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雪女と世界の終わり
知らないだけで、本当はいるかもしれない。でも、いないかもしれない。
もし世界が終わるなら、
その存在も消えるのかもしれない。
その真実は、雪に包まれている。
ビュウウウウウ。ビュウウウウウ。
まだあまり知られていない、|雪永丘《せつながおか》、通称|雪害丘《せつがいおか》での話。
ここは登山マニアのみぞ知る山だ。帰ってきた人がひとりもいないため、殺害とかけて雪害丘だそうだ。
わたし・|羽鳥瑠芽《はとりるめ》はそこへハイキングに出かけた。
1ヶ月前__
「あと1ヶ月で地球に到達する巨大隕石が観測されました。」
ニュースでそう報じられた。
わたしは、2年前に亡くなった父のことを思い出した。
わたしの父は登山マニアだった。でも病で亡くなった。そのとき、どうしてもいけなかった雪害丘へ行きたいと言って亡くなった。だから、わたしは今、雪害丘へいる。
「…大丈夫。」
わたしはザクッと足を踏み入れた。
吹雪が強い。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。」
強くなってきた。
小屋が見える。小屋に逃げ込もう。
ずさっ。
すぐ前に小屋があってよかった。助かった。すぐに冷えてしまった。
「出て行け。」
「!!」
戸の前に、女が立っていた。白髪をさらりと伸ばしているロングヘアー。白い着物を着ている。美人だが無愛想でつんとすましている。
「ぁ、あなたはっ…。」
「わたしは|雪菜《ゆきな》。この小屋と山の主。あなたは?」
「わたし、は羽鳥瑠芽です。はとりるめ。」
「るめ。」
雪菜はそうつぶやいた。
「自殺願望者?もうすぐ世界が終わるんじゃないの?」
「父の意思を継ぐためです。自殺ではありません。父は登山が趣味でしたが、亡くなってしまいました。ここを登りたいと言っていたので、来たんです。」
「ふうん。」
雪菜はそう言って、外を眺めた。そして戸をしめ、中へ入った。
「わたしも、こんなことはしたくないのよ。でも、ここは、何かと危険なの。なぜって、雪山よ。遭難するわ。早く帰って!」
「嫌です。べつに、遭難したって心配する人なんていない。親は死んでいるし、一人っ子だし。友達もいないし、関係者は会社のゴミしかいない。だから、いいの。」
「…そう。」
「雪菜は?」
「わたしはずっと前、親に虐待されて雪山へ置いていかれた。そして死んだ。気づいたら、こうなってた。だから、あなたの気持ちは痛いほどわかる。」
雪菜はシチューを、いつのまにか作っていた。
「不思議ね。今まで、そういう人には何度もあってきた。でも、全然好きにはならなかった。地球が滅びる前だからかしらね、死ぬならあなたと死にたいわ。…隕石、止めれるけれど。」
「と、止めれるの!?」
「そうよ。隕石を凍らせれば、なんとかなるわ。空気も重力もなくても、わたしはその法則を無視できる。」
シチューはあまく、具材がごろごろ入っているタイプだった。
「止めるの?」
「まっさかあ。なんの縁もゆかりもない赤の他人たちを救うって、どうかしてるわ。もしすくっても、なんの見返りもない。それどころか、ここはどんどん開拓されて、つまらないものになってゆく。そんなの、あんまりだと思わない?それだったら、気に入った人と死ぬ方が、最高に幸せでしょう?あなたも、そう思うでしょう。本当の幸せって、生きることだけかしら?不幸に生きるより、幸せに死ぬ方がいいと思うわ。」
「…そうね。」
「…世界の終わりに、あなたと出会えてよかった。孤独なまま終わらないで、よかった。」
「隕石、もうすぐね。」
スマホの電波が届いていた。ニュースでは、隕石カウントダウンが始まっていた。
「ありがとう。もっとはやく、出会いたかった。」
「いいえ、お互いよく知らないから、いいんじゃないの。」
わたしと雪菜は、しずかに眠った。
こんにちは、むらさきざくらです💜🌸
ホラーを書こうと思ったけど、感動路線に突っ走ってしまいました!でも結果オーライな感じですねー。
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ではっっ。