公開中
歌姫の誕生
歌姫、10歳。
「桜月!どうしてそんな事もできないのよ!?」
「ご、っごめんなさいっ!次はちゃんとやるからっ…」
「フフッ…本当、桜月はお姉ちゃんとは違って《《出来損ない》》だよねぇ、お母さん」
「ごめんなさ、っ」
「謝ってる暇があるなら、早く夜ご飯の用意しなさい!」
「は、っはい……」
…今日も昨日と同じように、お母さんとお姉ちゃんに嘲られ、笑われ、怒られる。
なんでだろ、ね…
私、なにかしたかな、っ…
また昨日と同じように、涙を零さぬように堪えながら野菜を切る。
炒める。
テーブルを拭く。
いい具合に焼き目がついたら火から降ろす。
刻んで炒めた野菜に、そぼろを加える。
スパイスをいれる。
目玉焼きを乗せる。
盛ったご飯の上に、それを乗せた。
今日は簡単な料理で済ませた。
サラダも横に添える。
スープも。
そして皿を運ぶ。
「出来ました…」
「遅いわ!どれだけ待たせるつもり!?」
いや、さっきから15分足らずですけど。
「お母さーん!私のレタスあげる!」
「うふふ、玲奈は可愛いわねぇ」
どこがだよ((
「…失礼します」
家の中での唯一の避難場所に逃げ込む。
自分の部屋。
そして、一日の中での唯一の楽しみ。
「〜♫」
歌う。
一人で。
誰に聞かせるともなく、一人で歌うこと。
それから、…これ。
お姉ちゃんがまだ使えるスマホを捨てた時、こっそり取った。
このスマホが、私にとって凄く大切なものだった。
これがなくちゃ、私は…
KEN達のことを知る由もなかったから。
頬が割れるほど強く殴られたある日、
私は彷徨うようにスマホを見ていた。
そして、見つけた。
KENのことを、____
___一人の、伝説的なミュージシャンを。
彼の存在を知ってから、私の生きる理由が大きく変わった。
ただ、
『RAD WEEKEND』
彼らの、伝説の夜、
あのライブを超えるセカイを、
謳って、
歌って、
詩って、
唄って、
歌って、
--- 《創り上げてみたかった。》 ---
いや、創りたかった。
それはいつしか、きっと創ってやる、きっと超えて見せる、って、そんな思いに変わった。
だから、私はこんな日々も我慢できる。
毎日歌い続けることが出来る事に、感謝しながら。
次回、キャラ紹介。