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5話
9時になった。
「行くぞ」いつになく硬い月人の声とともに、6人は向かった。
今回は《《もしも》》のときのために琉真を連れて行く。
「・・・じゃぁ行くぞ。琉真は軍団前で待機。」「はーい。気をつけてね」「あぁ」月人が琉真の頭を撫でて、5人が飛び立った。
「・・・『X』か?」軍門を通ると、一人の青年が立っていた。服装からして・・・
「・・・ここの団長か」「あぁ」青年が頷く。「生憎うちは人数が少なくてな・・・俺が来た。うちの思想を聞いたのか?」「あぁ。能力者との共存だと?ふざけるな。そんなものが出来るわけがないだろう!」月人が激昂する。それから少し落ち着いて。
「・・・というわけで、お前らを殺す。ここは人数が少ないと言ったな?早く終わりそうだ」「今だ、|矢名瀬《やなせ》!」団長が叫んだかと思うと、何かが飛んできた。これは・・・「捕獲用の縄かよッ・・・」カルマが黒犬の表情で苦笑いを浮かべる。
「リーダー。琉真ちゃん、呼びますか」緊張を浮かべた顔で、椎葉が月人にささやく。「いいや。いい。・・・おい、俺に話を聞けと言うのか」「そうだ。できれば〈メンター〉、二人で」月人は少しだけ苦しい顔をして。「・・・わかった。その代わり、仲間の安全は保証しろ」「それは保証する。さぁ、行こうか」
月人だけを皆から引き離して、団長と月人は別の部屋に行った。
「・・・リーダー、大丈夫かしら」月人以外は、さらに別の部屋に待機させられていた。「きっと大丈夫ですよ姉様。そうでなかったら琉真さんをお呼びしましょう」「そうね、そうよね・・・」鼎と要が心配する。「月人の事だから、どうにかして逃げてくるさ・・・ケケ」カルマも軽口を叩くが、その言葉にはいつもの元気がない。「・・・琉真ちゃん、どうしてるかな」椎葉は、琉真がいるはずの軍門のあたりに視線を注いでいた。
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「俺の名前は|井伏《いぶせ》|祢音《ねおん》だ。そちらの名前は?」「・・・|鳥羽《とば》月人だ」「名前、教えてくれるんだな」「・・・お前らが言ってる識別名とやらで呼ばれるのが嫌なだけだ」「そうか。なぁ鳥羽、俺たちの思想はさっき聞いたよな。俺たちは能力者に恨みや軽蔑を持っていない」
月人の顔が驚きに彩られる。「・・・嘘を付け。普通のやつは皆、能力者を嫌っているはずだ」「俺たちが恨んでいるのは軍団だ」祢音がはっきり言い切る。「軍団はどんな残虐な行為をしても、正当化されている。だから俺たちは、そんな世界の価値観を変えたいんだ」「・・・嘘をついているというわけではなさそうだな」「嘘をついているように見えるか?」「・・・いや、見えない。」月人は初めて微笑んだ。
「お前達の思想はよくわかった。俺たちはお前に協力するよ」「・・・!?本当か!?」「こんなやつは初めて見たからな。その代わり・・・俺の仲間に手を出したら容赦はしない。その時は皆殺しだ」「分かっている」
二人はしっかりと握手をした。
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「リーダー!」
別部屋に移動されていた5人が、月人の姿を確認して安堵する。
「皆いいか、落ち着いて聞いてくれ・・・俺たちはこの地区と協力することにした」「オイ、嘘だろ・・・!?」カルマが驚愕の声を上げる。「少しだけな、思想に惹かれたんだよ・・・。ただし、裏切られたらこちらも裏切り返す」「リーダーらしいですわね、そう言うなら|私《わたくし》も受け入れますわ」「姉様が言うなら私も」鼎と要が賛同する。「・・・リーダーが決めたならしょうがないですね」「あたしもOKだよ!」椎葉がやれやれといった感じで、琉真は元気に手を挙げる。
「ではしばらくここに拠点を置くことにするか・・・」
DATA
|黒野《くろの》要 危険度S
識別名・エンゼル
能力名・モディファイ
相手の体の一部を改造できる能力。