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弟
弟が動いた。
驚いた。
怖かった。
意味が分からなかった。
彼は生まれたての小鹿のように立ち上がりじろりとこちらを睨んだ。
「…なんで、殺したはずなのに!」
男は弟を憎んでいた。
勉強もできて運動もできる彼にうんざりしていた。
なぜ弟はできて俺はできないのかと。
そして男は弟を殺した。
バットで殴りまくった。
日ごろの恨みを込めて。
何発か殴ると弟は倒れて動かなくなった。
ほっとした男はあたりを片付け証拠隠滅作業をしていた。
すると背後から物音がし、驚いて振り返るとそこには殺したはずの弟が立っていた。
手には俺が弟を殺すのに使ったバットがあった。
「な、なんでお前生きてるんだよ!!」
弟は一言も話さないままこちらに近づいてくる。
「や、やめろ!わ、悪かった、悪かったから!」
そんな男の声は弟の耳には届かず、弟はバットを振り下ろした。