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君のその涙に、私は虹をかける。
いじめられてるグルーシャくんをチリちゃんが助けるお話。
怖いけど助けるのがまた…チリちゃんらしいというか…好き。
出てくる「コウキ」、「リナ」、「ユウト」、「サキ」、「アンナ」は生徒なので、なににも関係は
ありません!
僕はこの間、サキがアンナを虐めている、と先生に報告した。
…それが、今の状況を産んでいる。
「なぁ、こないだサキがあいつのこと虐めてるって教師にチクったの…お前だろ」
「はは、庇うとかどういうつもり?」
「ふざけんなよ、舐めてんの?」
…僕はわかってる、こういうのは何も言わないのが身のためだって。
「…おい、何とか言えよ!」
「マジでさ、舐めてんじゃん」
「うっざ、キモいんだけど」
「……」
「なんか言えって!!」
そんな罵声が聞こえたと思えば、肩に痛みが走る。
「っ……」
肩を抑えようとするが、ユウトに後ろから動けないようにされた。
「まぁいいじゃん?迷惑料払うって言ってんだし」
…んなこと言ってないんだけど。
そう思うより先にユウトは、背負っているリュックから僕の財布を取り出す。
おもむろに手を伸ばすが、「取れないねぇ~?w」と笑われた。
「ねぇ、抵抗するとかどういうつもり~?」
「じゃあアレやっちゃう?」
「お、いいじゃーん!」
「学校これなくしちゃおっか」
どんどん進んでいく会話に、追いつくのに時間がかかる。
脳内で整理している間に、いつの間にかズボンに手をかけられていた。
「おら、脱げよ」
「はーやーく、脱げって~w手解放してやるからさ~」
「自分でできないんでちゅか~?やってあげまちゅね~w」
「カメラよーし!!」
「てか脱がせてくれるとか優しくない?」
「マジそれなw!やっさし~」
あぁ、この動画もSNSに上げられるんだろうな。どうせ
その動画が証拠になって怒られればいいけど、うちのクラスはこいつらが
トップみたいなもんだから…教師は僕を叱るんだろう。ほんと、理不尽すぎて呆れる…
僕の高校生活、もう終わり…か。
なんか色々悟ったところに、一つの声が響いた。
「なぁ、自分ら!なにしとん!?」
「は?お前だれ」
「キモ~っ」
「つーかこいつ、俺らより年下じゃね?弱そ~w」
「はぁ?弱ないわ!てか、その人嫌がっとるやろ!離したりぃや!!」
「…!」
この子…誰だ?今まで僕のことみんな無視してきたのに…
翡翠色の長い髪と、あれは…男性用か。男性用のシャツを着ている。
顔は…言わずもがな、ものすごいイケメン。…男の子か?
「お前、年下のくせに舐めてんの?」
「調子乗んなよ」
「俺たちに話しかける権利あると思ってんの?」
「…なら、お前らにもその人虐める権利あんの?」
さっきの声から雰囲気がガラッと変わり、低い声が響く。
「は、あるに決まって…」
「その人、死んじゃうかもしれんねんで?お前らの虐めのせいで。命に関わるやん」
「…べ、別に!俺たちはこいつが死んでもどうでも…」
「お前らが殺したことになるけど、それでもどうでもええんか」
……あれ、泣いてる…?
低くてかっこいい声が、少しだけ震えている。
「…そ、そんなの知らね「お前らは!!」
ユウトの声が、この子の声にかき消された。
「お前らは…一年で忘れるかもしれんけど、でも…っ!虐められとるこの人は
一生忘れへんねん。そんくらい重大なことしとんねん、お前らは」
「……」
「いつから虐めとるか知らんけど、今までこの人の人生狂わせてきたこと…謝れ」
「「「「ご、ごめんなさい…」」」」
やば…この子だけで、僕も歯向かえなかったこいつらに頭下げさせた…
この子、何者…?
…とりあえず。
「っ、ねぇ、君…」
「っ、お兄さん!大丈夫…?殴られたり、してへん、?」
ありがとう、と言う前に、またもやかき消される声。
しかも、ものすごい心配してくれてる…。
「…うん、だいじょうぶ…」
「よかったぁ…はー…」
ため息をついたかと思えば、赤い瞳から涙がぽたぽたと零れだす。
「え゛っ」
「っ、はは…ごめん、めっちゃこわかった…」
かっこわるいなぁ、と続けるこの子は…
「…へぇ、チリって言うんだ…」
「ふふっ、お兄さんはぐるーしゃくんやっけ?今日からチリちゃんとグルーシャくんは
友達やな!」
…まぁ、命の恩人といっても過言ではないからな。
いきなり友達?とは思ったけど…
「…そっか……あ、結局忘れてた…助けてくれて、ありがとう」
「…!うん…っ、どういたしましてっ!」
「あの時のチリくん、すっごくかっこよかったよ」
「…?チリちゃん、女の子やけど…あ、そういう人?女の子とか男の子とか関係なく
くんってつけるタイプ…?」
「え、女の子なの…?」
この子には、色々驚かされるな…
「…けど、」
「けど?」
「ちりちゃん、かっこよかった?」
「え、うん…」
「…そっか、よかった…グルーシャくんにかっこいいって思ってもらえて」
「…??」
「なぁ、チリちゃんな?」
ぐるーしゃくんに、ひとめぼれしてん
「…へ?」
「ぐるーしゃくん、好きやで」
「え、えーっと…」
「返事はいらんで…やって、中学生の初対面のやつに告白されても意味わからんもんな」
…うん、意味わかんない。
「チリちゃん、おっきくなったらグルーシャくんにもっかい告白しに行く。
やから…そんときまで、ちゃんと待っとってな?」
「……ん、」
…ほんとに、この子には色々驚かされる。
初対面のはずなのに
すごく可愛く、かっこよく見える。
もう一度言う、初対面のはずなのに。
そうして僕とチリくん…チリちゃんは、そんな約束をした。
「ぐるーしゃくんが辛いときはな、チリちゃんが絶対助けんねん…」
おかえりなさいませ~っ
どうでしたか?
珍しく体調不良系ではないということで、楽しんでいただけたかなと思いますっ
楽しかった。
「ここまで読んでくれてありがとう」
「次も見てな~っ!」