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ぼくらは青春ボディーガード④
天空ちさゆ
ぼくボディ、ついについに……!?
できれば①~③を読んでから本編をお楽しみください(#^^#)
これから機能とかも覚えていくのでよろしくお願いしますm(__)m
では、本編へどうぞ(*・ω・)/
第4話「作戦実行!」
いよいよだ。
「——やて、颯!」
「うわっ!ごめん、聞いてなかった」
「颯ってば、さっきから上の空」
「今から練習するってのに」
俺は申し訳なさそうに、頬をかいた。
え?何の練習って?
それは……
「もー、颯、忘れないでよね。楓ちゃんと学校に行くって言ったのは颯なんだから!」
そう、俺たちは昨日の放課後色々あって、夜桜楓さんと学校に行って青春したいと考えた。
そのために、夜桜さんの父・銀杏さんを説得しなければならない。
銀杏さんを説得するのはとっても難しいから、練習しようってなったワケ。
「はっはっは。楽しそうだな」
運転席から顔を出したのは、俺のおじさん・風夫おじさんだ。
「おじさんは大丈夫なんですか?無理な仕事かもしれないけど」
「まあ、無理っていえば無理だけど、その無理をどうにかするのがぼくだからな」
あはは、おじさんらしいアンサー。
「主に働いてもらうのは颯だから、頑張ってもらわないと」
「ううっ、そっか。緊張してきたかも!」
「いまさら何言っとるんだ。ぼくが知っていることだが、お嬢様は颯のことをすごく信頼しとるぞ。」
「えっ、そうなんだ」
ちょっと嬉しいかも。今の俺たちにしたら、好都合。
おじさんは、声をひそめて言った。
「この際だから言うが、銀杏様は君たちことを信じとるようだ。ドアに取り付けてあるカメラで調べると、|不審《ふしん》な物や|盗聴器《とうちょうき》は持っていないことが分かっとる」
「そ、そんなところにカメラがあったとは……」
マジのからくり屋敷みたいだ。
でも、銀杏さんと夜桜さんが信じてるなら、自信がわいてきた!
俺は、車内に座っているみんなを見わたす。
「みんなで、頑張ろ!」
「「「「おー!」」」」
車内は、勇気に満ちあふれていたのだった。
ガチャッ
「おじゃましまーす……」
裏口を通るのは二度目なのに、視界に入ってくるものはいつもと違うように見える。
おじさんの背中を前にし、後からついてきた凛空と優空を誘導する。
やっぱり、ドキドキする!
「楓ちゃん、遊びに来たよ!」
「こんにちは、夜桜さん」
「わ、また遊びに来てくれたんですね!嬉しいです」
夜桜さんは、優空と手を取り合って喜んでいる。
やっぱり、凛空と優空はいつもの調子だ。
ここまで順調。全然緊張してるのがバレてない。
俺はおじさんに|目配《めくば》せをした。
おじさんがする仕事の出番の合図だ。
「少しぼくは部屋を出るよ。用を足したくてね」
「分かったわ」
夜桜さんは、にこりと笑った。
やっぱり、いつ見てもドキドキする。
って、見とれてちゃだめだ!ここからが俺の仕事なんだから。
夜桜さんと凛空たちは、どうやら夜桜さんの服について話しているようだ。
作戦1・『急に話題を変えずに学校のことにつなげる。』
……学校につなげるのは難しいかも。
でも、焦らず、怪しまれずにすることが重大だ。
「やっぱり、楓ちゃんの服って本当に可愛いよね!特に、Aラインのワンピースとか」
「お嬢様だし、服も持ち物も|凝《こ》っててすごいよな」
「たしかに。あのアクセサリーとか、小さくてシンプルだし」
「七瀬さんは、イヤリングとか、ネックレスはつけたことがありますか?」
「うーん、あんまりないかなあ。こっそりママのアクセサリーをつけたことはあるけど」
「だめじゃん、壊したらどうするんだ」
全然つながらない!ていうか、優空ってばすっかり作戦のこと忘れてる!?
「もー、颯ってばちょっとくらい私の味方してよね!凛空は怒りだしたら止まんないもん」
「え、えっと……」
どうしよう。
体中から、汗がにじみ出るのがはっきり分かった。
コツコツ。
ん?
優空が俺のスクールバッグを指で叩いていることに気が付いた。
なんだろ?
優空は、口を開けたりのばしたりして、何か言おうとしてる。
『こ・れ』
————あ!
「夜桜さんって、かばんとかにもアクセサリーをつけたことある?」
「あ、あります。誕生日のときに一度だけ外にお出かけへ行ったときとか……」
「私もあるよ!アクセサリーじゃないけど、キーホルダーはつけたことあるかな。ほら。」
優空が自分のスクールバッグを夜桜さんに見せる。
優空ってば、悔しいけどナイス!
「へぇ……青陽さんたちの通ってる学校のかばんって、こんなかばんなんですね」
かかった!
凛空と優空に目を向ける。
二人とも、『やった』って顔してる。
よし、興味を示してるうちに!
「そうなんだ。俺たち、すっごく学校が好きでさ」
「私も。小中一貫校だけど、クラスとか部活とか、とにかく楽しいの!」
「みんな優しいし、みんなも好きなんだ。僕たちの学校」
よし、言えた!とにかく、作戦2・『簡単に学校の紹介をする』はこれでクリア!
あとは、質問を待つだけ。
……興味を持ってくれるか、どうか。
「へえ、私も行ってみたいな。その学校……」
そう言って、悲しそうに目を伏せた。
……そうだよな。
分かってる。俺も、分かってるんだ。
絶対に無理だって。
でも、みんなで決めた。
’’夜桜さんと青春する’’って。
バァン!!!
大きな音を立て、ドアが開く。
グットタイミング。
ここからが、|本番《ファイナルステージ》。
「また小僧か」
来た!
<「謎野謎子と申します(*'ω'*)この場を借りて、風夫の無理な仕事の工程をのぞきみしちゃいましょう『1、機材室に入り、颯たちの様子を見る。→2、自ら颯たちが入っていることを銀杏様に報告すると不自然なので、他の執事を通して報告してもらう。→3、銀杏様が部屋に着くまで時間を計算し、グットタイミングを見計らう。』と、いった工程でした!お邪魔してしまい申し訳ありません。たまーに登場するのでよろしくね!ではまた(^.^)/~~~」
この作戦が、一番勇気のいるところ。
「お邪魔してます。銀杏さん」
「いまさら改まっても遅いぞ!私は認めんからな!」
相変わらず、消極的な態度。
でも、今ここで本心をつく!
俺は静かに息を吸った。
作戦3・『本音を宣言する』!
「銀杏さん、俺、夜桜さんと学校に行ってみたいです」
「な、なにを……」
とまどってる、とまどってる。
やっぱり、急に本音を言うと驚くよな。
コツは、目線をしっかり合わせることだ。
「だから、お願いします。俺たち3人で話し合って、決めたことです」
「私もです。楓ちゃんとオシャレしてみたいなって思ってます」
「僕も、お城とかの裏手口を知ってみたいです。いつかはミニチュアのお城を作ってみたいですし」
凛空ってば、どこまで本音言うんだ。
まあ、いいんだけど。
「君たち、わざとらしすぎるぞ!なんだ急に、前の七瀬は敬語じゃなかったぞ!」
ぐっ、予知せぬ反論。
——と、なると思った?
「銀杏様、この子たちは必死です。お嬢様も、颯のことを気に入っておられます!ですから、協力を願います!」
「おじさん……」
おじさんが、いっそうに声を張り上げる。
七瀬の反応も、もちろん演技だ。
「だがな!楓と学校に行くのはボディーガードが必要なんだ!ボディーガードはみな大人。君たちには無理だ!」
夜桜さんのお父さんは、少し無理してるように見えた。
やっぱり、ダメージを受けてる。
——銀杏さんは、自分のガードが固そうな印象を壊したくないんだろうな。
素人らしいところをかみしめながら、俺は反論しようとした。
「でも——」
「ですが銀杏様、ボディーガードは大人でなければならないというルールはないでしょう?」
「えっ。まあそれはそうだが……」
あれ?ちょっと賛成し始めてる?
「お父さん!青陽さんは普通の人なんかじゃないわ。私、青陽さんがボディーガードがいい。」
「ええ!?」
俺が!?ボディーガードに!?しかも、夜桜さんが決めるの!?
「いいじゃん!颯ってスポーツ万能だし」
「責任感を持てるし、夜桜さんと相性よさそうだしね」
凛空の『相性よさそう』ってなに!?
「銀杏様、颯はボディーガードに向いていると心から思っています。ボディーガードを決めるのは、お嬢様っていうルールですよね?」
ちょ、ちょっと待って。これって絶対になっちゃう|雰囲気《ふんいき》じゃん!?
「ね、いいじゃん颯。」
「これで学校に行けるかもしれない」
——そうか。俺の本当の目的は、夜桜さんと一緒にいることじゃない。
夜桜さんと青春することだ。
俺の中で、なにかがはじけた。
「やります!いいですよね、銀杏さん」
「なっ!ま、まあ、たまには娘のわがままも聞いてやろうとしようかと思うが……おほん!」
銀杏さんは、顔を赤らめ、せきばらいをした。
「青陽颯。そなたはボディーガードになることを認め、安全に夜桜楓を守り抜くことを|誓《ちか》うか」
げっ。こういうやつ、大の苦手!でも、ここは。
「はい、誓います」
|鼓動《こどう》が、だんだんと早くなる。
「はあ、あとは任せる」
「は、はいっ」
銀杏さんが部屋を出ていくのを、ぼうぜんと見送る。
でも、俺。
本当にボディーガードになっちゃった!?
「やったね、颯!作戦大成功!」
「すっごくかっこよかったよ、颯」
「あ、あはは……みんな、ありがと」
俺は凛空たちと、手を取り合って喜んだ。
これまでの緊張感が、太陽のような笑顔で溶けていくのが分かった。
「青陽さん」
「は、はい」
夜桜さんに呼ばれ、ドキッとする。
やっぱり、いつみても奇麗な瞳だった。
「これからよろしくね」
「こちらこそ」
俺たちは、誓いの|握手《あくしゅ》をしたのだった。
翌日。
「今日転校してきた、夜桜楓だ。みんな仲良くしてやってな」
わああっ!
クラス中に、歓声が巻き起こる。
「目、すっごく奇麗!」「めっちゃ美人じゃね?」「やばい、惚れたかも……」「友達になれるかな?」
まあ、そうなるよな。俺たちのクラスはまだ転校生が来たことがないし。
夜桜さんは、俺と目が合うと、ニコッと笑ってくれた。
「じゃあ席は……ちょうどあいてるし、颯の隣な」
やった!見張りやすいし、超ラッキー。
「ええっ、ずるーい」「いいなぁ」「うらやまし~」
また、クラスがざわつく。
……これって、ボディーガードとバレないために、苦笑いするしかなくない?
「夜桜さん、改めてよろしく」
「うん、すっごく楽しみ」
夜桜さんは、優しくはにかんだ。
俺の青春物語はこれからだって、気づかされたのだった。
次回、颯たちの学校生活をのぞきみ( ^)o(^ )シリーズです!
楓目線もあるのでご了承ください🙏