな木の実です。
こぐまは、その木の実を大切に受け取りました。
「よし、明日は旅に出るぞ!」
こんちゃんは、まだ少し痛そうな足を気にしながらも、冒険への期待に満ちた目で空を見上げました。
初めて出会った日の「おれ、悪くないし」といういじっぱりな言葉とは裏腹に、本当は優しくて、友達思いのこんちゃん。こぐまは、新しい友達ができたことが嬉しくてたまりませんでした。メイも、こんちゃんがくれた木の実をぎゅっと握りしめて、にこにこしています。
夏の森は、こぐまとメイと、そしてキツネのこんちゃんの、新しい友情の始まりを優しく見守っているのでした
ルクス様本当にありがとうございました