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# 試 験
「 あああやっぱり無理めっちゃ緊張するほんまに泣きそうや 」
もうすぐ試験だ 。
「 せながそこまで緊張するのなんか意外かも 」
「 人生で一番緊張してるわ今 」
いつも強気なせながここまで緊張するとは思わなかった 。
其れ位 、M C E Cに行きたいのだろう 。
「 せななら行けるに決まってるよ 」
「 お前はそんなに緊張してへんのか 」
「 ん ー … 」
緊張 、しているのだろうか 。
わからない 。
せなみたいに刀が使えて凄い訳でもない 。
運動神経が特別いい訳でもない 。
ぼくは諦めてしまっているのだろうか 。
「 わかんない 笑 」
「 、俺は 、そのお前と離れるの嫌やから 、その … 」
「 いっしょに頑張ろうな 、」
顔が真っ赤だ 。
「 顔真っ赤だよ かわいいなーもう 」
「 うるっっっさい !! かわいくないわ 黙れ あほ ッ 」
「 はいはい 黙っときます ー 」
「 いや 黙るな !! 俺と話せ !! 別に黙って欲しいんとちゃうわ !! 」
「 なに 、ぼくとはなしたいの ー 」
にやにやしながら言ってみる 。
「 ああもうなんやねん !! 話したいわ そんくらい分かるやろ言わせるな ばか !!」
「 言葉で言わないとわかりませんーー 」
「 どうしたお前 うざい !! 」
先程迄とは違いせなは明るい表情をしている
少し緊張が和らいだのだろうか
其れなら 、良かった 。
此れ位しかぼくにしてあげれる事は無いだろう 。
昨日の夜は寒かったが 、今日は日差しが強く暑い 。
太陽に手を翳してみる 。
届きそうだった 。
でも 、見えているのに掴めない 。
眩しくて辺りが白くみえた 。
ふんわりとしている 。
其の白いフィルターの奥にせながみえる 。
ぼくより高くなってしまった背 。
此れからどんどん追い越されるのだろうか 。
色んな事がぼくよりできるようになってしまうのだろうか 。
いつの間にか太陽のように見えているのに届かない 、
そんな存在になってしまうのだろうか 。
いつの間にか学校に着いてしまった 。
「 はあ もう無理や俺緊張で吐きそうや 」
「 頑張れ 」
「 お前もな 、頑張れよ 」
確かにぼくはこのままでは無理だ 。
がんばらないといけない 。
この試験は大きく3つの試験がある 。
1つは筆記試験 。
こちらは|『 敵 』《エネミー》についての知識の問題や 、
こういうときどうするか などの問題が出る
頭の回転の良さがみられる試験だ
2つ目は体力測定試験
これは指定の順位以内に入らないといけない 。
運動神経のよさがみられる
この2つの試験である程度その人の得意な戦い方がわかるらしい 。
・ ドローン操縦型
・ 銃撃型
・ 刀型
この3つに分かれる 。
分けられてからは実戦試験がある 。
実際に|『 敵 』《エネミー》と戦うのだ
詳しくは知らないが全てに受からないといけないらしい 。
「 試験会場は 、、この教室らしいで 」
--- ガラッ ---
2人で一緒に足を踏み入れる
黒板に座る席が書いてあった
「 えっとぼくは一番後ろだ 」
「 俺は窓側の前やな 」
じゃあ頑張れとお互いに言い合い 、席に座った 。
一人で座ると急に不安になった 。
せながいることでぼくは安心できていたのだろう
「 はい 、席に座ってください 。これから 、筆記試験を始めます 」
きれいな女の人がそう告げる 。
白い指で試験用紙を配ってゆく 。
僕の机にも試験用紙が置かれた 。
窓から差し込む光が眩しい 。
「 其れでは試験を開始します 。はじめ 。」
試験監督がそう言ったあと
一斉に紙を捲る音が聞こえた 。
ぼくも落ち着いて問題を見る
其処からはよく覚えていない 。
しっかりできただろうか 。
3問目の問題ちょっとわからなかったな 。
あ 、あそこ漢字間違えたかも 。
思い返せば思い返す程不安の嵐が襲ってくる 。
立っていられなくなりそうな程だ 。
机に手を付く 。
思った以上に緊張していたのかもしれない
もう終わったことだ
切り替えて次に備えよう 。
つぎは体力テストだ 。
此れには自信が無い 。
「 るい 、次の会場行くで 。」
いつの間にか僕の席に来ていたせなが話しかけてくれた 。
「 うん 」
心なしか明るい表情をしているように思える 。
自信があるのだろうか 。
やっぱり 、凄いな 、せなは 。
ぼくとはきっと 、違うのだろう 。
次の会場は外だった 。
11月ももう終わるというのにこれ程暑いのはおかしいだろう 。
陽の光が肌を刺すようだった 。
時折吹く風が気持ちいい 。
大きく息を吸い 、吐く 。
生きている 。
昨日の夜起きたことが嘘みたいだな
まだ実感が湧いていない 。
進む時間についていけない 。
「 体力測定試験を行う !! 」
先程とは違い 、男性の人が大きな声で周りのおしゃべりを制す 。
「 ルールが書いてある紙を配るから其れを見ておくように !! 」
配られた紙を見る 。
指定時間内に色々な障害物を超え 、走り切ることが試験内容だそう 。
リタイアする人は腕につける時計のボタンを押せ 、と書いてある 。
スタートの時に配られるらしい 。
紙の下の方に 3 と書いてある 。
此れは何だ
「 紙の下に書いてある番号のところにいきましょう !! 」
先程迄は気づかなかったが 、1 、2 、3 、4 とそれぞれ書いた
看板がたててあった 。
人がぞろぞろ並んでゆく 。
「 せなは何番だった ?」
「 おれは 2 番やで 。るいは ? 」
「 あー 、違った ぼくは 3 。」
「 うわマジかよ 。ばらばらやな 」
「 そうだね 」
「 頑張れよ 、応援してるからな 」
「 ありがとう 。せなもがんばってね 」
ハイタッチをして別れる 。
3 の看板のところにはもう既に人がたくさん並んでいる 。
列に加わる 。
「 はい 、1 番の方から試験を始めます 」
順番で行うんだな
そこから10分ほど経った頃 、1番の試験は終わり
2番が呼ばれた 。
大画面のテレビのようなものには1番の人の成績が書いてある 。
一番先にゴールした人は二番とだいぶ差をつけていた 。
ぼくより年上の人らしい 。
しかも女の人だ 。
名前は …
太陽の光が反射し 、見えづらかった
目を凝らして見る
“ 柊 ほのか ”
名前は知らない人だが 、すごいことだけわかる
すごいな 、
画面が一瞬消え 、2番の順位も加わった 。
どうやらもう終わったようだ 。
3番の列は動き始めた
歩きながら大画面を見る 。
1 柊 ほのか
2 せな
「 へ 、? 」
せなが 、2位 ?
見間違いかと思った 。
もう一回見ようとする 。
だがもう3番の列が進み 、太陽の光の反射で
完全に見えなくなってしまっていた 。
ぼくはせなには届かない 。
とりのこされたような心細さを感じる 。
「 それでは 、試験を始めます 」
「 腕時計を配りますね 」
腕時計が配られる 。
うまくつけられなくてもたもたしていたが
やっとつけられた 。
「 それでは 、はじめます 」
「 タイムは腕時計が自動で測ります 」
「 よーい 、はじめ 」
一斉に人が動き出す 。
思ったよりみんな早くて
ぼくも置いてかれないように足を動かす
緊張で胸がどくどくしていた 。
心臓が何処にあるか 、はっきりわかった 。
3分経っただろうか 。
さすがに足が疲れ 、呼吸が浅い 。
壁を登ったり 、ジャンプしたりと様々な障害物もあった 。
奥の方にゴールが見える 。
ぼくは大体真ん中くらいの順位だろう 。
スピードをはやめた 。
後のことなんて考えていなかった 。
夢中で足を回していた 。
呼吸なんか忘れて 。
腕をいっぱいに振って 。
何人も抜かし 、
ほぼ全速力でゴールした 。
其処にはもうぼくより先にゴールしていた人が休憩していた 。
「 はぁ 、はー 、ふーっ 、っ 」
一生懸命呼吸を整える 。
芝生に寝転がり 、空を見上げた 。
ゆっくりゆっくり 、雲が動いてゆく 。
意外と楽しかった 。ような気がした 。
順位が知りたい 。
だいぶ呼吸も落ち着いたので
大画面の見える場所へ向かった 。
ちょうど画面が切り替わる 。
ぼくは …
46位のところにいた 。
4番のチームの人たちを入れなければ合計180人だから
ぼくにしてははやかったと思う 。
脱落した人は30人だそうだ
確かにきつかった 。
そういえば 、せなは 。
あたりを見渡す 。
奥の方でこっちにむかって手を振っている人が見える 。
せなだ 。
小走りで彼方へむかう
「 るい 、すごいやん っ !! 46位やで !? さすがやな 」
ほくほくした表情を見せるせな 。
何故か凄く嬉しそうだった 。
「 いやいや 、せなは2位だよ しかも3位の人と差をつけてる 」
大画面を見ながら話す 。
やはり 、見間違いではなかったようだ 。
せなは少し複雑な表情をしていた 。
作り笑いだ 。
昨日からぼくに何か隠している 。
「 ありがとな 、でもるいはすごいよ 。ほんまに 。」
其処迄褒められる様な結果だっただろうか 。
「 ありがと 次の試験の所いこ 」
そう言い 、ぼくらは歩き出した 。
腕に違和感を感じる
腕時計がついている 。
「 あ 、此の腕時計どうすればいいの ?」
「 其れは持っとけって言われたで 。」
「 其処に自分がどんな戦い方が得意かっていうのと 、次の試験に進めるかどうか送られてくるらしいわ 」
「 なるほど 、教えてくれてありがと 頼りになるね 」
「 … どうも 、」
顔が真っ赤になっている 。
かわいいな此奴 。
「 顔真っ赤だよ 」
「 あーもう 、うるさいなーもう知ってるわそんなん !! 」
「 照れちゃってるじゃーん 」
「 照れてねーよ !!! 」
「 はいはいかわいいねーよちよち 」
「 かわいくねーわ あほ !! ばかッ 」
先程よりも顔が赤くなってしまっている 。
それを隠したいのかせなは顔を手で覆った 。
「 かわいー 」
真顔で言ってみる 。
顔を覆った手の隙間からせなの目が覗く 。
「 もう 見るな ! あほ !きらい ! 」
「 はいはい 笑 」
--- ぴこん ッ ---
「 うあああ びっくりしたもうなんやねん !! 」
「 あ 、次の試験に進めるかこれで分かっちゃうのか 」
「 ほな 一緒にせーので見よ 」
「 わかった 」
「「 せーの 」」
--- 試験番号82番 るいさん ---
--- あなたは次の試験へ進めます ---
--- バスに乗り、次の試験会場へ進んで下さい ---
「 ああ よかった 、次に進める !」
正直 、無理だと思った 。
よかった
「 俺もやで 。一緒にがんばろーな 」
ひとまず安心だ 。
まだせなと一緒にいれる 。
目に涙が浮かびそうになった 。
見られたくなくて 、目を逸らす 。
何故だろう 、こんなに涙腺緩かっただろうか 。
まだ行けると確定していないのに 。
そうだ 、次で決まる 。
太陽が雲で隠れ 、少し涼しくなった 。
バス停まで歩き 、ようやくバスに乗った 。
次の試験会場はまだ 、知らされていない 。
--- ぴこん ッ ---
「 ひぃ ッ 、もうなんやねん びっくりした 」
次はなんだろう
--- 君たちには “ 怪 獣 集 中 討 伐 都 市 M C E C ” に ---
--- 実際に行って試験を受けて頂きます 。 ---
--- ただし 、命の保証はできません ---
--- 死者は出てしまうと予想しています ---
--- 其れでも行きたいと思う勇気のある方のみ ---
--- 次の試験に進めます ---
--- たくさんの勇気ある若者が来ることを願っています ---
--- M C E C市長 柊 ユウ ---
「 え!? は!? もういけるん !? めっちゃテンション上がるんやけど !」
「 せな声でかいよ 」
「 ぁ 、すまん 」
「 そんなにちっちゃくなくてもいいけど 」
「 しかも 市長がこのメッセージ送ってくれてるやん ッ !! 」
「 たしかにそうだね すごい 」
「 テンション上がるわー !! 」
弾けたような笑顔 。
笑うと目がきらきらして 、顔がくしゃッとなる 、
せなの笑顔がぼくは すきだ 。
きっと恋愛感情ではない 。 きっと 。
次の実戦試験 。
ぼくはどうしよう 。
僕が行ったら 、しんでしまうのではないだろうか 。
他の人に迷惑をかけるかもしれない 。
せながぼくをたすけて 、しんでしまうかもしれない 。
ぼくだけ生き残ってしまうかもしれない 。
呼吸が浅くなっていく 。
心臓が強く脈打ち 、頭ががんがんした 。
急いで呼吸を整え 、深呼吸をする 。
「 すー ッ はー 、」
バスの外の流れる景色を眺める 。
沢山の命が見えた 。
木 。 鳥 。 虫 。
俺は誰の為に 、誰を守るんだろう 。
誰の為に生きるんだろう 。
「 あのさ 、るい 」
「 どーしたん 、? 」
「 俺もう|『 敵 』《エネミー》から誰の命も奪われたくなくてさ 」
「 親を守れへんかった分 、其処で俺だけが生き残ってしまった分 、」
「 もう誰も悔しい思いをする人を作りたくないねん 」
せなの話の意図が読み取れなくて上手く反応出来なかった 。
「 せやから 、俺この実戦試験で勝ち残って 、」
「 M C E Cに行って人の命を救いたい 。それが夢やねん 。」
「 俺と一緒に 、実戦試験頑張ってくれへんかな 」
せなはぼくが悩んでいたことを知っていたのだろうか
やっぱりせなには敵わないな 、
真っ直ぐな目でぼくを見つめてくれる 。
一生懸命さが伝わって暖かい気持ちになる 。
「 ありがとう 。僕も 、頑張ってみるよ 。」
でも 、此れだけは伝えなくては 。
「 でもたとえ僕が死んでしまいそうでも 、自分の命を守ってね 」
「 そんなこと出来る訳ないやん !! 」
食い気味に答えるせな 。
まぁ 、そうだろうとは思っていた 。
人の為に動ける所がせなの良い所 。
ぼくはそこがだいすきだった 。
きっとせなは自分がどうなろうと 、人の命を救うだろう 。
何よりせなは 、命の大切さを身をもって感じている 。
たとえ嫌いな虫でも潰そうとしないし 、
雨の中でも捨て犬を見つけ 、保護する
どんな命であっても大切にするせなはかっこよかった 。
でもぼくは 。
そんなせなをまもりたい 。
きっと其れがぼくの 、生きる意味だ 。
「 でもぼくはね 、せなに生きて欲しいし 、大袈裟かもしれないけど幸せになって欲しい 」
「 せなと同じ思いをする子が一人でも減るようにせなには夢を叶えてもらいたい 」
「 いいかな 、」
「 わかった 、でも無理はすんなよ 」
明らかに納得していなさそうだったが頷いてくれた 。
「 うん 、もちろんだよ 」
よかった 、と弾けるような笑顔を見せてくれた 。
太陽のような笑顔 。
きっとこんな笑顔にぼくは救われたんだ 。
次の実戦試験 。
此処でM C E Cに行けるか決まる 。
そして何より 、生きるか死ぬかも 。
バスが止まる 。
--- M C E Cに着きました 。忘れ物の無い様に宜しくお願いします ---
アナウンスが入った 。
バスを降り 、
暖かい陽が降り注ぐ地面を踏みしめ 、
ぼく達は歩き出した 。