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この道をずっと行けば
やっぱり書きたいところだけ
大和敢助は疲れていた。
今日はハロウィーン。活気づく街に誘われて、霊たちも異様に増えるのである。
海外版お盆のようなものなので、最近は帰ってきた良霊もあちらこちらで見られる。
「つっがれだ………。」
「あ〜、片目でこれはまずいかもね。」
霊である仲間も頷くほど、目にかかる負担がえげつないのだ。
「流石に死にゃあしねぇだろうが……これから毎年か。」
「そうだね。最近はお盆、霊の道も混むらしいからずらしてハロウィーンに帰る人も多いらしいよ。」
「霊にも渋滞とかあんのかよ。」
「あるよ〜。天界は広さとかないけど、現世に降りたらギッチギチだね。」
あっはっは、と彼は笑いそれにつられて自分も笑った。
今日も霊たちは賑やかである。高明にとりつく霊も、ハロウィーンに向けて増えていた。
なんとか引っ剥がせるものならいいが、引っ剥がせないと面倒になるから困ったものだ。
「今日はもう、一日パトロールだな。準備いいか?」
「もちろん!あ、今日終わったら、夕飯にビーフストロガノフ作ろう!」
「お?洋食か?なかなか作らねぇな。教えてくれ。」
りょーかい!その声に、周りの悪霊が蒸発した。
こいつの声には不思議な力があるようである。
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午後六時、ガランガランという大きな音で目を覚ます。
横を見ればまだ高明は眠っているようだった。
なにかが起こっている。敢助は慌てて部屋を出て階段を駆け下りた。
「なんだ、こいつら……。」
昼間にそこらじゅうをたむろしていた霊たちが、駅に向かって大行進を始めている。
霊という霊が集まり、歩くさまは気持ちの良いものとは言えなかった。
「敢助くん、敢助くん!聴こえる?というか聴いてて!」
耳元で響く聞き慣れた景光の声も危機感と焦燥感に満ちている。
何が起こっている。その声も出なかった。
「霊たちは仲間に向かってく!つまり天界へ生きそこねた霊に向かってくんだ!」
景光のその言葉と同時に、数体の霊がいきなり方向を変え自分に向かってくる。
「気を付けて、敢助くん!仮装なんてしちゃだめだよ!
霊に好かれやすい人は、つれてかれる!」
その言葉と同時に、仕込み杖が火を吹いた。
剣の代わりにもなる杖を振り回し、霊を天界に返してやる。
ホッとしたのもつかの間、体を戦慄が走った。
「由衣……!!!」
そう。幼馴染の彼女は今日、午後休を取り友達と遊びに行っているはずだ。
仮にも仮装なんてしていたら。
高明とは比べられないとしても、ただでさえ霊に好かれやすいというのに。
「まさか由衣ちゃんいないの!?」
「そのまさかだ。半休取ってる。」
「まずいよ、さっき由衣ちゃんらしき人見たけど仮装してる!」
なんでそれを先に言わない!?叫びたくなったがそれはそれ、これはこれだ。
敢助は霊の中へと飛び込んだ。
霊は駅にたむろする仮装集団の輪の中にどんどん吸い込まれていく。
「援護するよ、敢助くん!でも無理しないで!
敢助くんも好かれやすいんだからさ!」
「わーってる!」
ハロウィーンの日はやはり休まらない。