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Day.1-5
注意書きとかは同シリーズの「前書き」見てね。
桜月と鏡花を逃すように立ち回ったものの、窓から怪物が侵入。
その怪物は二人を喰らおうと、その大きな口を開けていた。
手を伸ばそうにも、間に合うわけがない。
正直なところ、太宰は諦めていた。
しかし、次の瞬間。
閉まっていた寝台の仕切りが開かれ、その青年は声を上げた。
--- 「“|不思議の国のアリス《Alice in wonderland》”」 ---
黄色の文字列が、太宰達を包む。
理解が追いつかず、ただただ全員が反射的に目を瞑った。
???「……大丈夫?」
そんな声が聞こえ、太宰は目を開く。
すると、何故か保健室に自身達はいなかった。
真っ白な何もない空間。
否、一つだけあった。
座り込んでいる太宰や、鏡花に覆いかぶさる桜月。
そして、優しく笑っている青年の姿が映っている“鏡”。
たった一つだけある“鏡”に、太宰は異様な雰囲気を感じた。
太宰「な、にが……」
ルイス「心配しなくても、あの怪物は此処に来れない。そして此処は僕の世界……だと思う」
曖昧な回答に、太宰は何も言えなかった。
ただ、怪物が来れないなら一息つけることだけ理解した。
桜月「あれ、私生きてる……?」
ゆっくりと起き上がった桜月に、二人は視線を向ける。
とりあえず太宰は立ち上がり、桜月の元へ向かう。
桜月「あ、先輩! 何ですか此処!」
太宰「此処は私の同級生の世界だから心配はいらない、と思うよ」
桜月「思うよ!?」
もっとちゃんとした説明がしてもらいたい桜月。
しかし、太宰も理解できていないので何も言えなかった。
少ししてルイスが口を開く。
ルイス「初めまして。見たことないし新入生……かな。僕はルイスだ。ルイス・キャロル」
桜月「綺麗……」
ルイス「え?」
桜月「す、すみません! あんまり周りに外人がいなくて……いや、差別とかそういう訳では……!」
ルイス「そんなに焦らなくて大丈夫だよ」
太宰「私は太宰。太宰治だ」
ついでに太宰も自己紹介をし、桜月も改めて自己紹介をした。
桜月「それで此処って……」
ルイス「僕が創った世界、だと思う。上手く説明できないんだけど、あの頭痛の後から胸の辺りに温かいものがあって」
太宰「温かいもの?」
ルイス「自分でも未だに信じられていないんだけど、超能力とかの類いが使えるようになってる。僕の場合は、この世界に出入りする事ができる……みたいな?」
どういうこと、と太宰と桜月はツッコミを入れたくなった。
その時、視界の隅で何かが動いた。
???「あれ、わたし……」
桜月「お姉ちゃん!」
鏡花「さ、桜月?」
抱きついてきた桜月の頭を撫でながら、鏡花は自分の足を見る。
怪我をしている足には包帯が巻かれていた。
視線を上げると、太宰が微笑んでいる。
太宰「痛みはあると思うけど、止血も済んでるから無理をしなければ問題ないと思うよ」
鏡花「……貴方が手当を?」
太宰「うん。桜月ちゃんに助けを求められてね」
鏡花「ありがとう」
先輩だと気がついた鏡花はすぐに敬語を使おうとする。
しかし、太宰はそれを断った。
楽に接してもらえるのが一番らしい。
🐰不思議の国のアリス/Alice in wonderland
ルイス・キャロルの異能力。効果は空間を創造し、人や物を出し入れすることができる。作ることができるのはあくまで空間に関するものだけだが、何故か鏡はある。(壁や扉は可能だが、食べ物や家具などは創ることができないってことだーね。まぁ、やっぱり初登場の異能はルイスくんだよね。)
🐰異能力
床を転がり回るほどの頭痛の後に使えるようになった非科学的な力、超能力。