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曲パロ ハルトレイン 後編
ラスサビ〜
桃赤地雷注意
ハルトレイン神曲だよね
莉Side
さとみくんが『春が終わるまでに帰らないといけない』って言われてから二日後。
今日は学校で、今は教室。いつもよりさとちゃんと一緒にいる時間、増やせるかな……。
早く……告白しなくちゃなぁ……じゃないとさとちゃんが”あっち”へ行ってしまう。
「おはよう莉犬」
「わぁ!?さとちゃん!おはよう!」
「おはようだけでびっくりするとかおもろ」
「ちょ、考え事してて!急だったからびっくりしただけだもん」
「可愛い〜あ。」
最後に「あ」といった彼は口元に手を当てている。やっべぇって顔してる。
「〜〜!さとちゃんも可愛いもん…」
恥じらってるのと、クラスメイトに聞かれたくないので声が小さくなる。
「っ!りっ…!おま…!」
「あはは!何その反応?」
俺は笑いながら言う。
はぁ〜……可愛い。
「ねぇさとちゃーん」
「んー?」
「ハルの世界ってあるじゃん。」
「あぁ。」
「どうやったらいけるの?」
純粋な質問だった。別に、本当に行く気は、まだない。けど、少し気になった。
「んーと、汽車があって、それで行くんだけど、一回に二人までなんだよね〜」
「二人…」
「そ。俺は一人できたけどな」
「そっか!じゃあ、俺も行けるのか」
「うーん…お勧めはしない。」
「?なるほど?」
「まあ、莉犬に教えることでもないけどな」
そこで先生が入ってきて、会話がと切れる。
お勧めはしないって言ってるけど、行けないこともないんだよね。だったら、彼が帰るとき…
いや、やっぱ迷惑かな?
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さSide
俺がハルの世界に帰るとき、莉犬はどうするのかな?
あんなこと聞いてくるってことは、一緒に行こうとか考えてたり…?
それだったらすごい嬉しい。けど、一緒に行かすことはできねぇ。
「はぁ、なんでだよ。」
俺は授業なんてろくに聞かず、小さくそんなことを呟いた。
もう4月後半。そろそろ帰るか…帰るしかないんだよな。
その日の授業が終わると、先生に2日後急遽転校すると伝えた。勿論嘘だけど。
莉犬ともっと一緒にいたいけど。無理だから。
それに、俺の想いを伝えても、きっと彼は困るし、嫌いになるかも知れない。
それでも、一回は伝えたいな。
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翌日
「今までありがとう」
クラスメイトが送別会をしようと言い、最後のホームルームで今やっているのだ。
「こちらこそ、短い間ありがとな」
「転校しても元気でな!」
「うん」
莉犬の方にふと目をやるとなにか言いたげで、悲しそうな顔をしていた。
莉犬……まだ、一緒にいたいよ。
少し涙がこぼれそうになって、俺は止める。
「皆、ありがとな」
とは言ってもそこまで色んな人とは喋っていないのだけど。
悲しい気持ちを少しでも紛らわすために、俺はそう言った。
次の日、俺は出発の準備をした。
最後、遠目から学校を眺め、莉犬と過ごした日々を思い出した。
ペアになって何かをするときも、休み時間も、昼食の時間も、ずっと莉犬と過ごして。楽しかったなぁ。ちょっと前にお泊りもしたし。なんか、俺、この短期間すっげぇ充実してたんだなぁ。
だから寂しいのかな。莉犬と離れるのが。もう同じ楽しさを分かち合えないのが。
やっぱり、俺、莉犬が好きなんだなぁ。そう思っても、どうにもなんねぇけどさ。
「さて、行くか……」
俺は人気のない丘から来たので、また同じところから帰る。
俺は歩き出した。
学校に来る奴らの逆を歩く俺。さぁ、もうお別れだ。
15分くらい歩くと、その丘につく。
俺は切符代わりの桜の花びらを持つ。
普通の桜の花びらじゃない。ハルの世界の、列車を呼ぶための花びらだ。
桜は淡い桃色の光を放つ。俺は花びらからそっと手を離す。花びらは風に乗ってふわりと飛んでいく。
少し待った後、汽笛が聞こえてきた。
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莉Side
学校を遠くから眺める人影が見えた。
「さとちゃん……?」
あのきれいな顔立ち、あまり良く見えないけど、かすかに見える淡い美しい桃色の髪。
桃色の神の人影は、足早に学校から離れていった。
あの方向は……丘?
早く行かなきゃ。早くさとちゃんを追いかけなきゃ。
そう思った俺は、たまたま道中で会ったクラスメイトに、
「ごめん!俺今日欠席するって言っといて!」
そう言って、駆け出していた。きっとクラスメイトは困惑しただろうな。
でも、そう。今日さとちゃんはいなくなる。この世界から。ハルの世界というところに帰ってしまうのだ。それをわかっている俺は、そして、さとちゃんのことがどうしようもなく好きな俺には、ある考えが頭をよぎった。
単なる俺のわがままだ。さとちゃんが嫌なら良い。でも、もしいいよって言ってくれるのなら。
俺は無我夢中で走った。さとちゃんを追って。途中で信号に引っかかった。
「早く…早く…!さとちゃん………!」
信号が青になった瞬間俺はまた全力で走った。
段々さとちゃんが見えてきた。
よし。これなら丘に着くまでにはちゃんと追いつきそうだ………!
彼は丘の真ん中で、桜の花びらを持っていた。彼が手を花びらから手を話してから少し後、汽笛が聞こえてきた。疲れていた俺は今は歩いていて、ちょっとさとちゃんから距離があった。
そんなとき、雲ひとつない真っ青な空から、列車が来た。汽笛を鳴らし、車輪を動かす音を鳴らしながら。すると、天気雨が降ってきた。
「じゃあな。もう二度と会えない、莉犬。」
そう呟いた声が聞こえてきた。もう、二度と会えない?俺はそんなの、嫌だよ!
俺は走り出した。
「さとちゃん!!」
「っ!」
さとちゃんは俺の声を聞いて振り向いた。その顔はとても驚いていた。当たり前だ。普通今は学校にいる時間。俺はサボってるも同然のことしてるんだから。
「莉犬……なんで……」
「……く。」
「え?」
「俺も、一緒に行く!」
俺の口からはそんな言葉が飛び出ていた。
「一緒に行くって………」
「ハルの世界に!俺も!」
「馬鹿……!お前は駄目だ…!」
「どうして……?理由を言ってくれなきゃ、絶対行くって言うから!」
「こっちの世界の人がハルの世界に一回行ったら、もう二度と帰れないから…それはきっと莉犬の家族も、友達も……」
家族?友達?違う。俺は……
「家族よりも、友達よりも……!俺はさとちゃんが良い!!」
「っ!」
「それに、こういうときのために、家族に向けて手紙も書いてた。俺は、さとちゃんを選ぶって。」
「莉犬………本当に、いいのか…?」
「いい。俺はずっと、さとちゃんと一緒にいたい。だって俺は…!」
こんなこと言ったら、キミは俺を嫌いになるかも知れない、でも、それでも伝えたい。
俺は勢いで思いを言葉に乗せた。
「俺は!さとちゃんが好きだから!」
「莉犬……!でも…やっぱり、無理だ」
「俺は良いの。さとちゃんと同じ場所にいられたらそれで良いんだ。それとも、さとちゃんは俺がいるのは嫌?」
「!」
さとちゃんは、少しためらった顔をしたけれど、その後、俺をまっすぐ見つめて
「俺も莉犬が好きだ。莉犬とずっと一緒にいたい…!離れるのなんて…絶対嫌だ!」
彼の頬には、大きな雫が流れていた。
「ねぇ、俺もさとちゃんと一緒に行ってい良い?…!」
彼は無言で、俺を抱き寄せた。それと同時に、俺たちは列車の中に入っていた。
「さとちゃん…!」
「後悔しても知らないぞ」
「うん…後悔なんて絶対しない。」
「ん。莉犬、好き」
「俺も――…!!」
チュ
俺はさとちゃんに頬にキスされた。
「さとちゃん…!」
「ヘヘッ…莉犬が可愛くてさ」
「さとちゃんもかわいい!」
「そうかな?」
「うん!」
「莉犬、これからはずっと、一緒だな。」
「そうだね」
さとちゃんと一緒に……過ごせるんだ。もう、寂しくないんだ。そこまで友だちが多くないていうか少なかった俺には、本当に大切で、大好きで、幸せにしたい人。そんな彼が、一緒にいてくれるんだ。
「なぁ、莉犬。」
「ん?」
「改めて、俺と付き合ってください」
「…!こちらこそ、お願いします!!!」
列車が動き出した。その時、近くの結婚式場から、鐘の音が聞こえてきた。
まるで、俺たちを祝福してくれているかのように。きっと、この金が、俺たちの始まりの音だ。
好きだって気持ちが大きくなって、こんなことまでできるほど好きになっちゃったんだもん。
窓から見える天気雨と、太陽で照らされた街が、とてもきれいに見えた。そして、それを眺めているさとちゃんがもっと、きれいに見えた。
「好きだよ。」
俺は小さく呟いた。
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大切な人は捨てきれないし、好きなことに変わりない。
それでも、自分の中でその人についていくか、捨てるかの選択は必要。
愛で溢れた世界に、もっともっと、幸せの雨が振り続けますように。
全然更新しなくてすいません(誰か見てくれてるのかわからないけど。)
見てくださった方は、スクロールお疲れ様でした…!毎回長くてすいません。
これでハルトレインは終わりです!
やー一話で完結とかどうやってやれば良いんだよ………。