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悪女人生#2 「天才と呼びなさい」
あの後、カノンが慌てて朝食を用意し、私がそれを食べていた。体に染み付いた習慣があるのか、礼儀や食べ方が何だかおしゃれになっていた。
髪のセットはカノンがやってくれた。カノンは手先が器用で羨ましい。薔薇の髪飾りが私の…というか、バレッタの顔の良さを引き立てていて素敵だ。
「お嬢様、本日は入学式ですね、!」
「…入学式?」
「は、はい。クレリアン高等学校への入学日で間違いないと思います。」
「高等学校…高校か!」
高校の入学式なんて何年前なんだか…久々だ。
でも入学式って緊張するから苦手なのよね。今はバレッタの姿だし緊張しないかもだけど。
「制服を着ていると思うのですが…」
「…全然気にしてなかった、これ制服なのね。」
「はい、!」
赤色の制服なんて初めてみるわ…まぁバレッタらしいと言えばバレッタらしいけど。
「どのような方と同じ学級になるのか楽しみでございますね!」
「えぇ、まぁそうね。」
「特に今年は有名な貴族の方々が多くいらっしゃってるとかお聞きしますので、バレッタお嬢様が〜…」
私の体はカノンが話しているのにメイク台の前に進んで行った。メイク台についたとき、私の手は一つのリップを手に取った。
「あ、お嬢様!申し訳ありません、その習慣を忘れていました、!」
「習慣?」
「はい、バレッタお嬢様は毎日、お出掛けなさる前にそのリップを塗っていて…」
蓋をとってみれば真っ赤なリップ。
制服といい髪飾りといいリップといい…バレッタは赤色のものが好きだったみたい。この目の色が赤色だから?
社会人だった時にもリップ自体は塗った事があるので手間取らなかった。口を閉じて、また開けば完成だ。顔の印象をキュッと引き締めるこの赤いリップ…確かにバレッタに似合う。
「…ていうか、私この世界の事何もわからないのになんでも出来ちゃうのね。」
もしや私、天才なのかもしれない。
「カノンだったかしら。」
「は、はい!」
「私の事、ちょっと一回天才と呼んでみてくれる?」
「て…え?」
「一回だけだから!」
「え、えっと…て、天才様…?」
「様いらない!」
「すみません!天才!!」
「…」
いいわね、天才って呼ばれるの。
日本では天才なんて呼ばれた事一度もなかったから気分上がるわぁ〜…ちょっとウキウキ。
「カノン、この城にいる者達全員に伝えなさい。」
「な、なんでしょうか…?」
「これから私の事は天才と呼ぶように、と。」
これからお嬢様として十分に遊んでやろうじゃないのよ。でもその前にまず天才ライフを楽しまむのよ!行くわよ天才!