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koharu物語 第一話 出会いと別れ
わたしのアールの二次創作です。
わたしは生きるのが苦痛だった。
たくさんの理由があった。
生きることを辞めたかった。
これは、「僕」が「俺」になる前の物語だ。
四月の上旬、ふと生苦しくなった。
スカートをはくのが億劫で、高校に入ってもなかなか学校に行けなかった。
親から、
「スカートを穿くのが嫌なんてオカシイ」
と言われてから、もう生きるのを辞めようと思った。
最後にせっかく高校に入ったんだから行こうと思って、学校に行った。
学校に行ったら何か変わるのかもしれない。
そう思ったけど、やっぱり苦しくて。
人から逃げるように屋上へ駆けあがった。
授業中の屋上には当たり前だけど、誰もいなかった。
『わたしって悪い子なのかな…』とか考えてたと思う。
ふと、下を見下ろすとかなりの高さがあった。
ざっと四階ほど。
ここから飛び降りよう
瞬間的にそう思った。
ここで飛び降りることができれば…
この生ぐるしさから解放される?
そう、心の底から思っていた。
ふと気づくと、フェンスの向こうに一人の女の子がいた。
髪を三つ編みに結んだ子だった。
いつの間にか、思わず声をかけていた。
「ねぇ、やめなよ」
「いやだ!私はここで飛び降りるんだ!!」
女の子はなかなかにゴウジョウだった。
でも話を聞くと、少しずつ飛び降りたい理由が分かった。
三つ編みちゃんは学校一のイケメン君に恋をしていたらしい。
でも、イケメン君には彼女がいて三つ編みちゃんには靡かなかった。
だから飛び降りを決意した…という。
「…いやなんでだよ」
突然のわたしのドスのきいた声に
三つ編みちゃんは目をぱちくりさせた。
「なんでわたしよりの先越そうとするわけ?
欲しいものが無いから飛び降りようなんて…
奪われたことすらないんでしょ?」
少しだけびっくりしてから三つ編みちゃんは笑った。
「ありがと。
話聞いてくれただけで、かなり楽になった」
そう言うと三つ編みちゃんは
「あなたも新しい恋でもしてみたら?」
と消えていった。
三つ編みちゃんが、あまりにもあっけらかんとしすぎて、
興ざめしてしまった。
この日、わたしはそのまま家に帰った。
「今日こそは飛び降りる。」
そう意気込んで学校に行ったのもつかの間、
屋上にはまた先客がいた。
今度はあの三つ編みちゃんじゃなくて、
背の低い女の子だった。
わたしは、またもや声をかけてしまった。
本当はわたしって面倒見良いんじゃないのか
とか思いながら、背の低い女の子の話を聞くことにした。
「クラスでずっと独りぼっちなの。
ここ最近、あのいじめっことくらいしか話してないわ…
いいえ。
あの子とも会話らしい会話をしてなかったな」
いっつも一方通行で…
そう話す彼女の瞳は少しだけ揺れていた。
「いやなんでだよ」
突然のわたしのドスのきいた声に三つ編みちゃん同様、
背の低い子も目を見開いていた。
「なんでわたしの先を越そうとするわけ?
どうせあんたも家に帰ればあったかいご飯が待ってるんでしょ?
親に愛されてるんでしょ?
なのになんでわたしの先を行こうとするの!!」
その言葉にびっくりした彼女は少しだけ泣いて、
「お腹がすいちゃった」
と、消えていった。
次の日も、また次の日も。
声をかけて、追い返して。
それでもわたしの心は救われることはなかった。
一週間が過ぎたころ。
初めて似た悩みの子に出会った。
彼女は黄色いカーディガンを着て、フェンスの外側に立っていた。
いつものようにフェンスの内側に戻して、話を聞くことにした。
「うちに帰るたびに、心の傷が増えていくことが分かるの。
酷い言葉を浴びせられて、すごく苦しいんだ。
だから、もう全部終わりにしたい。
痛いのはもう、嫌だから」
頭では何も考えていなかった。
思わず声に出ていた。
「ねぇ、やめて…よ…」
その瞬間、涙があふれた。
この子を止めることはわたしにはできない。
どうしても無理だ。
だって、わたしも同じ悩みで苦しんで、飛び降りようとしていたから。
わたしには無理だ。
それでも…
「ここからは消えてよ!!」
はっとカーディガンの子は目を見開いた。
「あなたを見ていると、とても苦しいんだ…」
嗚咽とともにひねり出した声を、
彼女は静かに聞いていた。
わたしが少し落ち着いたとき、彼女は言った。
「じゃあ今日はやめておこうかな…」
少し悲しそうな顔が印象的だった。
今日の屋上には誰もいない。
わたし一人だけだ。
もう、いいんだよ。
ゆっくりと靴を脱いで、フェンスをよじ登った。
フェンスの外は、中とあんまり変わらなかった。
あの子たちもこの景色を見てたのかな。
カーディガンは脱いで、フェンスにかける。
三つ編みをほどく。
一つずつ、苦しみを捨てていくように。
「わたしも、誰か止めてくれないかな」
ふと出た独り言。
いやいや、そんなことない。
だってわたしはこの日を心待ちにしていたんだから。
ゆっくりと雲に隠れていた太陽が出て来る。
足元には背の低いわたしの影ができた。
『わたしは、今から飛びます』
「待って!!」
良ければ感想を書いてくださるとうれしい限りです。