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異世界について
「…さて、と。《《転生者》》のお前にこの世界のことを教えてやるか」
ネロの言葉を聞き、エリスは小さな衝撃を受ける。
「…私が転生したって知ってるの?」
「俺の目は誤魔化せないぞ?嬢ちゃん」
仕組みはよくわからないが、ネロは転生者を見抜くことができるらしい。ネロの首から下げられたルビーのネックレスが得意げに光を反射する。
「まず…嬢ちゃんは、この世界の文字を読むことができないんじゃないか?」
エリスの脳裏に、最初にたどり着いた町で見た|門《ゲート》が浮かぶ。
「うん…言葉は聞き取れたんだけど…」
「それは転生者の特権だな。どんな言語でも理解することができる」
「そうなんだ…」
「だが、字が読めないと不便だろう?俺がどうにかしてやる」
「…教えてくれるの?」
少し期待してエリスは問うが、ネロは鼻で笑う。
「教える?まさか」
ネロは、ぱちんと指を鳴らした。
「——魔法を使えば、一発だ」
「魔法…!」
「なんだ?目が輝いてるぞ」
「だって、魔法使えたらかっこいいし…」
「ふん、単純な奴だ。…良いだろう、なら次は魔法について教えてやろう」
「私も使えるようになる?」
「もう使っただろ、お前」
「…え?」
「【召喚魔法】だよ。俺を呼んだだろ?」
「え…もしかして、あの紙に私の血が付いたから?」
「その通りだ」
「う~ん…もっと使えそうな魔法、ない?例えば、炎を手から出せたり…」
「あのなぁ…」
ネロは、呆れたようにため息をついた。
「良いか?魔法はそう簡単に使えるものじゃない。魔法を扱うには、生成したいものを強くイメージしないといけないんだ。だから、かなり強い想像力が無いと…」
「…こんな感じ?」
「は??」
ネロはエリスに視線を向ける。得意げに微笑むエリスの手元には…
——アメジスト色の、炎があった。
「私、ファンタジー小説をよく読んでたから、こういうこと想像するの好きで…」
「…だとしても才能あるぞ、嬢ちゃん」
「本当?嬉しい…!」
幼い子供のようにキャッキャッと喜ぶエリス。少しずつではあるが、元気を取り戻しているようだ。ネロはなんとも形容しがたいむずがゆい気分になって、それを誤魔化すように咳払いをする。
「まぁ…なんだ。あとは生活しながらこの世界の特色を感じ取れ。嬢ちゃんなら出来るはずだ」
「うん、わかった…!」
こくりと頷いて、エリスは一つ気になっていたことを思い出した。
それは、一番最初に訪れたあの町で言われた言葉——その言葉の意味だった。
「…あの…」
「なんだ?」
「——『|悪魔の血を引く者《インフェルノ・ブラッド》』って、何?」