公開中
オタの出会い
陽真詩月
はぁ……♡ 推し可愛い、推し可愛い、推し可愛い……。
私はスマホの画像を極限までアップにして、世界一可愛いキラキラした瞳を見詰める。
「超貴重描きおろしイラスト……! 原作者がTwitterにアップするとかラッキーすぎ! スクショしたら永遠に見れるとか最高過ぎ……アイラブ『アイちゃん』……」
そう、私の推しは、人気アニメの絶対的アイドル、アイ。アニメに全く興味がなかった私が、アニメにどっぷりハマるようになったきっかけ。放送が終わった今でも、彼らを愛し続ける。
そしてそのアニメを愛し始めた私は、他のアニメも見た。最新のものも、昭和のものも、全部見つくした。フェスには何度行ったことだろうか。オタ活に月々○万円かけてるので、出費が痛すぎる。
「ああ……。限定ウエハース欲しかったあ……。熱なんか出さなかったら買えたのに……うう……」
そう、一年前、発売日に熱を出してしまい、売り切れたのだ。ひとりでうめいていると、トン、と後ろから肩を叩かれた。
「やっほ梅ちゃん、何見てんの?」
「ひっ⁉」
慌ててスマホの画面を閉じる。危なく友達にアニオタがばれるところだった。
「あ、ぁ~、いや、その……。お小遣い手帳? あはは、恥ずかしいや……」
「へぇ~、そんなのつけてるの? 真面目だねぇ」
「え、えへへ……」
待ち受け画面もスマホケースに裏返して入れている写真も全部アイだってバレたら、引かれるに決まっている。
そのときだった。
「うわあ、うま。【××××】ってアニメのウエハース、田舎の方まで撮り鉄行ったら売ってたんだよな。内容知らんけど、うまそーと思って一個買ってきた。このカードはなんてキャラなの?」
【××××】という言葉に、激しく反応した私の身体。
なんで今頃【××××】のキャラカード入りウエハースが……⁉
その話をしていたのは、同じクラスの高岡英二だった。友達と話している。
自称鉄オタの、つくづくキモい奴だ。人のこと言えないけど。
「あ? どんな田舎だったらそんなの売ってんだよ。そこまでイって何してきた?」
「だからあ、撮り鉄! ほら見ろよこれ」
「ああ? 何これ……。全部同じ写真じゃん、何枚撮ってんだよ、キモ。ああ、ちなみに、そのキャラはアイ」
アイ⁉
鉄オタの手の中には、アイの一番レアなカードが入っていたのだ。
何枚撮ってんだよ、キモ。その言葉を聞き、ギクッとした。私のスマホはアニメの画像のスクショでデータがいっぱいなのだ。そんなことより鉄オタ、お前それ一回見せて……。
気づけば鉄オタの前に立っている変な女がいる。それは、私だ。
「ねえ、それ、見せて。アイのカード、見せて」
「はあ? まあ、いいですけど……」
……ヤバい、可愛い……。
「これちょうだい、あんたどーせいらないでしょ」
「え、まあ」
「よこせ、今すぐ」
「は、はあ」
「ちょ、ちょっと梅ちゃん⁉」
アニオタと鉄オタの、最悪な出会いの幕開けだ。