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31.
「シャルム、一緒に着いてきてくれる?」
「お嬢様の命令なら、なんでもいたしますよ。」
やっぱりシャルムは私に忠実だ。
「なら命令するよ。潜入を私と一緒にクリアして。」
シャルムは私の考えに気づいたのか小さく笑った。
「ええ、もちろんです。」
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「久しぶりに魔界にきたよ、いい思い出はないけど。」
「そうですね、この潜入がストレス解消になるのでは?」
「かもしれないね。・・・そろそろかな。」
路地裏を歩いていると、大きな光が見えてきた。
光、とは言っても美音の出すような綺麗なものじゃない。
どこか濁っているような、そんな光。
天使が生み出す光を見てしまったら、これは本物とは思えない。
「お嬢様、能力をご使用ください。」
「うん。『能力創造 真実を隠す程度の能力』」
どんな能力がいいかなって2人で考えた結果がこれ。
この能力は真実を覆い隠し、私達を守る。
周りからは私たちのことが見えないし、声も聞こえない。
ただ、一つ問題が―――
「お嬢様、ドアを開けたらバレてしまうのでは?」
そう、私たちのことは認識できないけどドアが動くのはバレる。
不審に思った人が気づくこともあるだろうね。
「大丈夫、そこも考えてあるよ。『能力創造 存在を操る程度の能力』」
2つの能力を使っているからか、体が少し重い。
でも動けないほどじゃない、頑張らないと。
「シャルム、こっちに来て。」
今の私達ならこんな壁、あってないようなもの。
「お嬢様。前を向いて歩いて・・・・、え?」
シャルムが驚くのも無理はない。
私が壁をすり抜けたのだから。
「シャルムもできるよ。ほら、おいで。」
恐る恐る、一歩踏み出す。
するっと壁を抜け、室内に入ってこれた。
「今の私達は実体がないんだ。周りからは見られないし、幽霊みたいな状態ってこと。」
この声もシャルム以外には届かない。潜入にはうってつけ。
「このまま宝物庫に直行しようか。長居したくないし。」
シャルムはこくりと頷き、私達は闇の中を進み始めた。
実体がない状態は想像以上に快適だ。
見張りの魔族たちが談笑しているすぐ横を通り過ぎても、気づかれない。
数分後、私達は目的の宝物庫の前に辿り着いた。
「ここに宝石がたくさんあるらしいから、根こそぎ貰っていこうか。」
「お嬢様、セリフがまるで悪役ですよ。」
「いいんだよ。やってることは泥棒なんだから。」
壁をすり抜けていくと、ギラギラと眩しい部屋が視界に入る。
「やっぱり趣味あわないな・・・・。」
「―――なかなか派手な部屋ですね。」
「さくっと盗って帰ろうか。実体化だけ解くね。」
透明のまま、でも物に触ることができる状態。
たくさんの宝石をアイテムBOXに入れていく。
・・・たまに、石ころが混じってるけど気にしない。
「あら。子猫ちゃんたちが迷い込んだのかしら?」
その場の空気が静まり返った。
「『存在を操る程度の能力』」
カランカランと持っていた宝石が落ちる。
実体を失ったのだから、仕方がない。
でも、これで気づかれないはず。
現に目の前の男はキョロキョロしている。
「シャルム、ここの天井に風穴を開けるね。」
「・・・・正気ですか?」
「正気だよ。『重力操作』で宝石を貰っていけばいい。」
天井をぶっ壊して、『重力操作』で宝石を浮かせる。
「なるほど。」
シャルムは納得したみたい。
「一旦外に出ようか。そしたら『|小規模爆発《スモール エクスプロージョン》』でぶっ壊そう。」
壁をすり抜けて外に出ようとする。
すると、なにかに弾かれてすり抜けられない。
「あら、かかったわね。」
その声は、相変わらずキョロキョロとしていた男の口から発せられた。
私たちが見えていないはずなのに、まるで私たちに話しかけているかのようだった。
「どういうこと、シャルム?」
私は焦りながらシャルムに尋ねた。壁は確かにすり抜けられない。
「お嬢様、『存在を操る能力』は機能しています。おそらく、能力の影響を受けない結界なのかと。」
「でも、中に入るときは大丈夫だったよね?」
「きっと、私達を閉じ込めるための罠でしょう・・・・・!」
「『転移』なら脱出できるかな!?」
「私が先程試しましたが、だめでした。」
「―――なんて厄介な。」
私は舌打ちした。外に出られない。しかも、相手はこちらの動きを予測している。
男は愉快そうに笑う。
「透明になっていても、出られなければ何の意味もないわよ。」
ここにいても仕方がない。
「シャルム、作戦変更する。あの男を先に無力化するよ。実体化して、正面から叩き潰す!」
「承知いたしました、お嬢様!」
私たちは覚悟を決め、能力を切り替える準備をした。
コソコソするのは終わりだ。ここからは力勝負になる。