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paint1 Chameleon
少し汚れた、古臭いアパート。
一人の女の一つの寝床。
払った家賃は計200万。
招いた友達はたったの3人。
私は今日、ここを出る。
準備はもう済んだ。
あとは私が立ち去るだけだ。
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空は曇っている。
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通っていた美術大学へは、もう行かない。
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謎の不安が、足を固く離さない。
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ドアがじっと私を見ている。誰かに見られてはいないだろうか。
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駄目だ。体が動かない。
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閃いた私は、持ち前のカラースプレーでドアに絵を描いた。
空は曇っていたが、あえて晴れの地図記号を描いた。濃い青のスプレーで。
私は、バンクシーになりたかった。
厚い雲が覆うこの世界では、私にとって、唯一ここだけが晴れていた。
【この世界をキャンパスに。】
持参物は、カラースプレーだけ。
何処へ行くのかは決めてない。
行き先なんて無いわけだし。
道具も道もなにも要らない。
引っ越しをしたわけじゃない。
家出をしたのだ。一人で。
生憎、周りの家族は5ヶ月前を最後に、皆天国に行ってしまった。
もう誰にも着色されない。
今まで多くの人の画用紙となり、絵具となってきた。
カメレオンのように、毎日毎日色を変えて、居たくもないその場に合わせていた。
増えていく肌色に対して、心はどんどん灰色に汚れていった。
でも、これからは一色に統一された飼育ケースも、たくさんの色が乱れ合った汚いこの街からも出て、この世界をキャンパスに、一色の色として歩くんだ。
決して他と混じることのない、私だけの色。
思えばあの心の灰色すら、人の塗装によるものだった。
✼今回のアート✼
青い晴れ記号
美術の成績2です。
私の絵心を数値化するならば
最大10にしても0.05ぐらいです。