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君は恋人だったはず
怖い話です。寝れなくなっちゃうかもしれませんよ?
初めて彼女に会ったのは電車の中だった。
連勤明けの俺の目に飛び込んできた彼女はまるで女神のように美しかった。
真っ直ぐ伸びた背筋、腰まで伸びた艷やかな黒髪。
しばらく彼女を見ていると、パッと目があった。
彼女は俺を見てニコリと微笑みすぐに別の方を向いてしまったけど、俺にはわかる。
彼女は俺に「今から恋人になりましょう?」と合図したのだ。
もちろん即OKだ。
恋人になった俺達は電車の中で合図で会話をした。
直接話しはしないけど、俺には彼女の気持ちがわかった。
ある日、彼女が首を傾けて俺に合図した。
きっと「家まで送って」と言っているのだろう。
もちろんだとも。俺は彼女の後ろを着いて送っていく。
彼女の家は俺の家の駅の一つ後にあった。
小さなアパートの角部屋。
そこが彼女の家だった。
彼女に手紙を送ってもいいか、と聞いたら彼女は鍵を開けながらいいよと合図してくれた。
俺はその日から頻繁に彼女に手紙を出した。
仕事が疎かになるほど、彼女の家のポストが溢れかえるほど。
そんなある日、彼女の家に警察が来ていた。
彼女に何かあったのか、不安に駆られる。
しばらく見ていたのだが、警察はすぐに引き上げていった。
彼女も元気そうだったので、ホッとする。
が、警察の話を聞いてその安心がなくなる。
どうやら彼女はストーカー被害にあっているというのだ。
恋人がいるのにストーカーは何を考えているんだ?
俺は怒りを募らせる。
その日から、俺は仕事を休んで彼女の身を守るために一緒にいることにした。
彼女の家に入り込んで盗聴器や隠しカメラを仕込んだ。
そして四六時中彼女のことを見守った。
彼女が誤って俺の仕込んだ盗聴器たちを取ってしまうことがあったが、そのたびに仕込みに行った。
そんなある日。
俺のもとにたくさんの警察官が詰め寄ってきた。
警察は俺に彼女との接触禁止令を出してきた。
違う。コイツラは警察官じゃない。
きっと彼女の言っていたストーカーたちなんだ。
俺は彼女を守るために彼女の家の周辺で一日の大半を過ごすようになった。
そして、彼女にたくさんの手紙を送る日々。
そんな日に終止符が打たれたのはとある日の夜。
彼女が帰ってきた。そのタイミングで俺は新たな手紙をポストに入れていたのだ。
「⋯あなたが、ストーカーだったのですね」
苦しげに、忌々しげに吐かれた彼女の言葉の意味がわからなかった。
なぜだ?俺達は恋人だったはず⋯。
必死に彼女に弁解をしたが、彼女は聞く耳を持たなかった。
「私に恋人はいません。そもそもあなたは誰ですか?」
そんな、俺は、君の恋人だったはず⋯
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『続いてのニュースです。〇〇県▢▢市のアパートに住んでいる女性を付け回したとして男性が逮捕されました。警察の調べによると男性は「恋人なのだと勘違いしていた」などと供述しており⋯』