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隣の学校の元ヤンに恋をする
英加扠
湖夏が店の奥の方に声を掛ける。「おばあちゃーん、ラムネ2つね」「おばあちゃんじゃないよ、お婆様とお呼び!」少ししゃがれた声と共に奥から、小柄な老婆が来る。「はい、120円」「あいあい、毎度ー」「そんな態度ならもう来ないよ」「いいよ別に。あんた一人来なくても。おや、お友達かい、湖夏」「あ、いや」別に友達と言うほどでもない。「うん!財布友達!」「なんじゃそりゃ」湖夏が事の発端を話す。「あらまぁそりゃぁ」老人が目をまんまるくする。黒豆みたいだな。「ごめんね。うちの孫が迷惑かけて。」「あ、ハイ、イイエ!」「どっちなんだい。」「この人は小野上遙子。うちのおばあちゃん!」「お婆様とお呼び!」コントのようだ。「はいラムネ。」「ありがとー」はいと手渡される。「うん、ありがとう。」お金あったかなと財布の中を弄る。「いいよ、いいよお金なんて。」湖夏が笑って拒絶する。「ううん、私知り合いと金銭関係でトラブりたくないから。」きっぱりと言い切り、六十円を渡す。
ポン、景気のいい音と共にラムネの蓋を開ける。シュワシュワという音と共に小さな無数の泡が浮かび上がってくる。飲むと、サイダーのようなシュワシュワとした舌触り、そして、お菓子のラムネでは味わう事のできない、甘く、どこか夏の香りのする味だ。「おいしい」よく見るとこのラムネはガラス玉が入っている。「湖夏…このガラス玉どうやって取るの?」「ああ、これはね、一回ガラス玉を落として、これを時計回りに外すと」コロコロと湖夏の手のひらに藍色の夜空を背景にザザンと波が浜辺に打ち付けられているそれを写真で切り取ったようなガラス玉だった。