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3.再起動の拒絶
すず
「バグ……? 0号……?」
お父さんの言葉が、頭の中でノイズのように響く。
掴まれた手首から、冷たい何かが体の中に流れ込んでくる感覚。
「……やめて、離して!」
私は無我夢中でその手を振り払い、椅子を蹴るようにして立ち上がった。
ガシャーン、という皿の割れる音が静かなダイニングに響き渡った。
私はここから逃げないとまずいと思い、全速力で廊下に出た。
だが、お母さんに先回りされてしまった。
そのお母さんの横を通り抜け、廊下を走った。
私は振り返らずに走り出した。
豪華な壁紙を剥ぎ取るようにして廊下を駆け抜け、大きな玄関の扉に肩からぶつかる。
「開いて、お願い……っ!」
祈るような気持ちで回したノブは、あっけなく回った。
扉の向こう側にあったのは、青い空でも、見慣れた街並みでもなかった。
どこまでも続く、無機質で真っ白な研究施設の廊下。
「……うそ、でしょ」
私が「家」だと思っていた場所は、巨大な実験室の中に作られた、ただの箱庭だった。