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prologue
_____目の前の光景は現実味のないものだった。
「交通事故ですって...」「運転手が薬物中毒者だったとか...」「女性が男の子を庇って...」「まだ若いのに...」「怖いわねぇ...」「可哀想に...」
ざわざわざわざわ...。
周りからいろんな声が聞こえてくる。
視線の中心にいるのは血塗れになった女性らしき人を抱えながら泣き叫ぶ少年。
「誰か助けて」と声が聞こえる。
...いや、あれはもう助からねぇだろ。
あの出血量じゃ既に冷たくなっていることだろう。
流石の俺も血は職業があれなもんで見慣れているが、事故現場を見続ける趣味はない。
心の中で「成仏してください」とだけ願って顔をあげた先に、
女の霊がいた。
...あれは...あの少年に憑くか憑かないかだな...
どうなろうと俺には関係ないため視線を外して帰ろうとする。
...だが、
「...ニコッ」
女の霊は微笑んで成仏していった。
...俺の目の前で。
「...は?」
誰かが呼んだ救急車のサイレンによって俺の独り言はかき消された。
「俺にあの少年の子守りしろって言うのかよ...」