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【三話】 寂しさで心が埋まらないように
猫鬼 「…えっ……?」
状況を掴めない猫鬼は優しく頭上のソルを撫でる。
ソルは大きく伸びるとそのまま眠り始めた
紫苑 「最近出てった奴がいるんだ。部屋は余ってるから…お前もどうかなって話」
猫鬼 「…私……迷惑………かけちゃ―」
?? 「紫苑さんただいまー。…って誰?」
声がした方向に振り返ると腕いっぱいに紙袋を抱えた少女がいた
?? 「初めましてよね。私は|Coln・Materia《コルン・マテリア》よ!コルンって呼んで!」
透き通る白い肌に金髪のショートカット。背中には金色に輝いた綺麗な羽が目立つコルン。
コルンは、なかば強引に猫鬼の手を取ると握手をする
猫鬼 「…あの……その…」
コルン 「紫苑さん、この子新しい子なの?」
紫苑 「まだ分からねぇ。誘ってるだけだよ。ってか落ち着けコルン、お前は本当に子供だな」
零 「コルン、あちらに行こうか。話はしおんが戻ってきてからね」
諭されたコルンは渋々零について行く
コルン 「後で会いましょ紫苑さん。お土産を用意してきたの」
紫苑 「おーナイスだ。楽しみにしてるから夜飯作ってきてくれるか?」
コルン 「分かったわ!また後でね!」
紙袋を持ったままコルンは零を追う
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紫苑 「遅くなって悪かったな」
新しく入れ直したジュースを飲む紫苑
紫苑 「それで?お前はどうしたいんだ篠崎。」
猫鬼 (……名字…)
紫苑 「俺はお前の意見を尊重したいと思ってる。だからお前の決断が聞きたい」
紫苑はいたって真面目に話を続ける
紫苑 「それはお前の将来に関わる。俺のルールに従えないならいる意味ないだろ?」
猫鬼 「私……私がいたら………迷惑に…」
猫鬼は俯きながら視点をさまよわせる
紫苑からは見えないが若干焦点が合っていない
ソルはぐっすりと眠っている
猫鬼 「……や」
紫苑 「なんだ?」
猫鬼は意を決したらしく、紫苑を真っ直ぐ見る
頭上のソルを膝の上に持って撫でる
猫鬼 「私は…殺し屋なんです。だから…私がいると……迷惑になっちゃう」
紫苑 「んな訳あるか」
猫鬼 「…ぇ……でも………」
紫苑 「ここじゃみんな家族だ。ナニがあっても家族を大切にする。そういう場所なんだよここは」
そう言うと紫苑は椅子から腰を浮かせた
そして、そのまま立ち上がり猫鬼の目の前に立つ
猫鬼の瞳には紫苑が反射し映っている
紫苑 「少しでいい。俺の許可が出るまで目を瞑れ」
猫鬼は言われた通りに視界を手で覆う
紫苑 「あんま゛コレ゛が好きじゃねぇんだわ。だから、お前に見せるのは最初で最後だ。よく見とけ」
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―これが■■だ
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猫鬼 「…狐………」
猫鬼の視界の先には相変わらず彼がいた
だが、その姿はすっかり変化している
朱色の瞳はより深く真紅に染まっており、赤朽葉の耳はピンとたっている。
そして何よりも…先程は一つしかなかった尻尾は九つに増えている
紫苑? 「やぁ初めまして」
゛辻村紫苑゛の面影を残した゛それ゛はニコリと笑う
猫鬼 「紫苑さん……じゃないの?」
紫苑? 「我らは天狐と申します。以後お見知りおきを」
天狐と名乗るそれはゆっくりと会釈する
紫苑? 「ここには我らのような怪物が沢山います。たかが殺し屋ぐらいで迷惑になんかなりません」
猫鬼 「本当に…?」
紫苑? 「えぇ。もし貴女に危害が加わろうものなら紫苑がそれを排除してくれます。…あっと、もう時間です。それでは、また会える時まで」
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フッと、糸が切れたように紫苑の体が傾く
【参考】
https://ten-no-ya.com/blog/2371/