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待ち構えたオート・ロック
珍しく?短め~
「はぁ…はぁ…」
息が切れてきた。
さすがの私でも追いつかれるかもしれない。
「くっ…ここで、終わり…なの…?」
---
「はッ!」
敵チームの女子が、バスケボールを投げて入れる。
慌ててガードするが、手はスレスレで届かず。
自分の背の低さを恨んだ。
その暇はあったが、すぐにボールはゴールに入って。
スリーポイントが入った。
「あ…」
私は絶望した。
ピーッ!
「はぁ…」
終わりの掛け声と同時に、私はやっと息をついた。
バスケットボールの全国大会。
行先のないボールがボンッと音を立てて転がっていく。
「勝った…」
ネット越しに聞こえる声に、私はため息をつく。
点数表を見ると、『10-9』と書かれていた。
「…」
「接戦だったね~」
と、私に声をかけてきたのは、一応幼馴染の|螺萎音《らいね》。
敵チームだ。
「…そう?」
私は問う。
いくらなんでも、全国大会で負けたのだから、今の私には心の余裕など無い訳だ。
このままだと自棄になりなりそうだから、立ち去ろうとしたとき。
「ねぇ…《《アレ》》…」
と、急に螺音が、私の後ろ側を指さした。
そして______
**「いやぁぁぁぁぁぁあああああああ!」**
体育館に悲鳴が響き渡った。
その声の主は、螺音だ。
「何…?」
「大丈夫…?」
というざわめきが聞こえる中、私は驚きを隠せなかった。
「あ…」
私の目の前には、どんどん溶けていく、螺音の姿があった。
でも、周りにはそのことに関して驚く様子がない。
私は困惑した。
ねぇ…
ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ…!
叫びたい一心で声をかけるが。
「あ…あ…」
とうめく声しか聞こえない。
嫌…
「嫌ッ!!」
思わず声を出した。
「待って!まさか…そんな…」
螺音に手を伸ばした。
でも、
--- スッ___ ---
私の手を通り抜けた。
何が…起こってるの…?
冷や汗が出た。
今は冬で。
温まった体も徐々に冷めてきているのに。
「ねぇ、螺音。」
「…」
「…あれ?螺音?」
瞬きをすると、もうそこに螺音の姿はなかった。
---
キーンコーンカーンコーン…
放課後を知らせるチャイムが鳴った。
あれから、1か月がたったようだ。
私の周りには、ミステリー映画でしか起こらないような《《奇跡》》が起こっている。
意味が分からない人がいるかもだから、まず、試してみよう。
私は、螺音の《《友達だった》》|汐那《しな》に、こう聞いた。
--- 「ねぇ、汐那。螺音をみてないかな?」 ---
「へ…?ごめん、螺音って誰?」
ほら。
螺音の存在が、まるでこの世から消えたみたいな。
不思議だよね。
「そういえばさ、この前の全国大会、おめでとう!」
「あ…うん、ありがとう。」
そして、あの試合も私たちのチームが勝ったことになっているのだ。
なぜなら、あの螺音のスリーポイントとが、無かった事になってるからだ
螺音がいる《《世界線》》では、螺音がスリーポイントを入れるまで、6‐9の点数で私のチームは勝っていた。だが、案の定最後に螺音がスリーポイントを入れてしまったので負けてしまっていたのだが、螺音がいなくなっているので勝ったことになっている。
私が今の状況を《《奇跡》》と呼んでいるのには、これが1つの理由である。
「よかったのかな…」
とつぶやくと、
「何が?」
と聞かれるのでやめた。
「さ、もう帰ろうっと。」
今日は週に1度のバスケクラブがない日。
この学校にはなぜかバスケ部がないので、私はわざわざクラブに通っている。
だから、今日は早めに帰れる=ほとんど休みみたいなもの。
私は家路に走った。
貴重な休みを無駄にしたくないからね。
---
家路に帰っている途中。
「え…?」
もうこの世に《《いないはず》》の、螺音がいた。
「ら、螺音じゃん。久しぶり…今までどこに」
と言いかけた時。
`「許さない…」`
と、かすれた声で螺音が近づいてきた。
「…は?」
私は恐怖に見舞われた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんか私やった?」
`「許さない。」`
「え…な、なに…?何よ…」
サッ
不意に、螺音が手を伸ばして、私の腕をつかもうとした。
「嫌ッ!」
私は、螺音の手を思いっきり振り切って走った。
走って走って走って。
いつもの通学路。きれいな星空。
巡り巡る景色の中で、私は思った。
心なしかとても昏く、人通りが少ない気がする。
「はぁ…はぁ…」
息が切れてきた。
さすがの私でも追いつかれるかもしれない。
「くっ…ここで、終わり…なの…?」
いよいよ、私は自分のマンションへ来てしまった。
今思えば、途中で撒けば良かったのかもしれない。
でも、今は、そんなことを考えている場合じゃない。
考えなきゃ。
オートロックのボタンを押す。
あいにく鍵は持っていない。
家にお母さんがいるからだ。
ポチポチポチ。
ピロリンピロリン…
早く、早く出て!
ザッ…ザッ…
足音がだんだんと近づいてきている。
「お願いっ…!」
パ、と音がして、
『ハーイ。ドナタデスカァ?』
と声がした。
「お母さんッ!」
「開けて!」
『ダァレ?』
「は…?」
私は戸惑い、部屋番号を確認するが、
やっぱり私の家の部屋だ。
さらに、お母さんのことだ。
カメラで見えてるし、私の声だってわかるはずなのに。
『フフフ』
「…ねぇ、お願い。」
--- **「開けてぇ!!!」** ---
私は思い切り叫んだ。
「あっ」
今ので、気づかれた…?
「もしかして、今まで来なかったのは、気が付いていなかったから…?」
ザッ…ザッ…ザッ…
どんどん足音が近づいてきた。
「そんなぁっ…」
その瞬間。
ブチッ
タイムリミットになってしまった。
つまりは、会話が切れた。
オートロックは、以前の静けさを戻した。
「…」
もう私は途方に暮れていた。
「こんなことなら…」
--- 「|アイツ《螺音》に呪いなんてかけなきゃよかった…」 ---
---
元をただせは
全部私が悪いんだ。
「おはよう!」
といつもいつもウザったらしく話しかけてくる、螺音。
表面上の親友だ。
螺音は私よりもバスケがうまかった。
味方ならまだしも。
ましてや敵チームなのだ。
自分の実力では、もう勝てない。
それは、螺音が私より遅くバスケを始めてから、
初めて対決する日のことだった。
点数表を見ると、『8-9』と書かれていた。
「そんな…」
負けた。
あの螺音に。
あの敵チーム、と本来は言うべきなのだろうが、
点を多く入れていたのは螺音だった。
「もう嫌…っ」
やっぱり、わかってしまった。
--- 「私には、…才能がないんだ…。」 ---
---
ならば、才能を消すまで。
冗談半分で、私はウェブサイトで『人を呪う方法』と調べていた。
その中で。
「…あれ?」
一つだけ、文字色が違うサイトを見つけた。
「…これなら」
思わず、私はクリックしてしまった。
---
手順はいとも簡単だった。
①まず、相手の顔写真を人形に張り付ける。
その後、水を人形に浴びせる。
②その人形を炙るなり水に沈めたりするなり、とにかく念を込めながら人形を虐める。
③虐めた後、人形に向かって「これは貴方のせいです。」と4回唱える。
それで、呪の儀式は完成するのだ。
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私は螺音の写真を張り、火で炙って溶かした。
…そのせいかな。
`本当に、螺音は、解けちゃった♪`
---
「これも、全部自業自得か…」
私は、その向かってくる化け物に、
「…ごめん」
と告げた。
案の定、私は首を絞められた。
「…ありがとう。」
そう告げて、私は意識を手放した。
注意・警告
呪いの儀式をする際は、必ず自己責任でお願いします。私は一切の責任を負いません。