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    とある便利屋の記録②
    
    
    
    |周防雪音《すおうゆきね》と|竜舌蘭矢凪《りゅうぜつらんやなぎ》は親友同士だった。
年は雪音の方が一つ年下だったが、そんなことを気にすることもないほど仲良しだった。
雪音「矢凪ちゃん!双子ごっこやらない?」
矢凪「双子ごっこ?」
雪音「髪型をそっくりにするの!服は・・・ちょっと無理だけど」
矢凪「面白そうだね。やってみようか」
雪音「やったー!」
そんな会話があって以降、2人はハーフアップで過ごすようになった。
雪音は三つ編みハーフアップ、矢凪はストレートハーフアップという違いはあったが。
2人が表立って仲良くできないのは、家庭のせいである。
実は2人の家はヤ◯ザで、しかもお互い敵対組織にいたのだ。雪音も矢凪も兄がおり、どちらも組織の幹部。2人が一緒に遊べるのは、こっそり組織を抜け出した時だけだった。
ところが、とうとう2人に関わりがあることがバレてしまった。
2人は一縷の望みをかけ、便利屋Wに相談してみることにした。
雪音「・・・ってことがあって。このままじゃ私達、親友でいられなくなってしまうんです」
矢凪「これからも雪音とはずっと友達でいたいんです。どうにかできませんか?」
グルッペン「まさか、あいつに妹がおったとはな・・・わかった、この作戦試してみぃ」
グルッペンが伝えた作戦。それは突表紙もないものだったが、2人は最後の希望を信じ、実行に移すことにした。
2人は初めて出会った、海が見える崖の上に来ていた。
もちろん自殺するわけではない。その証拠に、崖に沿ってフェンスが付いている。
雪音「懐かしいね、私達・・・ここで初めて会ったんだっけ」
矢凪「そうだね。あれから3年も経つんだね・・・」
雪音「作戦、成功すればいいんだけど」
矢凪「信じるしかないよ。あの便利屋なら、きっと・・・」
矢凪が言い終わるより早く、沢山の足音が聞こえてきた。
雪音の兄|舞音《まのん》と、矢凪の兄|一矢《ひとや》が、大勢の部下を連れてやってきたのだ。
舞音「雪音!」
一矢「矢凪!」
2人がそれぞれの妹達に近づこうとした瞬間、
カチャッ
矢凪が雪音の喉にナイフを当てがい、雪音が矢凪の頭に銃を突きつけた。
2人の視線は、兄の方を向いていた。
雪音「私と矢凪ちゃんは親友だから。引き離そうとするなら、遠慮なく撃つから」
矢凪「私も。親友でいられないなら、私は容赦なくこのナイフを突き立てるよ」
その場の空気が固まった。